
上司と部下のリーダーシップと生産性がパワハラの発生要因に
<榎本・藤本・安藤総合法律事務所 弁護士・中小企業診断士 佐久間 大輔>
国際労働機関(ILO)が、職場のいじめは国によっては「流行病的レベル」に達していると報告したのが2006年だ。
もはや目新しい問題ではないが、安全配慮義務に関する裁判例を分析すると、ストレス性疾患の要因として、労働の量的負荷(労働時間)から質的負荷へ、さらにハラスメントへと移行していることが分かる。
パワーハラスメントの事実調査を担当していると、その遠因として、「リーダーシップ」と「生産性」が見えてくる。
リーダーシップと生産性
リーダーシップとは、組織の目標を達成するため、協働する組織の人員の意思決定に影響を及ぼす力をいう。目標達成(時に変革)を推し進める機能がある。そのため、リーダーと部下が同じ方向性を共有していることが必要だ。そこで、リーダーには、客観的に環境分析をして組織の目標を決定する能力とともに、部下に目標達成を意識づける能力が必要となる。
一方、マネジメントには、効率的かつ確実に集団を運営する機能がある。
いずれの機能を果たすためにも、目標の決定→目標達成に向けた組織構造の構築→組織が目標達成をするための手段の実行という過程を踏むことになる。その手段として、リーダーシップにおいては、▽長期的な方針を表明する、▽方針を周知することにより組織の人員を統合する、▽組織の人員の動機づけを図ることが挙げられる。これに対し、マネジメントのレベルにおいては、短期的な計画の策定、予算・実績管理、組織構造の設計と人員の配置が手段となる。
このようにリーダーシップとマネジメントは別個のものである。ただし、相補的な関係にはある。
そうすると、たとえマネジメント層(経営者、管理職)でなくても、従業員個人が自らリーダーシップを発揮することは可能である。それが、組織の目標達成にもつながるといえよう。
ところで、パワハラにおいて「リーダーシップ」というと、指示の出し方について上司のリーダーシップに問題があると捉えられることが多い。しかし、部下が指示待ちの姿勢でいると、業務遂行の過程で戸惑ってしまうのかもしれない。
そこで、特に新卒社員や未経験業務を担当する部下に対しては、ミッションや指示の趣旨を説明した上で、先が見通せる明確な指示内容とすることが必要だ。その一方で、このような部下については、業務の開始前からアウトプットのイメージを持たせつつ、最初に結論を決めさせた上で報告時に理由を聞くようにする。その際には、目標達成に必要な結論を自ら考えることができるように指導する。
一方、単独で業務をこなせる中堅・ベテランに対しては、権限委譲をしたり、自由裁量が大きい指示を与えたりする。そうすると、部下は「信頼してもらえている」と思い、モチベーションを上げることとなる。
リーダーシップを行動面でのスキルとして捉え、それを育成するために、部下が自らリーダーシップを発揮する機会を与える。これにより、部下が業務遂行の過程において自身がリーダーであればどのように行動するかを考えるスキルを身に付けられるようになる。部下が他の同僚(上司を含む)の意思決定にも影響を与えられるように行動させることが、マネジメント層のリーダーシップでもあるのだ。
上司と部下双方のリーダーシップが発揮されると、生産性が向上することになるだろう。
生産性とパワーハラスメント
プロフィール
弁護士・中小企業診断士
著書は『管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務』(日本法令)、『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方』(労働開発研究会)など多数。
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