【はじめての人事労務】社員が増えると何が変わる? 就業規則の作成と届出 衛生管理体制

公開日:2025年6月2日

はじめての人事労務 ~初任者のための実務講座~

社員が増えると何が変わる? 就業規則の作成と届出 衛生管理体制

 


<米澤社労士事務所 代表 米澤裕美/PSR会員

 

会社が成長するにつれ、社員数は少しずつ増えていきますよね。最初は数人だった会社が、気づけば10人、30人、50人、100人…と大きくなっていくのはとても喜ばしいこと。しかしその分、人事労務の面で必要なルールや義務も増えていきます。

ここでは、「社員の人数規模が増えると、どんな課題や義務が出てくるか」をお話しします。

少人数の会社の人事担当者の皆さんも、急に社員が増えても慌てずに対応できるよう準備を進めておくとよいでしょう。

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社員が4~9人規模:最初のルールづくり

会社設立当初は、知り合いや友人同士で立ち上げるケースも多く、少人数だからこそ“阿吽の呼吸”で物事が進む場面も多いでしょう。人事面でのトラブルもまだ少なく、感覚的なやりとりでうまくいく時期です。

しかし、社員数が4~9人に増えてきた段階では、就業規則や社内規程の整備を始めることが必要になってきます。

就業規則の作成・届出義務は「常時10人以上の労働者がいる事業場」とされていますが、10人未満であっても整備しておくことでトラブルの予防に役立ちます。

たとえば、「残業手当はどのように計算するのか?」「有給休暇はどのように付与されるのか?」といった質問も社内からでてきますので、ルールをあらかじめ明文化しておくことで、社員が増えた際にも混乱を防ぎやすくなります。

また、この段階では、経営者や総務担当者が人事労務を兼任しているケースも多いかもしれません。

しかし、人事労務には法律知識や専門的な対応が求められ、想像以上に負荷のかかる業務でもあります。

そのため、早い段階から人事労務の経験者を迎えて、外部の専門家に相談できる体制を整えることが、組織運営をスムーズに進めるカギとなります。

 

社員が10~40人規模:人事トラブルへの備え

社員数が10人を超えると、知り合いだけでなく“一般公募”での採用が増えるため、社内ルールがしっかりしていないとトラブルに発展してしまうこともあります。

「わざわざ言わなくても分かってくれていた」関係性が通じなくなり、給与や評価の公平性、勤務時間や休日、残業時間などで認識違いがでることもあります。

【対応のポイント】
- 就業規則の届出が義務(常時10人以上)になり、労基署へ提出
- 他にも、社員人数も増えたことで、労働契約書の不備や残業代の申請漏れなどもでてくることもあるため、ルールを明文化して周知するとよい

 

社員が40人前後:50人を見据えた安全衛生管理体制

社員数が40人を超えてくると、業務も多様化してきて、安全衛生管理体制やメンタルケアの強化が必要になります。

一つの事業場で「50人」になると、安全衛生管理体制での取り組まなければならない義務も増えます。

【対応のポイント】
- 50人に達したときに必要となる産業医選任や衛生委員会の設置を見越して社内体制を検討
- ストレスチェックなどの安全衛生管理策が必須になる場面に備える
- ハラスメント防止策や相談窓口を整えておく
  ・ 規模が大きくなると、人間関係の距離が広がり、人間関係トラブルや、上司と部下の行き違いなどさまざまな労務トラブルが起こりやすくなる
  ・相談窓口を設置したり、ハラスメント研修を実施するなどし、未然に防ぐ取り組みが必要(ハラスメント防止対策は中小企業も令和4年4月から義務化されています)

 

社員が50人~:衛生管理体制の整備と義務拡大

法律上、社員が50人以上の事業場に対し、産業医の選任や衛生委員会の開催が義務づけられています。

ストレスチェックの実施や衛生管理者の選任なども必要になり、安全衛生体制を本格的に稼働させる段階です。

健康診断の結果を管理し、産業医や労働基準報告書を所轄労働基準監督署に提出するなど、対応することも増えてきます。

厚生年金保険の被保険者数が51人以上の場合は、正社員だけでなく、パート・アルバイトなど短時間労働者も、一定の要件(週20時間以上勤務、月額賃金88,000円以上など)を満たせば社会保険の加入が義務となります(50人以下は4分の3要件で社会保険の加入が義務)。

【対応のポイント】
- 産業医をどう選ぶか、契約形態をどうするかなど検討
- 衛生管理者を選び、定期的な衛生委員会で安全衛生対策を話し合い、記録を残す
- ストレスチェックを年1回実施し、結果を本人に通知するなど法的手続きを踏む

 

社員が101人~:一般事業主行動計画の策定など

社員数が100人を超えると、さらに女性活躍推進法や障がい者雇用納付金制度など、社会的責任を果たす施策が求められてきます。

【対応のポイント】
- 女性活躍推進法では、一般事業主行動計画の策定・届出・公表などが必要
- 障がい者雇用納付金制度は、一定の法定雇用率が未達成の場合の納付金

【社会的責任と企業イメージ向上につなげるために】
- 女性の活躍推進策(えるぼし認定など)を活用し、企業ブランドにも活かす
- 障がい者雇用を積極的に進め、多様な人材が活躍する環境づくりを目指す
- “社会的責任を果たしている企業”としてのイメージアップや広報戦略に役立てる

 

 

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執筆者

米澤裕美 特定社会保険労務士 
https://www.office-roumu1.com

ネットワーク機器のトップメーカーにて、19年間インサイドセールスや業務改善チームの統括リーダーとして勤務。
途中2度の育児休業を取得。社内の人間関係の調整機会も多く、コミュニケーションや感情の重要性を日々実感してきた。
業務効率化の取り組みとして、社内ポータルサイトの立ち上げにも注力。
本社営業部門3S運動(親切・すばやい・正確)で1位に選出。
退職後、社労士法人勤務を経て、独立開業。現在は、複数企業の人事労務相談顧問、執筆などを行っている。

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