【専門家コラム】働きがいを感じられる「短時間正社員制度」を導入しませんか

公開日:2024年7月8日

 

 

 

働きがいを感じられる「短時間正社員制度」を導入しませんか


<社会保険労務士法人  出口事務所 代表社員 出口裕美/PSR会員>

育児・介護休業法の短時間勤務制度は義務付けられていますので、認知度や利用経験者も増えてきておりますが、育児・介護休業法の短時間勤務制度の対象ではない方たちも短時間勤務制度に興味を持たれているのではないでしょうか。

例えば、自己啓発、ボランティア活動、心身の健康不全といった様々な事情により、従来のフルタイム正社員としての働き方では十分に活躍できない時間に制約がある人材が増加しつつあります。

労働力人口が減少しつつある中、企業としては、こうした時間に制約がある人材も含めて、意欲・能力の高い人材を確保・活用していく必要性が高まっています。

 

育児休業法の「短時間勤務制度」とは

事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者について、労働者が希望すれば利用できる、所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置(短時間勤務制度)を講じなければなりません。

○ 短時間勤務制度の対象となる労働者は、次のすべてに該当する労働者です。

① 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
② 日々雇用される者でないこと
③ 短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業(産後パパ育休含む)をしていないこと
④ 労使協定により適用除外とされた以下の労働者でないこと
ア その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
イ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
ウ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

○ 短時間勤務制度は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。

育児のための所定労働時間の短縮措置等の各制度がある事業所における制度利用者の利用内訳をみると、女性については「短時間勤務制度」が 38.1%(令和3年度)で、男性については、「短時間勤務制度」が2.8%(令和3年度)となっています。

<参考>

 

介護休業法の「短時間勤務制度」とは

事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、就業しつつ対象家族の介護を行うことを容易にする措置として、連続する3年間以上の期間における所定労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません。

介護のための所定労働時間の短縮等の措置は、2回以上の利用ができる措置としなければなりません。

 

働きがいを感じられる「短時間正社員制度」とは

先に紹介した「育児・介護休業法の短時間勤務制度」は法律上の義務ですが、それを運用している企業内で、育児や介護のための短時間勤務制度に不満に感じている社員はいませんでしょうか。

実際に、企業の労務相談を受けている私たち社会保険労務士には、「育児や介護の方だけ優遇されていて、私たちはいつもやりたいことを我慢している」などという不満の声を耳にすることがあります。

多様な働き方、そして、多様は生き方を求めている人が増えてきて、それが不満の一つになることもあるようです。

そんなとき、もし、育児や介護のため以外にも短時間で働ける制度、「短時間正社員制度」があってもいいのではないでしょうか。

例えば、2年間は短時間正社員制度を活用し、大学院に通いたい、もしくは、資格試験に挑戦したいなどという方もいます。

短時間正社員とアルバイト社員の主な違いは、短時間正社員は基幹的業務に携わり、アルバイト社員やパート社員は主として補助的業務に携わるという違いがあります。

その他にも、短時間正社員の要件※に該当すれば、社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者になることも可能です。

※短時間正社員の要件

(1) 短時間正社員に係る健康保険の適用に当たっては、当該事業所の就業規則等における短時間正社員の位置づけを踏まえつつ、労働契約の期間や給与等の基準等の就労形態、職務内容等を基に判断するものであること。

(2) 具体的には、
① 労働契約、就業規則及び給与規程等に、短時間正社員に係る規定がある
② 期間の定めのない労働契約が締結されている
③ 給与規程等における、時間当たりの基本給及び賞与・退職金等の算定方法等が同一事業所に雇用される同種フルタイムの正規型の労働者と同等である場合であって、かつ、就労実態も当該諸規程に則したものとなっている場合は、健康保険の被保険者として取り扱うこと。

また、転職活動や賃貸住宅などを借りる際に求められる可能性がある在職証明書などに雇用形態を記載する場合にも「正社員」と記載されるか「アルバイト」と記載されるかの印象も違うでしょう。

働きがいを感じられ、多様な働き方に対応できる「短時間正社員制度」を導入してはいかがでしょうか。

 

<参考>

 

 

プロフィール

出口裕美 
社会保険労務士法人  出口事務所(https://www.deguchi-office.com/
代表社員  特定社会保険労務士

2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中

 

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