フレックスタイム制で完全週休2日制をとっているにも関わらず、清算期間の総労働時間が週40時間を超えてしまうときは、時間外労働手当を支払わなければいけないのですか?

公開日:2008年7月11日
Q.フレックスタイム制で完全週休2日制をとっているにも関わらず、清算期間の総労働時間が週40時間を超えてしまうときは、時間外労働手当を支払わなければいけないのですか?
A.行政解釈により、特定の要件を満たした場合、清算期間の労働時間が法定労働時間の総枠を超えても、法定労働時間以内とみなす場合があります。
解説

 フレックスタイム制を採用した場合、割増賃金の支払いが必要となる時間は、清算期間の法定労働時間の総枠を超えた時間です。清算期間の法定労働時間の総枠は次の計算式によって求められます。

 週の法定労働時間×清算期間における暦日数÷7

 そこで、問題となるのが、清算期間を1ヶ月とした場合、清算期間を通じて完全週休2日制を実施しており、かつ、労働者の実際の労働時間がおおむね一定で、各月ごとの労働の実態が変わらないときでも、清算期間の暦日数のめぐりによっては、清算期間の総労働時間が前記の法定労働時間の総枠を超えることがあることです。

 例えば、完全週休2日制でおおむね1日8時間勤務の場合。 清算期間は1ヶ月。31日の月の総労働時間は、40時間×31日÷7=約177時間6分。
 しかし、第1週目から第4週目までは、8時間×5日=40時間×4週=160時間。仮に、残りの29日、30日、31日をすべて出勤した場合、8時間×3日=24時間。 この月の実労働時間は184時間となります。この月の法定労働時間の総枠は177時間6分です。そうすると、約7時間の時間外労働手当が発生してしまいます。月の暦日数が多いか少ないか、または月の第5週目の出勤数が多いか少ないかにより、法定労働時間の総枠を超えたり超えなかったりしてしまいます。

 このような不合理に対応するため、行政解釈では、次の要件を満たす場合に限って、特別な取り扱いを認めています。

  1. 清算期間を1ヶ月とするフレックスタイム制の労使協定が締結されていること。
  2. 清算期間を通じて毎週必ず2日以上休日が付与されていること
  3. 当該清算期間の29日目を起算とする1週間(以下「特定期間」という)における当該労働者の実際の労働日ごとの労働時間の和が法32条1項に規定する週の法定労働時間(40時間)を超えるものでないこと。
  4. 清算期間における労働日ごとの労働時間がおおむね一定であること。したがって、完全週休2日制の採用事業場における清算期間中の労働日ごとの労働時間については、おおむね8時間以下であること。

以上の要件を満たす場合、法32条の3に規定する「清算期間として定められた期間を平均」した1週間当たりの労働時間は、次の計算方法でも差し支えありません。 清算期間として定められた期間を平均した1週間の労働時間= (清算期間における最初の4週間の労働時間+特定期間における労働時間)÷5 つまり、清算期間のうち最初の4週間の労働時間とその翌月から翌月にまたがる特定期間を合わせた5週間を平均した1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内である場合には、清算期間の労働時間が法定労働時間の総枠を超えても、法定労働時間以内とみなすということです。

コンサルタントからのアドバイス

上記の1~3の要件に該当せずに、法定労働時間の総枠を超えた場合は、暦日数が多い少ないに関わらず、時間外労働手当を支払わなければなりません。 <社会保険労務士 PSR正会員 松田 将紀>

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