2027年4月1日、外国人技能実習制度に代わって育成就労制度が施行されます。
制度の概要はすでに多くの解説記事が出ておりますので、ここでは人事・労務の実務、特に「先行投資」と「人の定着」という観点から、この制度変更が企業に与える課題や留意点について考えてみたいと思います。
技能実習制度では、実習生の転籍(転職)は原則として認められませんでした。つまり、一般的に、企業は、一度受け入れさえすれば、実習期間中は転籍されることを考えなくてよい、という前提で人材を確保することができます。
一方、育成就労制度では、一定の条件を満たせば、本人の意向による転籍が認められるようになります。転籍のことを考えなくてよい前提がなくなるのです。
もちろん、転籍が日常的に起きるとまでは言えません。制度上、比較的賃金の高い都市圏への流出を防ぐ立て付けにもなっています。
ただし、自社で育てた人材が他社へ移る可能性があるのです。そのような制度へ生まれ変わる意味は大きいものと考えます。
外国人の受け入れには投資が必要
外国人材の受け入れには、相応の初期費用がかかります。
技能実習の実績では、募集・選抜や入国後講習などで一人あたり平均34万円程度、これに加えて監理費が雇用期間を通じて月3万円ほど、そして不定期費用が一人15万円ほど発生します(いずれも主に監理団体へ支払い)。
ちなみに、技能実習生1名を受け入れるに当たって、技能実習修了までに要する費用の各平均値を合計(初期費用+各号の定期費用の年額)すると、技能実習2号(3年間)までは約141万円、技能実習3号(5年間)までは約198万円となっています。※
※『技能実習制度及び特定技能制度の現状について』(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第1回)資料3、P.22)
(https://www.moj.go.jp/isa/content/001385692.pdf)
育成就労でも、これに近い、あるいはこれを上回る負担構造が続くと見込まれます。
「上回る」としたのは、育成就労では、特定技能1号への移行要件に、修了時におけるA2相当の日本語試験合格が求められます。そのため、企業に対し、育成期間中にA2相当目標講習(100時間以上)の受講機会を提供する義務が課されることになります。つまり、そのための費用が純増になると見込まれるからです。
このように、企業は、就業開始前から賃金とは別に「投資」を積み立てていると言えるでしょう。
技能実習ではこの投資が転籍で失われる心配はありませんでした。しかし育成就労では、育てた人材が他社へ移れば、その投資の一部が回収できないおそれが出てくるのです。
掛けた投資を補填する制度はある。ただし満額ではない
ここで、転籍に関する育成就労制度の仕組みを確認しておきましょう。
育成就労では、育成就労外国人本人の意向による転籍の場合、転籍先の企業が転籍元の初期費用の一部を補填する仕組みが設けられています。
つまり、転籍元の投資が丸損にならないよう、一定の配慮がなされているのです。
ただし、この補填には注意すべき点が二つあります。
一つは、補填額が実費そのものではなく、主務大臣が告示で定める金額をもとに、在籍期間に応じた按分率(下表)を掛けて算定されることです。また、在籍が長くなるほど按分率は下がります。
プロフィール
大塚陽太郎
大塚社会保険労務士事務所(https://www.sr-otsuka.tokyo/) 社会保険労務士
約30年間、厚生労働省にて雇用の安定に向けた取組に多様な立場で関わる。コロナ禍での技能実習生の援助や、労働者派遣事業・職業紹介事業の指導監督を通じ、第一線の課題を把握しつつ事業適正化に取り組む。障害者雇用の制度運営や、職業訓練施策の企画にも携わる。
令和7年3月に厚労省を早期退職し、5月に社会保険労務士事務所を開設。オーダーメイドでの支援、経営者・従業員がともに輝く職場づくり、丁寧・迅速がモットー。

【人事担当者のための外国人雇用の制度と実務】









