【専門家コラム】同一労働同一賃金の調査に労働基準監督署が!?指摘を受ける前に対策をしておきましょう!

公開日:2024年3月26日

 

同一労働同一賃金の調査に労働基準監督署が!? 指摘を受ける前に対策をしておきましょう!


<ひろたの杜 労務オフィス 代表 山口善広/PSR会員>

2021年4月より中小企業にも同一労働同一賃金が全面施行となり、いわゆる正規労働者と非正規労働者の賃金の不合理な待遇差が禁止となりました。

これまでは、各都道府県の労働局が対応にあたっていましたが、今後は労働基準監督署も同一労働同一賃金の遵守に加わることとなりました。

より一層、同一労働同一賃金へのチェックが厳しくなることが予想されます。

行政がどのように企業に関わってくるのか、企業はどのように対応していけばいいのかお話しましょう。

 

労働基準監督署が同一労働同一賃金の「取り締まり」をする??

労働基準監督署は、本来、労働基準法や労働安全衛生法、労災保険法を中心に担当しています。

したがって、解雇や割増賃金の支払い、労災事故の防止や労災保険料などを扱うイメージが強いです。

一方、同一労働同一賃金については、これまで都道府県に一つずつ置かれている労働局の雇用環境・均等部(室)が所管してきました。

なぜ、管轄違いとも言える労働基準監督署が、同一労働同一賃金にも関わるようになったのかはわかりませんが、政府がそれだけ同一労働同一賃金の実現に本気になっているということが言えますね。

労働基準監督署が、同一労働同一賃金について法違反の行政指導をすることはありませんが、法違反が認められる企業の情報が労働局に伝えられ、企業への本格的な調査が入ることになる可能性が高くなります。

したがって、企業内の同一労働同一賃金の対応が進んでいない場合は、早急に対処をする必要がありそうです。

では、そもそも同一労働同一賃金とは何なのか、どのように対応をしていけばいいのでしょうか。

 

そもそも同一労働同一賃金って何のこと?

同一労働同一賃金の対象となっているのは、正規労働者(正社員)と非正規労働者(アルバイト・パート)の給料です。

正規労働者というのは、事業主と期間の定めのない労働契約を結んでいるフルタイムで働く労働者(以下、正社員)のことで、非正規労働者とは正規労働者と比べて勤務時間が短かったり期間の定めのある労働契約を結んでいる労働者(以下、アルバイト)を指します。

正社員とアルバイトが、同じ仕事を同じ内容・責任で従事しているなら給料も一緒にしましょう、というのが基本的な考え方です。

たとえば、「基本給」を例にあげると、従業員の能力や経験に応じて支給している場合、能力や経験が同程度の正社員とアルバイトがいる場合は、同じ基本給を支給することとし、一定のレベルの違いがあるのであれば、その違いに応じた基本給を支給する必要があります。

ただし、同じ仕事をしていても、正社員だけにノルマや転勤があるというように、正社員の方がアルバイトより責任が重い場合は、同一労働同一賃金の対象外となります。

次に「手当」の考え方についても、アルバイトだからという理由だけで差別することはできません。

たとえば、同じ地域から出勤してきているのに、通勤手当の上限額が正社員の方が高く設定されているようなケースです。

ただ、週5日勤務の正社員には定期券、週3日勤務のアルバイトには実費相当額を支給する、というような運用は問題ありません。

次に、どのように正社員とアルバイトの賃金を合わせていけばいいのかご説明しましょう。

 

大切なことは業務と責任の「棚卸し」

これまで日本では、欧米と違って仕事ではなく人に対して給料を払ってきました。

これをメンバーシップ型雇用といいますが、最近よく聞くジョブ型雇用と反対の考え方ですね。

メンバーシップ型雇用では、業務内容や勤務場所を限定しないで、色々な仕事を様々な場所で従事してもらうということをしてきたので、仕事内容を細かく整理してきませんでした。

ですが、同一労働同一賃金を整備するには、仕事内容や責任を具体的に把握することは避けられません。

したがって、誰がどのような仕事をどこまでの権限で行なっているのか棚卸しをすることからスタートしましょう。

具体的には、直接従業員から聞いて情報収集をすることになります。

聞き出す内容は、1日の業務内容、業務別の時間配分、決済を受けずに行える業務の範囲などです。

たとえば、一口にレジ打ち業務といっても、レジを打つだけなのか、レジ締めまで行っているのか、クレームなど個別にお客様の対応をすることがあるのか、他に付随する業務はあるのかなど、できるだけ細かくリストアップをすると良いでしょう。

業務の棚卸しをしていくことで、従業員の業務内容や責任の範囲を明確化していくことになりますし、正確な人事評価にもつながっていきます。

パートタイム・有期雇用労働法では、アルバイトと正社員との給料の違いについて説明を求められた場合、それに応じることを義務づけていますので、早急な対応が必要となります。

もし、同一労働同一賃金についてどのように進めればいいのか迷う場合は、労働局にある雇用環境・均等部(室)かお近くの社会保険労務士に相談をするようにしましょう。

 

 

参考URL:厚生労働省 同一労働同一賃金特集ページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

 

 

プロフィール

社会保険労務士 山口善広

ひろたの杜 労務オフィス 代表(https://yoshismile.com/

営業や購買、総務などの業務を会社員として経験したのち、社会保険労務士の資格を取る。いくつかの社会保険労務士事務所に勤務したのち独立開業する。現在は、労働者や事業主からの労働相談を受けつつ、社労士試験の受験生の支援をしている。

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