【専門家の知恵】企業のBCP(事業継続計画)対策と多様な働き方の活用

公開日:2024年1月8日

 

企業のBCP(事業継続計画)対策と多様な働き方の活用


<社会保険労務士法人出口事務所 代表社員 出口裕美/PSR会員>

 

長期間にわたる新型コロナウイルスによる影響、その他にも地震や大雨による災害が全国各地であり、企業でもBCP対策に対する意識はだいぶ変わってきているのではないでしょうか。

「他の企業はどうしているのだろう。」「何からはじめたらいいのか。」そんなヒントになればと思います。

 

企業のBCP(事業継続計画)対策

長期間にわたる新型コロナウイルスによる影響は全国に影響が出ているかと思いますが、地震や大雨注意報も全国各地で報告されています。企業のBCP(事業継続計画)対策として、新型コロナウイルスのように事前に把握できないリスクもありますが、皆様の企業にはどのようなリスクがありますでしょうか。

まず、安心して勤務するためには企業の環境は重要です。

例えば、事業所の設立や移転の際には、大雨による河川の増水や雨水による浸水の予測を参考にされてますでしょうか。洪水、土砂災害、高潮、津波などを調べる際には、国土交通省のハザードマップポータルサイト等にて確認することが可能です。洪水浸水想定区域では、下線が氾濫した際に浸水が想定される区域と水深(想定し得る最大規模の降雨)を「~0.5m」はクリーム色、「0.5m~1m」はオレンジ色、「10m~20m」はピンク色、「20m~」は濃いピンク色などと確認することが可能です。

また、移転等が難しい場合でも、災害対策基本法に基づき市町村長が指定した崖崩れ、土石流及び地滑りに対応する「指定緊急避難場所」などを確認しておくことで、職員の安全に避難させることが可能です。

もしものときのために、企業に入社した際や、定期的な会議等で周知しておきましょう。

次に、事務所の中のセキュリティも安心して勤務するためには重要です。入退出用のカードキー(鍵)や防犯カメラや消火器、他にもネットワークセキュリティのUTM(統合脅威管理)、クラウドストレージの活用など、事務所のセキュリティも大切ですので、ぜひご確認ください。

資料:国土交通省 ハザードマップポータルサイト
http://disaportal.gsi.go.jp/

 

クラウドストレージの活用

クラウドストレージの特徴としては、ファイルをWeb上で保管・共有・管理し、フォルダやファイルごとにアクセス権限設定を設けられる点にあります。データを閲覧する権限、ダウンロードする権限、削除する権限などを企業が管理することで、情報漏洩を防ぐことが可能です。テレワークで業務を行うかどうかに関わらず、必要なツールの一つです。

新型コロナウイルスを機に、迅速にテレワークに対応できたのは、ペーパーレス化が進み、クラウドストレージの活用ができていた企業ですし、今後のBCP(事業継続計画)対策としても有効です。業務にもよりますが、データさえあればテレワークで業務を継続できるという企業も多かったのではないでしょうか。

また、パソコンが急に壊れてしまってパソコンの中に保存しておいたデータが復旧できないことや誤ってデータを消去してしまったというケースもよく耳にしますが、企業としては、情報は重要な資産になります。個人に任せるのではなく、企業がまとめて管理し、データのバックアップをとることも重要です。データのバックアップは個人では管理できないところに保存することで、万が一のときのときもデータを復旧することが可能です。

クラウドストレージを活用することで、複数の端末から同じデータが閲覧でき、パソコンが壊れてもデータはなくならない、パソコンを紛失してもクラウドストレージへのログイン情報が分からなければデータは閲覧できないなどのメリットがあります。

その他にもUSBメモリーに情報を保存して持ち運び、紛失してしまったなどのリスクもなくなります。最近は、USBメモリーは、ウィルスの伝達手段になっていて、USBメモリーや、外付けハードディスクの使用を禁止している企業も多いです。パソコンでUSBメモリーや外付けハードディスクの使用を禁止、アクセスを制限してUSBメモリーを無効にする方法もありますので、ぜひ、そういった機能を活用いただければと思います。

 

企業のBCP(事業継続計画)対策と多様な働き方

企業のBCP(事業継続計画)対策により多様な働き方を可能とすることで、企業の事情に応じて社員へ他社での副業・兼業を認めることも、予想以上の受注時に他社の社員を受け入れることも可能になります。

今回の新型コロナウイルスで休業せざるを得ない社員に企業は休業手当を支払い、企業は雇用調整助成金を受給することで雇用を維持しました。緊急時、短期間であれば、この制度でも良かったと思います。ここまで長期になるとは、思っていなかったのでやむを得ないと思いますが、雇用保険料の料率アップで、企業の負担は今後増えることになります。一方で、出向や副業・兼業を活かして、成長をした企業も多く見受けられました。新規事業へ転換した企業もありました。今後もこのようなウイルスが流行るかは分かりませんが、BCP(事業継続計画)対策の一つにしてみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

出口裕美

社会保険労務士法人出口事務所 代表社員
(https://www.deguchi-office.com/)
特定社会保険労務士

2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。

経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中。

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