内定承諾書と内定通知書の違いは?新卒採用内定時に必要な書類とポイント
<いろどり社会保険労務士事務所 代表 内川真彩美/PSR会員>
新卒の採用内定時、内定者にどのような書類を交付しているでしょうか。
「内定通知書」や「内定承諾書」「入社誓約書」など、企業によって様々な名称の書類があり、結局どのような書類を用意すべきなのかわかりにくいと感じている方もいるかもしれません。
内定時に書類を交付することは、後のトラブル防止にも繋がります。そこで今回は、新卒採用の内定時に必要な書類とそのポイントを紹介します。
採用内定時に必要な書類とポイント
一般的に、採用内定時には下記のような書類を作成し、内定者に交付します。
書類の名称は企業によって様々ですが、大きく3つの目的の書類が作成されることが多いです。
①内定が出たことを通知するもの(「内定通知書」など)
②内定者の入社意思を確認するもの(「内定承諾書」「内定誓約書」「入社誓約書」など)
③入社後の労働条件を明示するもの(「労働条件通知書」など)
上記①と②に関しては法律で定められている書類ではないため必ず作成しなければならないものではありませんが、後のトラブルを防ぐ意味でも、作成し内定者へ渡すことが望ましいです。
また、①と②をまとめて1つの書類にしている企業もあります。
以降では、これらの書類のポイントを紹介します。
内定が出たことを通知する書類
多くの企業では「内定通知書」と呼ばれます。
名称のとおり、内定が出たことを企業が通知するための書類です。
この書類には、「内定となった旨」「入社日」を記載します。
内定者の入社意思を確認する書類
企業によって名称は様々ですが、「内定承諾書」や「内定誓約書」、「入社誓約書」のような名称が用いられます(以降、「内定承諾書」)内定者の入社意思を確認するものですので、内定者に署名等をしてもらい、提出を求めます。
内定承諾書には、①入社承諾の旨、②氏名や住所、連絡先変更の際には速やかに報告する旨、③内定取り消しすることがある旨とその事由等を記載し、内定者の署名欄を設けます。
その他、入社日までに守るべきことを記載しても構いません。
「内定取り消し事由」は企業によって異なりますが、下記のような事由を設定することが多いです。
・業務に耐えられないと思われるほど著しく健康状態が悪化したとき
・大学等を卒業できなかったとき
・企業に虚偽情報を提供したとき
・企業のルールに違反したとき
・新規採用が不可能になるような予測不能な経営事情が発生したとき
内定承諾書は提出してもらう必要がありますので、提出方法と提出期限も案内します。
期限になっても提出されない場合には、放置するのではなく個別連絡をして状況を確認することを推奨します。
入社の意思の有無がわからないと企業も入社準備ができませんし、曖昧な状態を放置するとトラブルの元にもなりかねません。
入社後の労働条件を明示するための書類
いわゆる労働条件通知書です。
新卒内定者に限ったものではありませんので、皆さんにも馴染み深いものかと思います。
詳細は今回割愛しますが、内定を出すことは「条件付きの労働契約の成立」と扱われることがあります。
労働基準法では、労働条件は「労働契約が成立するまでに」書面での明示が義務付けられていますので、労働条件通知書も内定通知書や内定承諾書と同じタイミングで交付するのが望ましいです。
入社後の労働条件を再確認した上で内定承諾をするかを決めてもらうことで、ミスマッチによる内定辞退や早期退職を防ぐことにも繋がります。
また、新卒採用の場合には内定から入社まで期間が空きますので、入社までに労働条件が変更になる場合には、変更内容を迅速に明示します。
当然、入社前であっても、労働条件の不利益変更には原則合意が必要です。
さらに、2024年4月からは法改正により、明示事項が追加されました。
これまでは、就業場所・業務内容は入社時のものを明示することで足りましたが、今後は、将来の配置転換等で変更の可能性があるものも明示が求められます。
出典:厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」
その他書類
内定承諾書発行と同タイミングでなくとも良いですが、入社までに提出が必要な書類の一覧は早めに渡しておきましょう。
新卒採用に限ったことではありませんが、入社手続きのために内定者には多くの書類を提出してもらうことになります。
必要な時期までに確実に準備してもらえるよう、いつまでにどの書類を提出する必要があるのかは早めに案内しておくことを推奨します。
いかがでしたか。
今回紹介した書類はいずれも、内定から入社までの曖昧な状態をなくし、後のトラブルを防ぐ意味合いも大きいです。
本記事が、手続きの再確認の機会になれば幸いです。
プロフィール
特定社会保険労務士 内川真彩美
いろどり社会保険労務士事務所(https://www.irodori-sr.com/)代表
成蹊大学法学部卒業。大学在学中は、外国人やパートタイマーの労働問題を研究し、卒業以降も、誰もが生き生きと働ける仕組みへの関心を持ち続ける。大学卒業後は約8年半、IT企業にてシステムエンジニアとしてシステム開発に従事。その中で、「自分らしく働くこと」について改めて深く考えさせられ、「働き方」のプロである社会保険労務士を目指し、今に至る。前職での経験を活かし、フレックスタイム制やテレワークといった多様な働き方のための制度設計はもちろん、誰もが個性を発揮できるような組織作りにも積極的に取り組んでいる。