【専門家の知恵】「ワークルール教育」の必要性

公開日:2023年12月18日

<社会保険労務士法人 出口事務所 代表社員 出口裕美/PSR会員>

「ワークルール」とは、働くときに必要な法律や決まりのことです。働き方も多様化しているなかで、知識不足から生じる不幸なトラブルを防止するためにワークルールを理解することが重要となっています。現状のワークルール教育は、主として学生が対象とされています。

一方で、経営者はワークルールを理解しないまま、今までの経営を続けることが法律違反や労務リスクになる可能性もあります。経営者が社員と共有の法律知識をもつことによって、コンプライアンスを推進し、無用な紛争を回避することができ、事業を円滑に進めることができます。

 

ワークルール教育の実態

厚生労働省では、平成28年度の「労働法教育に関する調査研究等事業」で、「『はたらく』へのトビラ~ワークルール 20のモデル授業案~」の冊子等を作成し、全国の高等学校等に送付しました。厚生労働省では、これまでも『知って役立つ労働法』や『まんが知って役立つ労働法Q&A』など、若い人々の労働法や制度の学習にも役立つ資料等を公開しておりますが、労働法や制度(ワークルール)が人々に生涯にわたり関係することや、現に働く上での様々なトラブルや問題が起こっていることなどから、高校生等にさらに労働法等のワークルールについての理解を深めてもらうべく、高等学校における労働法等についての授業が、一層充実して行われるよう、高校教員等のための資料として作成し、全国の高等学校等に配布したものです。

一方、日本労働組合総連合会(略称:連合)の「20代のワークルールに関する意識・認識調査」によると、これまでに、働くときに必要な法律や決まりごとについて学習する機会があったかについて、「あった」は 35.9%でした。

そこで、学習する機会があった人に、働くときに必要な法律や決まりごとについてどこで学習したか聞いたところ、「学校」が最も多く 52.4%、次いで、「勤務先(アルバイト先を除く)」が 42.3%、「アルバイト先」が 22.6%、「自分で調べた」が 21.7%、「労働組合」が 8.9%となりました。「公民」などの教科を履修し、ワークルールを学んだ人が多いのではないでしょうか。

 

高校生や大学生にとってのワークルール

高校生や大学生向けにワークルール教育を行っていると、過度な自己責任論が、高校生や大学生に浸透していると感じます。例えば、職場で物を壊してしまったとか、ミスをしたという場合に、損害賠償を全額しないといけないとか、解雇されても仕方ないと考えているようです。重要な試験があるのにシフトを変更してもらえない、自分がアルバイトを辞めるのであれば、代わりに誰かを紹介するというケースもあるようです。

そこで、経営者の損害賠償請求や解雇には制限があることや、労働基準法に違反する内容の契約は認められないという話をすると、高校生や大学生たちは驚いています。

学校教育で、人に迷惑を掛けてはいけないことや、ルールを守ることが強調されているのに対し、ワークルール教育では、理不尽なことに対して、自分で抱え込まないで、詳しい専門家に相談することが大切だと伝えています。最近は、インターネット等の情報を信じてしまう傾向がありますが、インターネット等の情報の全てが正しいとは限りません。最終的には、ワークルールを調べたり、詳しい専門家に相談したりしましょう。

 

経営者にとってのワークルール

ワークルールを守ることは、働く人にとってだけではなく、経営者にとっても重要です。

まず、基本的なワークルールが守られないような職場では退職者が増え、必要な人材の採用ができなくなる可能性が高くなります。よって、必要な労働力を確保することが困難となり、経営を継続することが難しくなります。

例えば、労働基準法に反して残業代を支払わない企業が製品を安売りしているようでは、一時的には、労働基準法を守る他の企業が不利になりますが、労働基準法に反している企業は健全な事業の継続ができなくなりますので、今後は労働基準法を守れる企業のみが事業を継続することが可能になるのではないでしょうか。

さらには、経営者がワークルールを知らないことで無用な労使紛争が生じることもあり、健全な労使関係の構築を妨げてしまいます。このように企業が健全に発展するためにも、経営者もワークルールを学ぶ必要があります。

最近は、法改正も頻繁にされています。今までの経験も重要ですが、ワークルールだけでなく、経営者は知るべきことがたくさんあります。経営者の皆様は、専門とする業務に専念するためにも、詳しい専門家と契約をして今までの経営に問題がないかを含めて、専門家に相談するようにしましょう。

 

プロフィール

出口裕美
社会保険労務士法人 出口事務所(https://www.deguchi-office.com/
代表社員 特定社会保険労務士

2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中

 

 

 

 

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