従業員が悩みなどを相談する代表的な相手に「上司」が挙げられます。
「上司」の対応次第では、問題が解決できたり、それとは反対に何も解決せずに終わることも考えられます。だからこそ「上司」が最初にどのような対応するのかが、とても重要になります。
今回は、部下から「介護の悩み」を打ち明けられたことを想定し、上司が部下の話の聞く上で大切にしたい3つのポイント(3箇条)を解説します。
~その1~何よりも部下への謝意・誠意を伝える
部下にとってみれば「介護の悩み」を打ち明けるのは、とても勇気がいることです。
会社にも迷惑を掛けてしまうのではないか…。そのような思いを持って「介護の悩み」を部下が伝えたのであれば、まずは上司から謝意の言葉を伝えることが大切です。
その謝意の言葉が、何よりも部下の気持ちを楽にさせます。
一方で「仕事が忙しすぎるから、介護ができない」など、部下が不満を表現する形で伝えることもあるかもしれません。
そのような際にも、誠意を持って対応することが大切です。
部下が上司へ不満などを伝えることも、とても勇気がいることです。その勇気が、問題を解決する糸口にもつながっていくからです。
~その2~キャッチボールを意識した部下との確実なコミュニケーションを実践する
例えば、部下に対して「介護休業をとっても、あなたのキャリアへの悪影響はありません」と伝えたとします。
上司としてこのような言葉を伝えることは、とても大切なことです。
一方で部下の立場に立った時に「介護の悩み」は、さまざまなものが考えられます。
例えば、次の①~⑤のようなそれぞれの悩みがあったとします。
① 介護休業をとると、自らのキャリアへ悪影響を及ぼすのではないか
② 介護休業をとると、同僚の仕事が増えて迷惑を掛けてしまうのではないか
③ 介護休業をとる必要はないが、介護の疲労感が残るので勤務時間を短縮したい
④ 親を介護することになったが、介護保険についてどこへ相談したらよいかが分からない
⑤ 介護をしているとストレスが溜まり、自らの気持ちが行き詰ってしまう
部下の「介護の悩み」は具体的にどのようなことなのかを、上司は確実なコミュニケーションにより、把握することが大切です。
例えば「①介護休業をとると、自らのキャリアへ悪影響を及ぼすのではないか」であれば、上司が「介護休業をとっても、あなたのキャリアへの悪影響はありません」と伝えることで、会話のキャッチボールが生まれていきます。
一方で「②介護休業をとると、同僚の仕事が増えて迷惑を掛けてしまうのではないか」の場合に、上司が終始その部下のキャリアのことを話したら、部下はより一層罪悪感を抱くかもしれません。
上司がボールを投げてばかりで、部下はボールを受けることもできなければ、投げることもできません。
その場合には、上司はキャリアの話から切り替えて、部下が安心できるようなコミュニケーション(休業時の業務体制、心配をしてくれたことへの謝意など)をとることが大切です。
~その3~部下とともに伴走する意図の言動を表す
介護は、終わりが明確でないことに、その特徴があります。
だからこそ、上司が「部下とともに伴走する」という意図の言動がとても大切になります。
先ほどの「③介護休業をとる必要はないが、介護の疲労感が残るので、勤務時間を短縮したい」であれば、短時間勤務制度などを勧めるとともに、上司が部下の体調を常に留意するといったことです。
その他「④親を介護することになったが、介護保険についてどこへ相談したらよいか分からない」であれば、社内の相談窓口担当者へ伝える・地域包括支援センターの情報を伝えるなどとともに、その手続きのために日単位の介護休暇をとることなどを勧めた上で、その後の様子などを聞いてみることが考えられます。
また「⑤介護をしているとストレスが溜まり、自らの気持ちが行き詰ってしまう」であれば、すぐに何かの制度を紹介するよりも、まずは部下の辛い気持ちに共感できるように話を聴くことが必要なことなもかもしれません。その後に、部下へ寄り添い続ける関わりが大切になっていきます。
上司の発言例で出した「介護休業をとっても、あなたのキャリアへの悪影響はありません」も、部下とともに伴走する意図を表現したものです。特に「①介護休業をとると、自らのキャリアへ悪影響を及ぼすのではないか」の部下の悩みに伴走した言葉です。
大切なことは「キャリア」など一つの概念だけに固執することなく、どのような「伴走の形」が良いのかを整理し、柔軟な対応を心掛けましょう。
プロフィール
昭和51年生まれ。日本社会事業大学専門職大学院福祉マネジメント研究科卒業。約20年にわたり社会福祉に関わる相談援助などの業務に携わるとともに、福祉専門職への研修・組織内OFF-JTの研修企画などを通じた人材育成業務を数多く経験してきた。特定社会保険労務士として、人事労務に関する中小企業へのコンサルタントだけでなく、研修講師・執筆など幅広い活動を通じて、“誰もが働きやすい職場環境”を広げるための事業を展開している。
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