年次有給休暇(以下、「年休」)制度ほど、管理職が判断に迷う制度はないかもしれません。
「年間5日間の年休付与が義務付けられたのに、どうしても年休を取らない社員がいる」
「計画付与制度を導入したが、計画付与日に年休がない社員はどうしたらよいかわからない」
「パート社員の年休は極力与えたくない」
と言った悩みが生じます。
一方で、社員から見ると「年休は権利なのだから自由に取得できるはずだ」という認識があります。そのため、管理職の何気ない一言が、「年休を取得させてもらえない会社だ」「上司から圧力を受けた」と受け取られ、労務トラブルへ発展することも少なくありません。
しかし、会社経営という立場で考えれば、社員がいつでも自由に休めればそれでよいというものでもありません。
一人が休めば、その業務を誰かが引き継がなければなりません。納期や工期が決まっている仕事では、休暇の取得時期によっては会社全体へ大きな影響を及ぼすこともあります。
従って、会社として重要なのは、年休を取得させるか否かではなく、年休を取得しても仕事が回る組織をつくることです。ですから、管理職には、法律上のルールを理解するとともに、職場運営という視点から年休制度を考えることが求められます。
本稿では、実務で特に相談の多い事例を取り上げながら、年休制度の基本的な考え方と、管理職として押さえておくべき実務上のポイントについて解説していきます。
年休付与日の統一
<事例>
ある会社では、社員ごとの入社日に応じて年休を付与していました。そのため、毎月誰かの年休付与日が到来し、人事担当者は毎月のように付与日数を確認し、勤怠システムへ入力していました。
一方、別の会社では、4月入社の社員は全員10月1日に初回付与し、その後は毎年10月1日に一斉付与する制度を採用していました。管理は非常にしやすくなりましたが、人事担当者からは「この運用で法律上問題はありませんか」という相談を受けました。
近年は勤怠システムの普及により、入社日ごとの管理も容易になりました。しかし、中小企業では現在でも手作業で管理している会社が少なくありません。そのため、年休付与日の統一は実務上よく相談を受けるテーマの一つです。
<法的な考え方>
まず、第1段階としては、事例のように4月中に入社した社員はすべて、10月1日に年休を一斉付与します。4月2日~30日入社の社員は労基法の定めより早く付与されますが、付与回数を年間12回に削減できます。
プロフィール
寿限無(じゅげむ)経営コンサルティング 代表 福田惠一
金融機関にて営業・融資を担当後、同総合研究所で人事金制度構築コンサルの経験を積み、退職後「寿限無経営コンサルティング」を開業。上場会社総務顧問も経験。経営の観点と社員の双方にとっての望ましい労使関係構築支援のため、人事・賃金・考課制度の整備、人事労務トラブル対応、紛争予防のための社内規程整備、マネジメント研修・ハラスメント研修等社員各層への研修、各種助成金申請支援等に注力。
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