確定拠出年金法施行規則などの一部改正

公開日:2017年12月22日

  「確定拠出年金法等の一部を改正する法律(平成28年法律第66号)」の一部の施行により、いわゆる個人型DC小規模事業主掛金納付制度、簡易型DC制度、ポータビリティの拡充などの改正規定が平成30年5月1日から施行されます。
 それに伴い、施行される規定に係る厚生労働省関係の省令を規定することとされました。〔平成30年5月1日施行〕
 概要は以下の通りです。

〇確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(平成29年厚生労働省令第134号)

1 確定拠出年金法施行規則(以下「DC則」という)の一部改正関係

(1)中小事業主掛金納付制度の創設に伴う届出方法等の規定の整備
①中小事業主掛金の拠出に係る届出方法や加入者要件、事業主による加入者への通知内容等を規定することとされました。
②恒常的に被用者数が100名を超えると見込まれる場合は中小事業主掛金納付制度を利用する事業主の要件を満たさなくなるところ、要件に該当することを確認するため、年1回、中小事業主掛金を拠出する事業主に対して被用者数を届け出るよう規定することとされました。

(2)簡易企業型年金の創設に伴う省略書類等の規定の整備
①規約承認手続時の必要書類のうち、簡易企業型年金の場合に省略できる書類として、法律で定めるもの以外に、実施事業所における労働協約及び就業規則並びに確定拠出年金運営管理機関の選任理由についての書類を規定することとされました。
②企業型年金加入者の資格を有する者の数が100人を超えると見込まれる場合には簡易企業型年金の要件を満たさなくなるところ、要件に該当することを確認するため、簡易企業型年金の厚生年金被保険者数及び加入者数等について、毎年の業務報告書にて報告事項とする旨を規定することとされました。

(3)対象運用方法の区分に係る事項に関する規定の整備
①対象運用方法の区分に係る事項として、次のとおり定めることとされました。
・預金については、預金又は貯金の預入の相手方、預金又は貯金の種類及び預入期間
・信託(ターゲットデートファンドを除く。)については、信託の契約の相手方、信託財産の管理又は処分の方法及び信託契約の期間
・公社債投資信託のうち信託の計算期間の終了日が継続した12 月間の各月に順次到来するものについては、委託者及び運用の基本方針、その他の公社債投資信託については国際標準化機構の規格
・生命保険及び損害保険のうち元本が確保されている商品については、保険契約の相手方、普通保険約款、予定利率の適用期間及び元本を下回らないとする定めの有無
・生命保険及び損害保険のうち元本が確保されている商品以外の商品(ターゲットデートファンドを除く。)については、保険契約の相手方、普通保険約款、運用の対象となる資産の種類及び構成
・ターゲットデートファンド(信託、投資信託、生命保険及び損害保険)については、契約の相手方及び資産運用の方針
②加入者等の選択を阻害することのないようターゲットデートを複数設定するものであることを規定することとされました。
※ターゲットデートのみが異なるものは同一のものとします。

(4)指定運用方法の選定基準等に関する規定の整備
①指定運用方法の選定基準の要件について、長期的な観点から、対象運用方法のうち以下の要件を満たすものである旨規定することとされました。
・経済事情の変動による損失の可能性について、実施事業所に使用される企業型年金加入者の集団の属性等に照らして、許容される範囲内であること。
・運用から見込まれる収益について、当該集団に必要とされる水準が確保されると見込まれること。
・損失の可能性が、運用から見込まれる収益に照らして合理的と認められる範囲内のものであること。
・運用の方法に係る手数料等の費用の額の合計額が、運用から見込まれる収益に照らし、過大でないこと。
②指定運用方法の選定基準を満たすことができるよう、運営管理機関は事業主に対し必要な情報の提供を求めることができ、事業主は必要な情報を提供するよう努める旨規定することとされました。
③加入者等に係る原簿又は帳簿において指定運用方法等に係る内容を記録するよう規定することとされました。

(5)運用の方法及び指定運用方法等に係る情報提供及び通知に関する規定の整備
①加入者等への運用の方法に係る情報提供の内容に、提示する運用の方法毎の情報だけでなく、提示する運用の方法の全体構成に関する情報を追加することとされました。
②加入者等への指定運用方法に係る情報提供の内容に、指定運用方法による運用の場合は、運用の指図の変更を行うことが可能であること及び加入者等本人が指図した場合と同様に運用の結果に係る責任を負う旨等を明記するよう規定することとされました。
③毎年の加入者等への通知の内容として、運用の指図を行っていない個人別管理資産がある場合は、運用の指図を行っていない個人別管理資産の額及び運用の指図を行うことが可能である旨、指定運用方法が適用されている場合は、指定運用方法に充てた未指図個人別管理資産の額及び運用の指図の変更を行うことが可能である旨、指定運用方法が提示されている場合には加入者等本人が指図した場合と同様に運用の結果に係る責任を負う旨を記載することを規定することとされました。

(6)DCからDBに資産を移換する場合の所要の措置
①DCからDBへ資産を移換後に再度DCに移換した者は、申出により、DBに移換する前に加入していたDCの記録関連運営管理機関(以下「RK」という。)の記録を通算させることができるものとされました。
②資産移換を行う際の所要の手続事項等について定めることとされました。
③他制度移換者の原簿の最低限の記録保存期間を、5年から10年とすることとされました。

(7)DCから中小企業退職金共済(以下「中退共」という。)に資産を移換する場合の所要の措置
①資産移換を行う際の所要の手続事項等について定めることとされました。
②DCと中退共間のポータビリティの要件である「合併等」は、「事業再編により、1つの中小企業に2つの異なる退職給付制度が併存する場合」を基本的な考え方として、合併、分割及び事業譲渡を実施する場合とします(DBと中退共間の場合も同様。)。

(8)DC間のポータビリティの拡充に伴う所要の措置
①従前のDC間ポータビリティのタイミングは、転職・就職時に限定することとしていましたが、今般の改正法の施行に伴い、DC間ポータビリティが本人の意思に基づいて行われることとなったことから、資産移換のタイミングを転職・就職時に限定しないこととされました。
②乙企業型DCの加入者又は加入者だった者が甲企業型DCの加入者資格を取得した場合であって、乙企業型DCの資格喪失後6か月経過したときは、甲企業型DCに自動的に資産が移換されるが、当該者が、他の企業型の加入者でないか、他のRK等に対して1か月に1度、確認することとされました。
③企業型DCの新規加入者の加入通知を受けRKは、当該新規加入者が、以前に資格喪失後6か月経過したことにより国民年金基金連合会に自動的に資産が移換されている者でないか、1か月に1度、特定運営管理機関に対して確認することとされました。
④企業型DCの資格を喪失した者であって、資産移換の手続を行わなかった場合、国民年金基金連合会に企業型DCの個人別管理資産を移換することとしているが、企業型DCの資格を喪失した時点で個人型DCの個人別管理資産も保持している場合には、企業型DCの個人別管理資産を個人型DCの個人別管理資産に合算することとされました。

2 確定給付企業年金法施行規則の一部改正関係

(1)DBから中退共に資産を移換する場合の所要の措置
①DBと中退共間のポータビリティの要件である「合併等」の範囲と移換を行う際の所要の手続事項等について定めることとされました。
②DBの実施事業主又は基金は、DBの加入者資格を喪失した者又はDBを終了した日に加入者であった者に対して、中退共への移換に関して必要な事項を説明しなければならないこととされました。
③DBから中退共に移換する場合においては、中退共において個人毎に掛金納付月数の通算が行われるため、DBから移換する額として移換する者ごとに、
・移換元のDBを終了して資産を移換する場合は、残余財産の分配金
・移換元のDBを終了せずに資産を移換する場合は、最低積立基準額
を移換することとされました。
④DBから中退共に資産を移換する場合おける移換者に係る移換額の算定方法については、DBからDCへ資産を移換する場合の算定方法と同様とすることとされました。

(2)DC又は中退共からDBに資産を移換する場合の所要の措置
①移換先のDBを中途脱退した場合に、移換先DBの脱退一時金相当額がDC又は中退共から持ち込んだ移換額を下回ることのないよう措置を講ずることとされました。
②現行のDB間の資産移換と同様、移換先DBの規約等を勘案し、移換元DC又は中退共から移換又は引渡しを受けた額の算定の基礎となった期間の一部のみを引き継ぐ取扱いも可能とすることとされました。
③DBの実施事業主又は基金は、DBの加入者資格を取得した者について、DC又は中退共の資産がある場合であって、当該DBに移換可能な場合、当該者に対して、DBに移換できる旨を説明しなければならないこととされました。

(3)DCからDBのポータビリティの拡充に伴う所要の措置
DB間の資産移換においても移換額の算定の基礎となる期間の開始日及び終了日を移換先に引き渡す等の所要の改正を行うものとされました(連合会への移換も同様の措置とします)。

3 中小企業退職金共済法施行規則の一部改正関係

(1)DB又は企業型DCから中退共に資産を移換する場合の所要の措置
①資産移換を行う場合に資産管理運用機関等又は資産管理機関と勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)間で締結する契約内容、また、当該資産管理運用機関等又は資産管理機関は、機構が振込先の預金口座を指定した日から起算して60 日以内に資産移換を行わなければならない旨定めることとされました。
②事業主が機構に対して行う資産移換の申出内容及び添付書類について定めることとされました。
③資産移換の申出を行った事業主に対しては、加入促進のための掛金負担軽減措置は適用しないこととされました。
④資産移換が行われた場合の被共済者の退職金の算定方法の詳細について定めることとされました。

(2)中退共からDB又は企業型DCに資産を移換する場合の所要の措置
①資産移換を行う要件となる「合併等」の範囲について定めることとされました。
②共済契約者が機構に対して行う資産移換の申出は、合併等をした日から起算して1年以内で、退職金共済契約が解除された日の翌日から起算して3月以内に行うこととし、その申出内容及び添付書類について定めることとされました。
③共済契約者が資産移換のために退職金共済契約を解除するときは、資産移換に関して必要な事項について、被共済者に説明しなければならないものとされました。
④機構から資産移換を行うことができるDBの要件及び企業型DCの要件について定めることとされました。

(3)その他所要の措置を講ずるほか、施行日以後にDB又は企業型DCから機構へ資産移換を行った事業主が施行日前に退職金共済契約の申込みを行っていた場合は、加入促進のための掛金負担軽減措置が適用されるものとする経過措置を定めることとされました。

4 その他

ポータビリティの拡充に伴い、個人別管理資産の移換等に関し所要の経過措置を定めるほか、所要の改正を行うこととされました。

〔確認〕平成30年5月1日から施行される規定の概要は、次の通りです。
<平成30年5月1日から施行される規定の概要>
1.企業年金の普及・拡大
①事務負担等により企業年金の実施が困難な中小企業(従業員100人以下)を対象に、設立手続き等を大幅に緩和した『簡易型DC制度(簡易企業型年金)』を創設。
②中小企業(従業員100人以下)に限り、個人型DCに加入する従業員の拠出に追加して事業主拠出を可能とする『個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度(中小事業主掛金納付制度)』を創設。

2.ライフコースの多様化への対応
DCからDB等へ年金資産の持ち運び(ポータビリティ)を拡充。
→就労形態が多様化する中、加入者の選択肢を拡大し、老後所得確保に向けた自助努力の環境を向上させるため、確定拠出年金(DC)から確定給付企業年金(DB)へのポータビリティ(年金資産の持ち運びを可能とすること)、及びDC・DBと中小企業退職金共済とのポータビリティ(事業再編による合併等を行った場合に限る。)を拡充。

3.DCの運用の改善
①運用商品を選択しやすいよう、継続投資教育の努力義務化や運用商品数の抑制等を行う。
②あらかじめ定められた指定運用方法に関する規定の整備を行うとともに、指定運用方法として分散投資効果が期待できる商品設定を促す措置を講じる。


この省令は、平成30年5月1日施行されます。

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