記事一覧はこちら>>>【連載】AI時代における労務問題への対応実務
これまで、主に経営者や人事労務担当者がAIを使う際の有益性や注意点について考えてきました。
しかし、AIを使うのは会社だけではありません。社員も、会社には見えないところで、自分の待遇や職場に関する疑問や悩みをAIに相談しているはずです。
そのことによって、労務問題の現場はどのように変わっていくのでしょうか。今回は、その点について考えてみたいと思います。
AIが社会的インフラになれば、職場・待遇に関する悩みも相談される
これまでの回では、労務問題に対処しなければならない経営者・人事労務の担当者の方々がAIを使う際の注意点についてお話をしてまいりました。
しかし、まだ、一つ触れていない大切な視点があります。AIを使うのは会社だけではないという視点です。
労務問題とは、会社とそこで働く人との関係で問題になるものです。したがって、今回は、働く人がAIを使うことで、その関係がどう変わっていくのかについて考えてみたいと思います。
私が生成AIに初めて触れたのは2023年の春頃で、チャットGPT3.5でした。その頃は、生成AIはごく一部の人が使用しているに過ぎないツールでした。
ところが、わずか、数年で生成AIは、ITに詳しい人や、新しい技術を積極的に使う人だけのものではなくなりました。
スマートフォンやPCのソフトにも生成AIが標準装備されてきています。人によって使用頻度に差はあるものの、日常生活での使用も既に一般化しつつあります。
近いうちに、「AIが国民の標準装備になった世界」が来ると言っても、違和感のない時代になったと思います。
スマートフォンを通じて、意志さえあれば、誰もが、24時間、どこに居ても、疑問や悩みを生成AIに相談できる社会になっています。実際、多くの方が日常的にAIに相談をしていると言っても過言ではないと思います。
当然、その相談の中には、仕事のことが含まれているはずです。
人は仕事に一日の大半の時間を費やし、そこで得る賃金によって生活の基盤を築いているのです。仕事の悩みだけを相談しないと考える方が不自然です。
そして、その中には待遇などの労務問題に関することも含まれるでしょう。
- 成績が悪いという理由で賃金を下げられた。法的に認められるのか。
- 自分の残業代が正しく支払われているか知りたい。
- 有給休暇を断られたが、会社の対応に問題はないのか。
- 評価や配置転換に納得できない。
- 上司の言動に法的な問題はないのか。
このような待遇に関する不満や法的な疑問も、当然AIへの相談対象になっていると考える方が自然です。個人とAIという閉じた世界での相談は外部から相談の有無や内容が見えません。
また、自分の待遇に疑問や不満があっても、最初から会社へ要求したり、外部機関に相談したりする社員は少数です。だから、会社としては実感できないと思います。
しかし、自分の待遇に不満を感じたり、「法的に問題があるのではないか」と疑問を持ったりしたとき、スマートフォンで気軽に法的な質問ができるAIに相談する方は、確実に増えているのではないでしょうか。
AIは、社員の知識だけでなく主張と行動も変える
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執筆者
小嶋裕司
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所(https://www.festinalentesroffice.com)代表
特定社会保険労務士
就業規則の専門家。企業が抱える人事労務の課題解決のため、その実現に必要な就業規則や関連規程の整備の支援をしている。法令遵守と企業の事情を両立させた現実的な対応を得意とする。生成AIの黎明期である2023年3月から、AI・デジタル講師陣がそろう学習環境下で本格的に生成AIの活用を開始。自らの実務に活用するだけでなく、人事の専門家に向けて「AI時代の労務問題・就業規則」をテーマとした勉強会の講師を務めるなど、新しい時代の人事労務に関する知見を積極的に発信している。

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