「管理職」は、法人組織の運営におけるキーパーソンです。部下を率い、経営目標を達成するという重い責任を担っています。そのため、管理職が目標達成に直結する営業や製造などの知識・能力の習得に強い関心を持つのは、極めて自然なことといえるでしょう。
一方で、人事労務に関する知識については、人事担当部署や経営者の役割であり、自分には関係ないものだと捉えがちです。確かに、労働基準法(以下「労基法」という)を中心とする労働法制は、労働契約上弱い立場にある労働者を保護することを目的としています。そのため、労働法制を守ることは目標達成の妨げになるだけであり、学ぶ必要はないと考えてしまう管理職も少なくありません。
しかし、その結果として、無自覚のうちに法令違反を犯し、管理職自身が責任を問われるだけでなく、企業経営そのものを危機にさらしてしまうケースも現実に起こっています。
管理職に求められるのは、労働法制を軽視することではなく、むしろ正しく理解し、適切に活用することで組織力を高めていく姿勢です。本講座では、そのために管理職が身につけておくべき「現場で使える、活きた人事労務の知識」を体系的に学んでいただくことを目的としています。
第1回目のテーマは、採用に絡む「労働契約の基本」です。後編では、「労働条件通知書」「試用期間」「業務委託契約」について解説していきます。
>>>第1回前編:面接から業務委託まで リーダーが押さえる「契約」の基本
労働条件通知書の機能
<事例>
口頭で「月給23万円」と説明しましたが、労働条件通知書を交付しませんでした。そのため、基本給なのか、各種手当込みなのか不明確でした。
採用後、社員は「基本給23万円だと思っていた」、会社は、「通勤手当・役職手当込みのつもり」であった、ということでトラブルになるケースがあります。
このような採用時のよくある紛争として、「定額残業代が出ると言われたと思う」「毎年4月に昇給があると聞いた気がする」という点で齟齬が発生しがちです。これらは、明確にするための書面を交付していなかったことに原因があります。
<法的な考え方>
労働条件通知書は、会社が社員に対して「賃金・勤務時間・休日」などの労働条件を示すために交付する書面です。労働条件が入社前後で違うと、労使トラブルにつながりやすいため、労基法で書面交付による明示が義務づけられています。
また、労働条件通知書に替えて、会社と社員が合意・署名した労働契約書を締結する場合があります。この場合は二通作成し、両方に会社・労働者が署名捺印をして会社と労働者でそれぞれ一通保管します。
労働契約書とは、労基法で作成が義務付けられている労働条件通知書と異なり作成義務はありませんが、記載された労働条件について社員が合意していることが書面に織り込まれますので、労働契約書の締結が望ましいと言えます。
<取るべき対応>
プロフィール
寿限無(じゅげむ)経営コンサルティング 代表 福田惠一
金融機関にて営業・融資を担当後、同総合研究所で人事金制度構築コンサルの経験を積み、退職後「寿限無経営コンサルティング」を開業。上場会社総務顧問も経験。経営の観点と社員の双方にとっての望ましい労使関係構築支援のため、人事・賃金・考課制度の整備、人事労務トラブル対応、紛争予防のための社内規程整備、マネジメント研修・ハラスメント研修等社員各層への研修、各種助成金申請支援等に注力。
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