【専門家の知恵】コロナ禍で失われたものとは? 心理的ウェルビーイングを取り戻すための3つのポイント

公開日:2024年3月5日

 

コロナ禍で失われたものとは?

心理的ウェルビーイングを取り戻すための3つのポイント


<株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役 大曲義典 社会保険労務士事務所 所長 大曲義典/PSR会員>

コロナ禍が落ち着きを見せている。

しかし、仕事人たる個人に目を向ければ、燃え尽きたり、喪失感や悲しみを経験したり、社会的孤立を感じたりしている人が多いようである。

そこから立ち直らないと、かつてのように仕事に「喜び」を見出すのは困難となる。

容易ではないかもしれないが、「喜び」という感情は私たちのウェルビーイングや認知機能、そして仕事のパフォーマンスに欠かせない。

テレワークも思ったほど効率的ではなく、オフィスへ通う日常が全面的に再開すれば、この「喜び」を取り戻さないと生産性が上がるどころか、メンタル疾患にも罹患してしまう。

前述のとおり、「喜び」は、私たちのウェルビーイングや認知機能、そして仕事のパフォーマンスに欠かせない感情反応と態度であることが学術的にも検証されている。

この「喜び」をコロナ禍で喪失した人が多いのはなぜなのか?

私たちは、パンデミックがもたらす絶え間ない不確実性に直面し、身を潜め、サバイバルのような感覚で色々なことに対応してきた。

コロナ禍の経験は人それぞれだが、誰もが喪失感や悲しみに遭遇してきたのではなかろうか。

この間、心身は疲弊しているのに、そうではない雰囲気を醸し出さなければならなかった。

内なる本当の自分と他者への振る舞いが乖離し続ければ、心理的ウェルビーイングは損なわれてしまうのは自明だ。

また、自分の強みを活かしたいのに、とにかくやるべきことを、できるだけ効率よく、現実的にこなしていかなければならないというプレッシャーに圧倒され続けてきた。

こうした状況下では、本来感じるはずの仕事の「喜び」を感じ取ることはできない。

人間は、社会的孤立を感じると、認知の柔軟性や新しい事への対応力など、認知能力と実行能力が低下する。

その結果、ネガティブ感情が高まり、自分のパフォーマンスや能力が低下していることに自己嫌悪を抱き、負のスパイラルに陥って、同じ仕事をしていてそれが上手くいっても「喜び」が湧き上がってくることはない。

では、どうすれば喜びを取り戻すことができるのだろう。

コロナ禍前の充実した「喜び」を完全に復活させることは難しいかもしれない。

しかし、「喜び」というのは、自分の強みを活かし、勇気と自分らしさ、感謝の気持ちを持って人と心を通わせることによって得られるものである、と考えればやり様はあるのではなかろうか。

お勧めしたいのは、

  1. 仕事に自分の強みを活かす
  2. 自分の成長に注力する
  3. 仕事を通じて人間関係を再構築する

の3点である。

1. 仕事に自分の強みを活かす

自らの強みが仕事に活かされれば、それは「喜び」の促進剤になる。最初のステップは、それが何かを突き止めることである。

自分の強みが明らかになったら、それを日々の仕事にどう取り込めるかを考える。例えわずかな時間でも自分の強みを発揮できた感覚を得られれば、その後の日々が変わっていく。些細なことでも、それを積み重ねていくことが大切である。

 

2. 自分の成長に注力する

特に部下を持ち、部下を指導する立場のマネージャーに不可欠なのが自分の成長に時間を費やすことである。学習の喜びは、困難を乗り越えて粘り強く努力したことで目標を達成できた時に得られる。そしたら、仕事への情熱が蘇る。

用意された様々な学習プログラムから自己成長に繋げる努力を惜しまないようにしたい。

 

3. 仕事を通じて人間関係を再構築する

「喜び」は、単なる個人的現象ではなく、相手に親切にしたり、積極的に人間関係を働きかけたりといった行動を通じて、他者との絆を深める。また、「喜び」は自分にとって大切な人との距離が縮まると感じられる状況にいる時の反応、などとも定義されたりする。

孤立感に打ち勝つには、さまざまな方法で意味のあるコラボレーションに関わることである。そこで出来た繋がりは自分自身のエネエルギーを高めるだけでなく、チームの成果を向上させることにも繋がる。他者と有意義に繋がるためには、コーチングもある。的確なコーチングが行われると、双方にポジティブな変化をもたらす。

このような変化には、マネージャーが経験する慢性的で強いストレスによる心理的・生理的な影響を軽減する力もある。コロナ禍で壊れた人間関係を積極的に再構築したい。

 

最後に、日々のコンサルの中で時間の有効活用が曖昧になっている組織が多いことを感じる。

下図は「日々の仕事の活動領域」をマトリックス化したものだが、自己効力感が高まるのは「Ⅱの領域」である。なぜなら、私たちに「変化」と「成長」を促すからである。

しかし、現実には「Ⅰの領域」と「Ⅲの領域」に時間が費消されている組織が多い。一見すると「Ⅰの領域」に見える活動も実際には「Ⅲの領域」であることも多い。その分、「Ⅱの領域」が疎かになっているのである。

従って、「Ⅰの領域」を効率化、「Ⅲの領域」を回避することにより、「Ⅱの領域」を組織として目標化することが大切となってくる。これも組織の中で早急に検証したい視点である。


 

 

プロフィール

大曲 義典

株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ 代表取締役(http://www.wbc-associate.co.jp/) 

大曲義典 社会保険労務士事務所 所長

関西学院大学卒業後に長崎県庁入庁。文化振興室長を最後に49歳で退職し、起業。人事労務コンサルタントとして、経営のわかる社労士・FPとして活動。ヒトとソシキの資産化、財務の健全化を志向する登録商標「健康デザイン経営®」をコンサル指針とし、「従業員幸福度の向上=従業員ファースト」による企業経営の定着を目指している。最近では、経営学・心理学を駆使し、経営者・従業員に寄り添ったコンサルを心掛けている。得意分野は、経営戦略の立案、人材育成と組織開発、斬新な規程類の運用整備、メンヘル対策の運用、各種研修など。

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