正社員の給与を下げて同一労働同一賃金をクリアするのは問題あり?

公開日:2018年12月10日
Q.長年パート勤めのベテランの事務職員の女性に、給料を上げてくれと直訴されました。同様の仕事をしている正社員と比べると、給料、特に基本給に相当の差があるというのです。そして、その女性に「「同一労働同一賃金」の考え方、ご存知ですか? 同じ仕事内容の場合、パートだからという理由で、正社員のお給料と差を付けてはダメなんですよ」と言われました。それならば、正社員の給料を下げて、差を縮めようと考えたのですが・・・何か問題はあるでしょうか?

 

A.はっきり申し上げて、「問題あり!」です。 まず、女性の言い分は、おおむね的を射ています。 たとえば、お給料の中心である「基本給」については、職業経験や能力、貢献度などに基づく相違が認められますが、職業経験や能力、貢献度などが正社員と同じであれば、パートなどの非正規社員であっても、正社員と同様に支払うことが求められます。 この件については、早急に対応する必要があるでしょう。

 

解 説

 

最近、ご質問と類似のケースが訴訟に発展した事例について、高等裁判所で判決(控訴審判決)がありましたので、是非ご確認ください。
≫ https://www.kaiketsu-j.com/index.php/topix/125-roudou-keizai/7338-2018-12-03-08-09-35
 
それならば、ということで「正社員の待遇を下げて、非正規の社員との待遇差をなくせばいい」という考え方が生まれるわけですが・・・
これについては、今後、策定されることになる「同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)」において、そのような考え方に釘が刺されることになりそうです。
 
同ガイドラインについては、その案の諮問や答申といった手続きが済んでおり、正式決定が間近となっています。
その中で、「同一労働同一賃金実現のために労使で合意することなく正社員の待遇を引き下げることは、望ましい対応とはいえない」と明記されています。
 
もちろん、労働条件の変更について、労使で合意すれば、違法性はないのですが、そのような考え方自体が、同一労働同一賃金の趣旨に反するものといえます。
今後、規制が厳しくなることも踏まえて、正社員の待遇を下げるという考え方は捨てたほうがよいでしょう。
 
なお、同一労働同一賃金ガイドラインは、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間に待遇の相違が存在する場合に、いかなる待遇の相違が不合理と認められるのか否か等の原則となる考え方及び具体例を待遇ごとに示すものです。
現行の規制より進んだ内容も含まれていますが、じっくり見るとわかりやすいガイドラインとなっています。
これを参考にして、パートさんなどの待遇を見直しておくとよいと思います。
 
〈補足〉そのガイドラインの適用は、同一労働同一賃金に関する法整備の施行に合わせて、2020年度(中小企業は2021年度)からとなりますが、近く、正式に決定され、公布されることになると思われます。
 
ガイドラインの案の内容などについて、詳しくはこちらをご覧ください。
≫ https://www.kaiketsu-j.com/index.php/topix/369-way-of-working/7329-2018-11-28-10-17-22
※この回答・解説は平成30年12月10日時点のものになります。

 

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