
働き方や人材の多様化が進み、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進への注目が高まる中、企業が取り組むべき重要なテーマの一つとなっているのが、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」です。
ところが、言葉や概念の認知が広がる一方で、「対策が必要だ」と感じていても、具体的な取り組みまで踏み込めている企業はまだ多くありません。
アンコンシャス・バイアスは、男女の役割分担意識にとどまらず、育児や介護を担う従業員、雇用形態の異なる従業員など、多様な立場にある人々に対する「過度な配慮」や「無意識の決めつけ」として表れることがあります。そしてそれが、採用や配置、評価・昇格、育成、休業・両立支援といった人事上の意思決定だけでなく、職場の人間関係や信頼関係の構築を阻む原因となっています。
本コラムでは、各種調査のデータをもとに、アンコンシャス・バイアスが組織にもたらす影響や弊害を整理し、そのうえで、職場で実践できる具体的な対策を実務目線で解説します。
職場の95.5%に潜むアンコンシャス・バイアスの実態
アンコンシャス・バイアス(Unconscious Bias)とは、「無意識の偏見」のことであり、自分自身が気づいていない「ものの捉え方や歪み、思い込み」を指します。
2020年に連合が全国の働く人5万人以上を対象に行った調査(※1)によると、95.5%もの人が「日常や職場で何らかのアンコンシャス・バイアスを認識している」という結果が出ています。
具体的には、職場や業務の中で次のような「無意識の思い込み」が生じています。
- ジェンダーに関するアンコンシャス・バイアス
- 「親が単身赴任中」というと、父親を想像する(母親を想像しない)(66.3%)
- 体力的にハードな仕事を女性に頼むのは可哀そう(51.5%)
- 非正規雇用に関するアンコンシャス・バイアス
- 「パートタイマーは、主婦が家計補助のために働いているイメージがある(35.6%)
- 仕事との両立に関するアンコンシャス・バイアス
- 介護しながら働くのは難しいと思う(58.4%)
- 育児中の社員に負荷の高い業務は無理と思ってしまう(39.0%)
- 多様性に関するアンコンシャス・バイアス
- 「普通は〇〇だ」「それって常識だ」と思うことがある(46.2%)
ご自身の職場や発言を振り返り、ハッとした方もいるかもしれません。
このような無意識の偏見は、知らず知らずのうちに、自身の能力発揮や挑戦の機会を奪い、個人のキャリア形成に大きな影響を及ぼすことがあります。
人事プロセスに潜むリスクと現場での具体的弊害
個人の持つアンコンシャス・バイアスが、制度や運用に入り込むと、組織のバイアスへと変化していきます。
特に、組織の意思決定権を持つリーダー層が自身のバイアスに気づかず採用や人事評価、育成をしてしまうと従業員の定着率低下、離職率の増加、ハラスメントの発生、社内コミュニケーション不全・欠如などさまざまな組織課題に直結します。
主に職場の人間関係や業務に影響を与えるバイアスは以下の通りです。
執筆・編集
大橋幸子
株式会社ブレインコンサルティングオフィス(https://www.e-brain.ne.jp/) 社会保険労務士
組織や人に関する課題・悩みを「かいけつ!」する人事労務ご担当者のための“実務”情報サイト『かいけつ!人事労務』の記事企画・編集・監修を担当。育児介護休業法や障害者雇用、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)をはじめとする時代の潮流を捉えたテーマを中心に、法改正に伴う制度対応から現場での運用・定着までを網羅した実践的な情報を発信している。また、メディアでの情報発信にとどまらず、セミナーの企画や実務ツールの開発・制作を通じ、企業と社労士の双方が現場で即活用できる実践的なソリューションを提供している。
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