以前のコラム「【専門家コラム】人事労務管理システム導入のポイント」でいくつかの人事労務管理システムをご紹介させていただきました。
本稿では、働き方改革対策にも多様な働き方の実現にも必要な人事労務管理システムの中の一つ「勤怠管理システム」を導入する際のポイントについて、【導入検討時】、【導入時】に分けてご説明します。
【導入検討時】現在自社が利用している「人事労務管理システム」を確認
人事労務管理システムを利用するのは、主に「人事総務担当者」ですが、勤怠管理システムを利用するのは、「従業員全員」です。例えば、給与計算システムは、人事総務担当者が業務上必要性を感じて利用しますので、人事総務担当者の努力により、給与計算システムの導入は可能です。
一方、勤怠管理システムは、従業員全員が業務上必要とは言え、打刻漏れや申告漏れなど、正しく打刻及び申告できるようになるまでに時間がかかることが多く、人事労務担当者と従業員の上司と従業員全員の協力が必要不可欠です。
打刻漏れや申告漏れの場合は、上司を巻き込み、システムの利用を習慣にさせるために、利用するメリットを強調するようにしましょう。例えば、勤怠管理システムの打刻や申請が正しくできる場合は、上司や人事労務担当者にも手間をかけないことになりますので、人事考課の評価の項目にするのも一つの方法です。
すでに、勤怠管理システムを導入されているのであれば、多少、不満があったとしても、入れ替える必要はありません。勤怠管理システムを入れ替えると再度、初期設定等をする必要があり、各社員に説明をする必要があるからです。仮に、初期設定費用がかからないシステムだったとしても、導入工数がかかりますし、勤怠管理システムにもそれぞれ特徴があります。例えば、旧勤怠管理システムの不満が一つ解決したとしても、旧勤怠管理システムで満足していたことに対応していないケースもあります。
ただし、まだ、勤怠管理システムを導入されていないのであれば、「人事労務管理システム」の中でも特に従業員全員が利用するような、勤怠管理システム、給与明細システム、年末調整申告システム、業務管理システムなどは、一般的に社員の個人情報を登録する必要があるため、同一の会社が提供するシステムや人事労務管理システムとの連携が可能なシステムに揃えることをお勧めします。
【導入検討時】勤怠管理システムの選び方
勤怠管理システムには、サーバーやソフトウェアを購入するオンプレ版とインターネットを介してそのサービスにアクセスするクラウド版があります。主な特徴は以下の通りです。
1.勤怠管理システムの利用に必要な費用
導入形態 | 導入費用 | 月額料金 | 主な利用者 |
クラウド型 | 無料~数万円 |
1ユーザーあたり 100円~500円 |
1~1,000名の企業 |
オンプレ版 | 30万円~500万円 | 年間保守 | 1,000名以上の企業 |
オンプレ版の特徴は、カスタマイズが可能であることや人事労務管理システムとの連携が可能であったり、頻繁な部署異動への対応ができたりするところです。
また、クラウド版でも、導入費用は製品により大きく異なります。ただし、導入費用はかからないとしても、初期設定をする時間はかかりますので、可能であれば、打刻できる状態までメーカーで設定してくれるシステムを導入することをお勧めします。
2.クラウド版勤怠管理システムの利用に必要な費用
サービス名 | 導入費用 | 月額料金 |
クラウド版A | 無料 | 200円/1ユーザー |
クラウド版B | 無料 | 300円/1ユーザー |
クラウド版C | 30万円~ | 300円/1ユーザー |
クラウド版D | 無料 | 3,980円 |
クラウド版E | 無料 | 2,420円 |
クラウド版F | 無料 | 100円/1ユーザー |
3.勤怠管理の主な流れと対応範囲
初期設定→シフト登録→打刻→申請→勤怠・申請承認→勤怠確認→勤怠確定→時間集計→給与計算に必要な情報作成
【導入時】「勤怠管理システム」導入のポイント
多様な働き方だったとしても、シフト登録により、いつ誰が出社するか、労働時間や休憩時間の管理により、今は誰が勤務しているのかが分かります。いつ誰に多様な働き方にあった有給休暇の付与がされて、その有給休暇を申請したり、上司が承認等をしたりすることも可能です。
年次有給休暇の付与に関するルールも年5日の年次有給休暇の確実な取得促進も労働者ごとの年次有給休暇管理簿の作成も可能ですので、日々の業務の効率化につながります。
ただし、勤怠管理システムには「自社の制度をそのまま反映できない」場合や「希望するような休暇の管理等ができない」という場合があり、導入時に苦戦する企業も見られます。そのようなケースでは、システム会社にカスタマイズ依頼が可能であれば、カスタマイズを依頼して、自社の制度を反映させる企業もあるようですが、カスタマイズ費用やその後のメンテナンスなどが必要になります。
そこで、システム導入をする際に“何を優先するのか“を事前に検討することをお勧めします。勤怠管理システムの場合は、「自社の制度をどの程度カバーできるのか」、「カバーできない場合に、制度を変更することができるのか」といったことを検討しましょう。
実務の基礎を押さえたい方は、こちらの入門記事もあわせてご覧ください。
>>>【はじめての人事労務】勤怠管理 システム導入と運用のポイント
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プロフィール
出口裕美
社会保険労務士法人 出口事務所(https://www.deguchi-office.com/)
代表社員 特定社会保険労務士
2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中