【専門家の知恵】人事労務管理システム導入のポイント

公開日:2024年3月1日

 

 

 

人事労務管理システム導入のポイント


<社会保険労務士法人  出口事務所 代表社員 出口裕美/PSR会員>

様々な業務システムの広告を見る機会が増えてきているように、最近は業務のシステム化に興味を持たれる企業が増えてきました。まず、最初にシステム導入を検討する場合に、導入のきっかけにされることが多い人事労務管理システムを導入する際のポイントについて、ご説明させていただきます。

人事労務管理システムには、勤怠管理、WEB明細、給与計算、社員台帳、人事評価などがありますが、その中でもWEB明細や勤怠管理などは導入希望が多いシステムの一つと言えるのではないでしょうか。

 

現状使用しているシステムの確認

新たな業務システムを導入する前に現状を確認してください。例えば、WEB明細は○○会社のシステム、勤怠管理は△△会社のシステム、人事評価は□□会社のシステム、経理は●●会社のシステム、請求書業務は●●会社のシステムなどです。すでに導入しているシステムがあれば、使いやすさや導入の難易度、導入するメリットやデメリットが分かるかと思います。そこで、メインとして今後も利用したいシステムの会社で関連した商品が発売されていないかをご確認ください。

まずは、関連した商品から検討することをお勧めします。Aさんが入社したときに、Aさんの個人情報を一度登録すれば、関連したシステムにも個人情報が共有されるためです。情報連携されない場合は、勤怠管理システムにもWEB明細システムにも人事評価システムにもAさんの情報を登録することが必要となりますので、継続していく中で、運用が困難に感じてしまう可能性があります。

システム会社も得意な分野が異なります。例えば、人事労務管理システムに特化している会社には、経理システムがなかったり、逆に経理システムに特化している会社には、人事労務管理システムがなかったりします。

次に、現在の業務システムにかけられる予算をご検討ください。システムを導入することで、どのくらいの工数が削減されるのか予算と比較して検討する必要があります。

個人的な印象ですが、人事労務管理システムと経理システムは別でもそこまで支障はないように思いますが、人事労務管理システムは一般的には社員の個人情報を登録する必要があるため、同じ会社のシステムにすることをお勧めしております。

ポイントは、業務システムの活用は最初から100点の活用を目指さず、まずは、60点の活用から少しずつ増やしていくことが重要かと思います。

 

人事労務管理システム導入のポイント

コロナ禍の影響でテレワーク(在宅勤務)が増え、一番需要があった人事労務管理システムとして、WEB明細があります。給与明細書を一人ひとり手渡ししていた企業は一斉にWEB明細の導入を検討しました。給与計算システムからWEB明細データを作成し、登録し、閲覧開始日の設定等をすることで、いつでも自分の給与明細書を、パソコンでもスマートフォンでも閲覧することが可能になりました。年末調整が終了すれば、源泉徴収票の閲覧も可能で、確定申告をする方は、源泉徴収票を印刷して活用することになります。

続いて需要があったのは、給与計算システムです。WEB明細に明細項目や金額を登録するために、関連した給与計算システムを導入するのが便利です。そうすることで、給与明細書を「印刷」する代わりに「登録」等をすることで、ペーパーレスにもなりますし、給与明細書や源泉徴収票の再発行も不要で、自ら何度でもWEB明細からプリントアウトをすることが可能になります。

続いて、毎月の勤怠管理などは、自社の制度を設定する必要がありますが、設定ができれば、日々の労働時間や休憩時間の管理、有給休暇の付与・申請・上司の承認等、日々の業務の効率化につながります。ただし、勤怠管理システムには、自社の制度をそのまま設定できない場合や希望するような休暇の管理などができないということで、導入時に苦戦する企業もあるようです。そのときに、自社の制度を設定するために、システム会社にカスタマイズを依頼する企業もあるようですが、それなりにカスタマイズ費用はかかりますし、その後もメンテナンスする必要が出てきます。

そこで、システム導入をする際に、何を優先するのかを事前に検討することをお勧めします。パッケージ型の人事管理システムは、そのパッケージが自社の制度をどの程度カバーできるか。カバーできない場合に、制度を変更することも視野に入れていただくことを検討ください。もちろん、カスタマイズ費用はいくらでも支払うということが可能であればそれでもいいのですが、カスタマイズ費用をかけずに、制度を変更するということも選択肢の一つかと思います。

その他にも、社員台帳、人事評価などのシステムもあります。例えば社員台帳に様々な情報が登録できれば、平均勤続年数、入社からの異動や昇格の履歴、保有資格などの管理が可能で人材の有効活用が可能です。また、毎年の目標管理、人事考課、自己管理、キャリアプランなどを登録することで、業務の簡素化が可能になります。

導入時は自社に合ったシステムを選ぶことが大切ですが、導入後は自社の制度をシステムに合わせることで、導入による業務の効率化を最大限に活かしてみてはいかがでしょうか。

 

 

プロフィール

出口裕美 
社会保険労務士法人  出口事務所(https://www.deguchi-office.com/
代表社員  特定社会保険労務士

2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中

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