【経営人事改革の視点】意思決定能力を鍛える
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
意思決定能力を訓練しない日本
日本の会社組織では、欧米の企業と比べて、誰がどの決定権限を持っているかがあいまいです。意思決定は通常ボトムアップのアプローチで行われることが多く、複数の関係者が合意に達するまで、時間をかけて相談や調整が行われます。形式的には会議での決定という場合でも、事前に調整が済んでいることが多いのです。
このため、オーナー企業などを除き、特定の個人が単独で決定を下すことが少なく、責任が分散する傾向にあります。また、稟議(りんぎ)というプロセスがあり、複数の管理職が稟議書という書類に印鑑を押して承認を示す方式が広く行われています。
日本に比べてトップダウン型の文化を持つ欧米の企業では、通常、役職やポジションに応じて明確な決定権限が与えられていることが多く、誰が最終決定を下すのかがはっきりしており、責任の所在も明確です。それだけに、意思決定の結果問題が生じた際には個人が責任を問われます。
一方で、日本的な方式ですと、特定の個人ではなく組織全体で責任を負うという状態を作ることができます。
しかし、日本型意思決定方式には大きな問題があります。それは「誰も自分で意思決定していない」という現実です。他者の意見も含めて必要な情報を集めた上で、悩みつつ、プレッシャーを受けつつ、勘も総動員して自分の責任で意思決定を行うという重圧から免れているのです。
意思決定能力も、人間の主要な能力の一つで、教育訓練、経験を繰り返さないと、迅速で精度の高い意思決定を行うことができません。しかし、多くの日本企業ではそうした経験を重ねなくても、報連相をはじめとする調整活動をうまく行うことで上位のポストに就ける構造になっているともいえます。
意思決定の3つのレベル
プロフィール
西川幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員