【人事総務の合意形成入門(全3回)】第2回 フレックスタイム制の労使協定で成功と失敗を分けた「問い」

公開日:2026年1月13日

人事総務の合意形成入門(全3回)

第2回フレックスタイム制の労使協定で成功と失敗を分けた「問い」


<フェスティナレンテ社会保険労務士事務所 代表・特定社会保険労務士 小嶋裕司/PSR会員

 

「第1回 人事総務部門において合意形成スキルが必要な理由」では、人事総務部門の業務にとって労使の合意形成が重要なテーマであることを確認しました。では、どのように進めたら、労使双方が納得し合意に至れるのでしょうか。

今回は、フレックスタイム制の労使協定締結の事例を通じて、成功例と失敗例を分けるポイントを感じていただきます。全く同じ内容の反対意見が出ても、議論が平行線をたどった事例と労使が納得する結論に至った事例を紹介します。

合意形成はどのように進めればうまくいくのか

人事総務部門にとって労使による合意の形成は重要な業務です。しかし、労使の合意が重要なことは分かっても、実際にどう進めれば合意に至るのかという思いを抱いた方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では、フレックスタイム制の労使協定を題材に、合意形成がうまくいったケースとそうでないケースを見ていきます。対照的な2つの事例を通じて労使が合意に至るために必要な要素が明らかになると思います。

フレックスタイム制の導入にあたっては、全社員一律ではなく、特定の部署・業務に従事する社員に導入するケースが多いと思います。フレックスタイム制は導入しやすい職種と、そうではない職種があるからです。今回、挙げる事例もフレックスタイム制を一部の社員に導入しようとしたケースです。

しかし、特定の部署・業務に従事する社員に導入しようとすると、「不公平感が社内に広がる」ということで、反対意見が出ることがあります。明確に反対はしなくても、不公平だと感じる方は多いようです。フレックスタイム制という働き方に魅力を感じる社員が多いからです。

 

議論が平行線をたどり納得が得られなかった事例

それでは、まず、議論が平行線をたどった事例から見ていきましょう。IT企業がWEBデザイナーにフレックスタイム制を導入するため、労使協定を締結しようとしている場面です。なお、以下の2つの事例では、「労働者の過半数を代表する者」を代表者と表現しています。

会社「フレックスタイム制をデザイナーに導入することにしました。デザイナーには既に話をしていますが、フレックスタイム制の導入には労使協定を結ばないといけません。労使協定案を作成したのですが、どうでしょうか」

代表者「なぜ、デザイナーだけに導入するのですか? デザイナーだけ始業・終業時刻を自由に決められるなんて、優遇されているとか、中には、ずるいという人まで出てきそうです」

会社「それは、業務の性質上、仕方がない面もあります」
代表者「それは、わかっています」
会社・代表者「……」

上記の事例では、労働者の過半数を代表する者も「業務の性質上仕方がない」ということは理解しています。したがって、労使協定は締結され、フレックスタイム制自体は導入されるかもしれません。しかし、沈黙が物語るように、決して労使納得の上での導入とは言えません。それに対して、以下の事例をご覧ください。第三者(人事部の社員)が登場します。

 

スタートが一緒でも「問い」が流れを変えた事例

 

 関連記事:【人事総務の合意形成入門(全3回)】第1回 人事総務部門において合意形成スキルが必要な理由

 

プロフィール

小嶋裕司

特定社会保険労務士
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所(https://www.festinalentesroffice.com/) 代表

就業規則関連業務で99%超の専門社労士。ファシリテーション技術を活用し、社内の反発を受けることなく、新制度へのスムーズな導入までを支援している。ファミリービジネスの家族会議や、親会社の出向役員の同意を要するグループ会社、株主への説明が求められる企業など、多様なケースの合意形成を支援している。ファシリテーションの技術は、実践と理論の両面から磨きを重ねてきた。社内ビジョン浸透の3,000人対話集会を行った中島崇学氏のもとで実践を通じて学び、「青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラム」で理論的にも深め、現在は人事労務の合意形成に活かしている。


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