【はじめての人事労務】人事評価制度や賞与は何のため?

公開日:2025年6月11日

はじめての人事労務 ~初任者のための実務講座~

人事評価制度や賞与は何のため?

 


<米澤社労士事務所 代表 米澤裕美/PSR会員

 

社員のやる気や成長を引き出し、会社の理念を浸透させるしくみの一つに、人事評価制度と賞与(ボーナス)があります。

ここでは、「社員の納得感を高める評価の仕組み」から「賞与の法的留意点」「評価と賞与の連動方法」まで、実務で押さえておきたいポイントをお話しいたします。

 

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社員のやる気と成長を高める

人事評価制度は、会社がどうやって社員を評価し、その結果を給与や賞与、キャリアアップに反映するかを定めたものです。

- 「どんな行動・成果を重視するのか」をあらかじめ示す
- 半期・四半期・年間などの評価期間を設定し、目標管理→面談→フィードバックを行う

社員としては、「自分が頑張った分だけきちんと報われるんだ」と感じられるため、やる気やスキルアップにつながります。

会社の理念やビジョンを浸透させる

評価項目を設定するとき、会社が大切にしている価値観(チームワーク、チャレンジ精神など)を組み込むと、社員がその行動を意識しやすくなります。評価によって組織全体の方向性が揃いやすくなり、企業の文化づくりにも効果的です。

 

賞与(ボーナス)の基本と「支給義務」の考え方

賞与とは?

賞与(ボーナス)は、毎月の給与とは別に年1~2回(主に夏と冬)支給されることも。会社の業績や個人の評価を反映させることで、次のような効果が期待できます。

- 成果が目に見えて返ってくる
- 会社の好調さを社員に還元する

支給時期と回数:多くの企業では年2回(夏:6~7月頃、冬:12月頃)支給するケースが多いです。会社によっては、年1回のみ支給する場合もあります。

支給基準:会社ごとに算定方法が異なり、「評価結果〇%+業績〇%」など、いろいろな算定方法があります。評価制度や業績連動の度合いは企業によってさまざまです。

賞与に法的義務はあるの?

法律上、賞与の支給は絶対に義務づけられているわけではありません。しかし、

1. 就業規則などに「ボーナスを支給する」と明記している
2. 「評価結果〇%を賞与に反映する」と書いている

このように、会社がルールとして“支給する”形をはっきり定めている場合は、事実上義務に近い状態になります。「規定に書いてあるのに払われない」などが起きると、社員とのトラブルになる可能性があります。

中小企業の事例:「原則なし、しかし業績次第で支給する」

中には、「賞与は基本的になし。ただし業績が良いときは支給する場合がある」と就業規則に書いている会社も多いです。こういった表現なら、必ず出さなければいけないわけではないため、利益が出たときだけ賞与を支給して社員に還元するといった運用ができます。

 

人事評価制度と賞与の連動

多くの企業では、人事評価の結果をもとに「昇給額」「賞与額」を決定しています。

- 評価期間と支給時期を一致させる
- 半期ごとの評価なら、半期ごとの賞与に反映する
- 年度評価なら、年2回の支給のうち片方を中間評価・もう片方を年度評価に割り当てる など
- 社員が「金額の理由」「なぜ昇給しなかったのか」を納得できるよう、フィードバックを丁寧に行う
- 評価者によって基準がズレないよう、評価者研修や評価会議などで公平性を保つ仕組みを作る

「評価→報酬」を明確にすることで、社員が「自分はどこが評価されたか」を理解しやすくなり、やる気にもつながるでしょう。

 

実務のポイント:制度の整備と運用

就業規則や賃金規程への明記
- 評価の時期・基準
- 賞与の支給対象・支給時期・算定方法
- 絶対支給するとするか、業績次第とするか

このような点を就業規則や賃金規程に書いておきましょう。

評価面談の実施
- 期首に目標を設定し、期の途中でフォローアップ、中間面談、期末面談と進める
- 面談内容は記録を残し、本人にもコピーを渡すとトラブル防止に
- フィードバックで次の目標を示し、キャリア形成にも役立てる

面談が形式的なものになってしまうと、社員は「どうせ評価結果は最初から決まってるんでしょ?」と感じてしまうこともあるかもしれません。評価の理由や今後への期待をしっかり伝えるなど、納得感のある対話を心がけましょう。

 評価の公平性・客観性
いろいろなやり方があります。

- 複数の上司で評価をつける「多面評価」
- コンピテンシーモデル(行動評価基準)を使う
- 評価会議で基準のすり合わせ

評価者の主観や偏りをいかに減らしていくかがポイントになります。「評価する人の独断や好みが入らない工夫」をしておくと社員が納得しやすいでしょう。

まとめ:人事評価と賞与で社員のやる気を育む

1. 人事評価制度は、社員が「頑張ったら認められる」と実感できるような仕組み。会社の理念や目標を浸透させる手段でもある

2. 賞与(ボーナス)は法的義務ではないが、就業規則に「支給する」と書いてあればほぼ義務に近い
- 「原則なし、業績次第で支給」などの形をとっているところも多い
- いずれにせよ、ルールを明確にし、社員に周知することが大事

3. 評価と報酬を連動させることで、社員のモチベーションを上げたい
- 評価期間と賞与支給時期の整合性
- 面談やフィードバックを丁寧に行い、社員の納得感を高める

 

 

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執筆者

米澤裕美 特定社会保険労務士 
https://www.office-roumu1.com

ネットワーク機器のトップメーカーにて、19年間インサイドセールスや業務改善チームの統括リーダーとして勤務。
途中2度の育児休業を取得。社内の人間関係の調整機会も多く、コミュニケーションや感情の重要性を日々実感してきた。
業務効率化の取り組みとして、社内ポータルサイトの立ち上げにも注力。
本社営業部門3S運動(親切・すばやい・正確)で1位に選出。
退職後、社労士法人勤務を経て、独立開業。現在は、複数企業の人事労務相談顧問、執筆などを行っている。

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