【専門家の知恵】フリーランスと労働者の違いは何?フリーランスへの業務委託で注意すべきポイントを知ろう

公開日:2024年2月2日

 

フリーランスと労働者の違いは何?フリーランスへの業務委託で注意すべきポイントを知ろう


<いろどり社会保険労務士事務所 代表 内川真彩美/PSR会員>

近年、フリーランスという働き方を選択する人やフリーランスと契約する企業が増えてきました。

しかし中には、労働時間や年次有給休暇などの管理をしなくて済む、割増賃金や社会保険料の削減になる、などの理由でフリーランスと契約する企業もあるようで、フリーランスの広がりに合わせてトラブルも増加傾向にあります。

そこで今回は、フリーランスと契約する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

 

フリーランスを取り巻く環境

経済産業省が公表している「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」では、フリーランスを「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義しています。

「自営業主や一人社長」とあるように企業はフリーランスと業務委託契約や請負契約を締結して業務を依頼することが多く、自社の労働者として雇用契約を締結するわけではありません。

そのため、フリーランスには労働関係法令は適用されず、独占禁止法や下請法などが適用されることになります。

近年増加しつつあるのが、労働者とフリーランスの働き方に違いがないケースのトラブルです。

前述の通り、労働者であれば労働関係法令が適用されますので、深夜業や休日出勤には割増賃金が支払われ、最低賃金も適用されます。

年次有給休暇も付与され、要件を満たせば社会保険や労働保険にも加入できます。

それが、実際は労働者と同じ働き方をしているのに契約形態が異なるだけで一切保障されなくなるのはおかしいと、未払残業代の請求や慰謝料請求などのトラブルに発展しているのです。

 

フリーランスか労働者かの判断基準

「フリーランスか労働者か」という判断は、名称や契約形態ではなく実態で判断されます。

つまり、フリーランスとして業務委託契約を締結して業務遂行していたとしても、実態は労働者と何ら変わりない働き方をしていれば「労働者」として判断され、労働関係法令が適用されるのです。

では、実際の働き方のどこを見てフリーランスか労働者かを判断するのでしょうか。

前掲のガイドラインでは大きく2つの判断基準を設けており、この判断基準とその他の事情を総合的に見て判断します。

自社でフリーランスと契約をする際には、以下のポイントを押さえておきましょう。

(なお、以降は労働基準法上の「労働者」とフリーランスの判断基準を紹介します。)

 

(1)労働が他人の指揮監督下において行われているか

働く際に指揮監督関係があるかどうかは、フリーランスか労働者かを判断する重要なポイントです。

では、この「指揮監督関係の有無」をどのような観点で見ているのか、以下でいくつか紹介します。

<仕事の依頼等に許諾の自由があるかどうか>

具体的な仕事の依頼や業務に従事するようにと指示があった場合、それを受けるか受けないかを自分で決める自由がない場合、それは指揮監督関係があると判断されやすくなります。

<業務の内容について具体的な指揮命令を受けているかどうか>

業務内容に具体的な指示をしていると、指揮監督関係があると判断されやすくなります。

とはいえ、フリーランスに仕事を依頼するときに一切指示をしてはいけないわけではありません。

設計図や仕様書のようなものは連携するでしょうし、納品物に問題があれば指摘もするでしょう。

フリーランスへの指示は「設計書や業務上の遵守事項は渡すが、その先の順序ややり方は任せます」というイメージがわかりやすいかもしれません。

たまに「未経験可」のフリーランス募集を見かけますが、未経験者に具体的な指示なしで業務をしてもらうことは難しいと考えられます。

具体的な指揮命令をすると指揮監督関係が認められやすくなるため、このような募集は危険でしょう。

<勤務場所と勤務時間が指定・管理されているか>

勤務場所や勤務時間が指定・管理されている場合も、指揮監督関係があると判断されやすくなります。

とはいえ、例えば工事現場で騒音に配慮するために工事の時間を指定する等、業務の性質上時間指定や場所指定が必要な場合は、何ら問題ありません。

 

(2)報酬が指揮監督下における労働の対価として支払われているか

報酬が作業時間をベースに決定されていて仕事の出来による変動が小さい、仕事の結果に関係なく仕事をしなかった時間は報酬が減らされ、残業した場合に追加の報酬が支払われる、時間給や日給など時間単位で計算される、のようなケースは(2)を肯定する要素になると言われています。

 

本人の合意がある場合でも起こるトラブル

実態は労働者に近かったとしても、当事者同士が合意していれば問題ないと思われるかもしれません。

しかし、本人の合意の有無に関係なく、実態が労働者と同様であれば労働関係法令が適用されます。

とはいえ、当事者同士が合意していれば問題になることは少ないでしょう。

ただ、こういうケースでも問題になるのが、業務中のケガや私傷病により業務遂行できなくなった場合など有事の際です。

「労働者であれば労災や傷病手当金の申請ができたのに」と、後から問題になることがあります。

このようなケースでは、本人ではなく家族が訴えてくることも多いようです。

 

自社でフリーランスと契約している場合には実態を確認しておきましょう。グレーな契約がある場合には、今のうちに見直しておくことを推奨します。

 

 

プロフィール

特定社会保険労務士 内川真彩美

いろどり社会保険労務士事務所(https://www.irodori-sr.com/)代表 

成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。

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