『マネジメントに活かす 歩合給制の実務』
歩合給制・出来高払制は、元々は経営合理性と労働者の動機づけを両立させる手法として製造現場において導入され、管理技術の進展とともに発達してきました。現在では、営業職や接客サービス職、タクシー・トラックドライバーなど、個人の成果が数字であらわれやすい業種を中心に採用されています。一方で、非常に複雑な制度であるため誤った運用事例も数多く見受けられます。
歩合給制は、その長所と短所を理解しつつ適切に導入・運用することによって、労働者に納得感とやりがいをもたらし、結果として業績を向上させるという、労使双方のメリット実現が期待できる制度です。
本書は、歩合給制の現状と歴史を概観し、現在の企業における歩合給制の実態や法的背景と問題点、今後の可能性を考察、歩合給制の本質に迫ります。裁判例や通達を掲げつつ実務へ役立てるためのポイントを示し、経営者、実務担当者が歩合給制について学ぶ実践的な解説書です。
「歩合給制」にスポットを当てた書籍としては現時点で唯一のものであり、正しい導入・運用のために必要な知識が網羅されています。
著者:西川幸孝
サイズ:A5判(192頁)
定価:2,592円 (本体価格2,400円)
(外部リンク:株式会社日本法令サイト)
<目次>
はじめに 1
第1章 歩合給制の現状と歴史 9
1 出来高払制とは 10
2 歩合給制に対する批判の論調 11
3 労働契約に関する法律定義 13
4 欧米における出来高払制 17
5 F.テーラーの取組みとそれ以降の展開 18
6 日本における出来高払制に関する歴史的経緯 19
7 近年の出来高払制の適用状況 21
8 雇用契約の2つの系譜 24
9 メンバーシップ型雇用 26
10 ジョブ型雇用 27
11 正社員、非正規社員の区分 29
第2章 歩合給制の法的側面 33
1 平均賃金の算定方法 34
2 残業代をどのように支払うか 35
3 年次有給休暇を取得した場合の賃金 37
4 出来高払制の保障給 39
労働者の責により労働に従事しない場合 40
使用者の責に帰すべき事由により休業を余儀なくされた場合 40
業務に就いたものの、歩合給が極端に低くなった場合 41
自動車運転者についての特別な扱い 42
5 歩合給と最低賃金 43
6 社会保険の扱い 44
第3章 歩合給制と経営合理性 47
1 経営にとって望ましい賃金構造 48
2 人件費の変動費化が経営にもたらす影響 48
3 損益分岐点に係るモデルケース 51
4 労働時間の変動が賃金に与えるインパクト 54
5 付加価値の創造と賃金 56
6 労働時間の変化と固定給制、歩合給制 58
第4章 賃金とモチベーション、ルール支配行動 61
1 仕事における満足と不満足:「動機づけ・衛生理論」 62
2 衛生要因としての歩合給、固定給 63
3 行動の原則:行動分析学の考え方 65
4 ルール支配行動 67
5 歩合給制はルール支配行動を起こす 67
6 人事評価制度はルール支配行動を起こすか 69
7 もう一つのルール支配行動「長時間労働」 71
8 行動は必ずしも「意志」によらない 72
9 長時間労働がもたらす健康問題とコストアップ 73
10 長時間労働をどのようにして防ぐか 76
11 業務効率を人事評価の対象とすること 77
12 労働時間のマイクロマネジメント 78
13 定額残業代方式の採用 80
14 みなし労働時間制の採用 82
15 歩合給制の採用 85
第5章 歩合給制の実務考察 87
1 歩合給制で保つべき原則 88
戦略性 88
明確性 88
規範性 89
公平性 90
安定性 93
2 歩合給制の構成パターン 93
オール歩合給制 94
固定給+歩合給:歩合給主体型 94
固定給+歩合給:固定給主体型 96
3 歩合給の設定方法 98
その賃金は歩合給といえるか 98
歩合給の設定例 99
4 出来高払制の保障給 106
保障給は歩合給である 107
月額固定の保障給 107
保障給が固定給と判断された例 110
保障給の設定がない場合 111
保障給の規定方法 112
5 歩合給制と労働時間管理、定額残業代の問題 115
歩合給制と定額残業代 115
歩合給の一定割合を割増賃金として支給する方法について 117
転機となった最高裁判決とそれ以降の裁判例 120
修正定額残業代方式の歩合給制 125
6 自動車運転者に適用される特別なルール 125
保障給に関する通達 126
累進歩合制度の禁止 127
累進歩合制に関する裁判例 130
第6章 歩合給制と労働条件の不利益変更 131
1 歩合給制と労働条件の不利益変更 132
2 労働条件不利益変更の法理 133
3 歩合給制と就業規則・賃金規定 135
4 賃金制度をコントロール可能な状態にしておく 136
5 歩合給制に関連した労働条件不利益変更の裁判例 138
第一小型ハイヤー事件 138
第四銀行事件 140
新富自動車事件 141
大阪京阪タクシー事件 145
6 賃金制度(歩合給制)の不利益変更の留意点 147
スケジュールに基づき実施する 147
就業規則を通した変更とする 148
説明と情報提供を適切に行う 149
不利益の程度の限界 149
代償措置を検討する 150
7 激変緩和措置について 150
旧賃金制度による計算額の一定割合を確保する方法 150
新旧賃金制度の差額を一定割合補てんする方法 155
第7章 歩合給・出来高制のすすめ 157
1 産業構造と職務内容の変化 158
2 従来型雇用形態の限界 160
3 フリーランスと歩合給社員の違い 163
4 オール歩合給制のワークスタイルの前提 164
5 時間請負型の歩合給制 164
6 業務の標準時間が設定できる職種への歩合給制適用の可能性 166
7 オール歩合制に付随するその他の労働条件 167
労働時間制 168
年次有給休暇の賃金 169
保障給 169
8 歩合給制と評価 170
9 プロフェッショナルとしてリスペクトすること 171
資料編 173
著者紹介
西川幸孝(にしかわゆきたか)
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
中小企業診断士、特定社会保険労務士
早稲田大学政治経済学部卒業後、商工会議所に入職し第三セクターの設立運営などに深く関わる。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。
「経営を『人』の観点から見直す」をコンセプトに、人を活かし戦力化する人事評価制度・賃金制度の構築、トラブルを防ぐ労務管理などに取り組んでいる。
著書に「中小企業のM&Aを成功させる人事労務の実践的手法」(日本法令)、「小さくても『人』が集まる会社」(日本経済新聞社)がある。
2009年より中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。
日本行動分析学会会員。
(外部リンク:株式会社日本法令サイト)