【専門家の知恵】今や労働人口の3人に1人!治療と仕事の両立の際に知っておきたい制度について解説

公開日:2022年4月19日

<社会保険労務士法人SOPHIA 代表 松田 法子/PSR会員> 

 

 現在、労働人口の約3人に1人が何らかの疾病を抱えながら働いているそうだ。疾病の有病率は年齢が上がるほど高くなる状況にあり、労働力の高齢化が進むことが見込まれる中、企業においては、疾病を抱えた労働者の治療と仕事の両立への対応が必要となる場面はさらに増えることが予想される。今回は、治療と仕事の両立の際に利用される、傷病手当金、障害年金の制度について解説したい。 

 

傷病手当金とは  

 傷病手当金は、病気休業中に健康保険被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給される。


1.支給要件について

 支給要件は、以下の4点だ。

① 業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること
  業務上や通勤災害によるものについては、労災からの給付対象となる。

② 仕事に就くことができないこと
    仕事に就くことができない状態の判定は、医師等療養担当者の意見を基に、仕事の内容を考慮して判断される。

③ 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
    連続する3日間は待期期間とよばれるが、この期間には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれ、給与の支給の有無は関係がない。実際に働いていないことが必要だ。

④ 休業した期間について給与の支払いがない(または少ない)こと
    傷病手当金は、休業4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されるが、その日について、給与が支給される場合や、有給取得をしている場合は、傷病手当金は支給されない。ただし、給与の支給があっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給される。

 

2.支給期間について

 傷病手当金が支給される期間は、2022年1月に法改正している。
 これまでは、「支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間」となっており、この1年6ヵ月の期間には仕事に復帰した復職期間も含まれていた。
 今年1月1日以降は、「支給を始めた日から通算して1年6か月」となった。
 仕事に復帰した後に再び休職となっても、復職期間(傷病手当金を受給していない期間)分を延長して支給を受けられることとなる。

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3.支給される傷病手当金の額について

 支給される傷病手当金1日あたりの支給額は以下の計算式による。

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 なお、支給開始日以前の加入期間が12か月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算する。
① 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均値
② 標準報酬月額の平均値
※支給開始日が平成31年4月1日以降は30万円

 

4.退職後の継続給付について

 退職日までの健康保険被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であれば、退職後も引き続き傷病手当金の支給を受けることができる。退職日に挨拶等で出勤する場合があるが、その場合、傷病手当金の継続給付の支給を受けることができなくなる可能性があるので、注意したい。 

 

障害年金とは 

 年金というと、老後の生活を支える「老齢年金」を思い浮かべる人も多いと思うが、不慮のけがや病気などで障害の状態になったときに「障害年金」を受けることができ、現役世代にとっても、"人生のもしも"を支える重要な社会保障制度となっている。
 「障害の状態」とは、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの障害だけでなく、がんや糖尿病、心疾患などの内部疾患により、長期療養が必要で仕事や生活が著しく制限を受ける状態になったときなども含まれる。また、障害者手帳をもっていない場合でも、障害年金を受けることができる。
 障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けたとき(以下「初診日」という。)に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できる。

 

1.3つの要件について

 障害年金を受給するには、次の3つの要件を満たしている必要がある。なお、①②の要件については、20歳前に初診日がある場合は不要である。

① 初診日要件
    初診日において、国民年金、厚生年金又は共済年金に加入していること。

② 保険料納付要件
    障害年金も他の保険制度同様、一定以上保険料を納めていないと受け取れない。
    納付要件を満たしているかどうかは、次のいずれかに該当しているかで判断される。
   (1)初診日の属する月の前々月までの国民年金加入期間において、年金保険料の納付月数と免除月数の合算月数が3分の2以上あること
   (2)初診日において、65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料未納月がないこと

③ 障害等級該当要件
    初診日から起算して1年6ヶ月を経過した日が障害認定日として定められている。障害の状態が、障害認定日に、障害等級(障害厚生年金:1~3級、障害基礎年金:1級~2級)のいずれかに該当している必要がある。ただし、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは、障害年金を受け取ることができる場合がある。
    また、障害認定日については、事由により、特例として1年6ヶ月待つことなく請求手続きができる場合もある。障害年金の請求の際は、いつが障害認定日になるのか確認しておきたい。

 

2.障害年金額について

 障害年金額については、以下の表のとおりだ。初診日に厚生年金に加入していた人は、障害基礎年金に上乗せする形で障害厚生年金を受け取れる。
 障害厚生年金は障害基礎年金と違って、障害等級3級まで受給対象者としているのが特徴だ。
 障害年金額については、自分で正確な金額を算出するのは難しいため、年金事務所窓口で確認をすることをおすすめする。

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 今回は、治療と仕事の両立の際に利用できる「傷病手当金」「障害年金」の制度について解説した。特に障害年金については、働いていると貰えないという勘違いや、がん等の病気で貰えることを知らない人も多い。病気になって従来通りの勤務が難しくなり、やむを得ず労働条件の変更で収入減となりながらも仕事を続けることもあるだろう。そんなときは支えてくれる制度であるので、労働者も、そして人事労務担当者も知っておきたい。

 

プロフィール

特定社会保険労務士、産業カウンセラー 松田 法子
社会保険労務士法人SOPHIA(https://sr-sophia.com/)代表
労使双方が幸せを感じる企業造りに貢献できるよう社会保険労務士として日々研鑽を重ねております。
 
 
 

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