前回の記事では、育成した外国人材が転籍した場合の補填制度が満額を保証するものではないこと、ここで働き続けたいと思ってもらうことが最も確実な投資回収策であることをお話ししました。
今回は、その定着を確実なものにするために、賃金・助成金・キャリアパスという三つの観点から考えてみようと思います。
据え置けない賃金
1番目に留意すべきことは、育成就労における賃金の底が、制度によって引き上げられている点です。
育成就労外国人には、同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払うことが義務付けられます。
さらに、転籍制限期間を2年とする分野(注1)については、所定内賃金の昇給その他の待遇向上措置が義務付けられることとなっており、分野によっては分野別協議会(注2)が設定・公表する昇給率に基づく昇給が求められます。
つまり、日本人と同等以上の水準であることに加えて、計画的に昇給することが制度の前提に組み込まれています。
定着のための賃金設計には、任意の上乗せではなく、この底上げされた土台の上で、納得感のある差をどのようにつけていくか、この観点での発想が求められていくように思われます。
注1:育成就労制度は本人意向による転籍が認められている。企業が転籍を制限できる期間について、1年とすることを目指しつつも、当分の間、産業分野ごとに、その業務内容等を踏まえて1年から2年までの範囲内で設定することとなっている。現在のところ、介護、建設、工業製品製造業、造船・舶用工業、自動車整備、飲食料品製造業、外食業、資源循環の8分野では2年、ビルクリーニング、リネンサプライ、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、林業、木材産業の9分野では1年とされている。
注2:特定技能・育成就労制度において、分野所管省庁が分野ごとに設置する会議体のこと。受入れ機関(特定技能所属機関・育成就労実施者)には、それぞれ、この協議会への加入が義務付けられている。
助成金を活用する際の留意点
2点目に述べるのは、助成金活用時の注意点です。
一般的に、外国人雇用に対応した助成金として、正社員化の際の「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」の活用が候補に挙がります。
ただし、この制度は帰国を前提とする技能実習生や、在留期間に上限のある特定技能1号については対象外とされています。
プロフィール
大塚陽太郎
大塚社会保険労務士事務所(https://www.sr-otsuka.tokyo/) 社会保険労務士
約30年間、厚生労働省にて雇用の安定に向けた取組に多様な立場で関わる。コロナ禍での技能実習生の援助や、労働者派遣事業・職業紹介事業の指導監督を通じ、第一線の課題を把握しつつ事業適正化に取り組む。障害者雇用の制度運営や、職業訓練施策の企画にも携わる。
令和7年3月に厚労省を早期退職し、5月に社会保険労務士事務所を開設。オーダーメイドでの支援、経営者・従業員がともに輝く職場づくり、丁寧・迅速がモットー。

【人事担当者のための外国人雇用の制度と実務】










