「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告書が公開されました

公開日:2011年12月11日

 “近年、精神障害の労災請求件数が大幅に増加し、その事案の審査には平均約8.6か月を要しており、一層迅速な労災補償を行っていく必要がある”という理由から、厚生労働省では、平成22年10月から「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催し、審査の迅速化や効率化を図るための精神障害の労災認定の在り方について検討を行っていました。  また、平成23年2月からは、この専門検討会の下にセクシュアルハラスメント事案特有の事情への対応のための「分科会」も開催しています。  このたび、その検討会の報告書が取りまとめられ、公表されました。  ここでは、そのポイントを紹介しておきます。

1.「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」報告書のポイント

① 業務による心理的負荷(ストレス)の評価基準の改善

 ○ 心理的負荷の強さを判断するための新たな評価表を提示する   ・「出来事」と「出来事後の状況」を一括して評価   ・認定対象となる強い心理的負荷と認められる出来事の具体例を記載    (倒産を招きかねないなど会社の経営に影響する重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たった 等)   ・長時間労働を伴っている場合の認定方法を記載    (転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合は「強」 等)  ○ 出来事が複数発生している場合の評価方法を明示する  ○ 評価期間(6か月)の例外として、セクシュアルハラスメントやいじめが長期間継続する場合を記載する  ○ 既に発病していた業務外の精神障害が、業務による出来事により悪化した場合の認定要件を明示する

② 審査方法等の改善

 ○ 精神科医の専門部会による合議を、特定の事案に限定する(全件協議→判断が難しい事案のみ協議)  ○ 業務以外の心理的負荷、個体側要因の調査を簡略化する(請求人の負担軽減)  ○ セクシュアルハラスメント事案に関する職員への研修と専門知識を持つ者等の育成・配置を促進する  ★ ①②により、審査の迅速化と認定の促進を図ることとされています。

2.まとめ

 厚生労働省では、この報告書を受け、速やかに精神障害の労災認定の基準を改正し、業務により精神障害を発病された方に対して、一層迅速な労災補償を行っていくとのことです。  また、分かりやすい基準とし、業務により精神障害を発病された方から労災請求が行われやすくすることにより、認定の促進も図っていくようです。

 最も重要な経営資源といえる「人(労働者等)」の心の健康を維持することは、企業が責任を持って行なっていくべきことと言えます。  それは、上記のような厚生労働省の方針をみても明らかです。  長時間労働に関する労働基準法の規制等を守ることはもちろん、メンタルヘルス対策等も行って、精神障害を発病する方のいない職場作りを目指しましょう(労災認定に発展するようなトラブルがないことがベストです)。  そうすれば、生産性の向上にもつながり、結局は、企業の利益となります。

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