【はじめての人事労務】人事労務担当者の日々のお仕事

はじめての人事労務 ~初任者のための実務講座~

人事労務担当者の日々のお仕事

 


<米澤社労士事務所 代表 米澤裕美/PSR会員

 

人事労務担当者がどのように日々の業務を行っているのでしょうか。

会社によって業務範囲は異なりますし、法改正や会社の方針の変化によっても変わることがありますが、ここでは、多くの企業で共通する基本的な実務を中心にご紹介します。

記事一覧はこちら>>>はじめての人事労務 ~初任者のための実務講座~

1.勤怠管理(出退勤のチェック)

人事労務担当の代表的な業務のひとつに、社員の出退勤や残業時間を確認する「勤怠管理」があります。最近は、クラウド型の勤怠管理システムを導入する企業が増えており、ICカードやスマートフォンアプリなどで打刻を行うケースも少なくありません。

  •  出退勤時刻の確認:定時どおりに出勤しているか、遅刻や早退が発生していないかなどをチェック
  •  残業時間の集計:所定の労働時間を超えて働いている場合、残業時間を正しく計算
  •  休暇・休日の管理:有給休暇の取得実績や休日の管理をする
  •  36協定(サブロク協定)の管理:法定労働時間を超える残業や休日出勤を行うには、「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」を労使間で締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。法律で定められた上限を超えないよう注意しながら勤怠管理を行いましょう。

「36協定」とは労働基準法第36条に基づき、“法定時間外や休日の労働”を適法に行うためのルールを定めたもので、サブロク協定といいます。残業代計算や長時間労働対策と関わるもので、勤怠管理をする上では把握しておかなければならないものです。

勤怠を管理し集計した数字は「給与計算」や「長時間労働対策」にもつながってきます。正確な管理をすることで、社員とのトラブル回避や健康リスク低減に役立ちます。

 

 

2.給与計算まわりのこと

勤怠管理を終えたら、そのデータをもとに「給与計算」を行っていきます。

月末締め・翌月払いといったように会社によって支払い方は色々です。締め直後の数日間は集計作業で慌ただしい日々も送られていると思います。

給与計算のポイント

  •  給与計算:基本給、各種手当、残業代、通勤費などを正しく計算
  •  社会保険料・税金の控除:健康保険や厚生年金、雇用保険などの保険料、そして源泉所得税や住民税などを毎月の給与から控除
  •  給与明細の発行:書面や電子データなどで明細を発行
  •  年末調整:年末にまとめて行う税金の再計算

社会保険や税金に関する法律も改正が行われることがあるため、前任者が使っていた資料や手順書だけを参照していると、最新のルールに対応できていない可能性があります。

必ず現行の法制度を確認し、給与計算ソフトやシステムの設定をアップデートしていきましょう。

また、会社によっては顧問社労士に給与計算や社会保険の手続きを委託している場合もあります。この場合、人事労務担当者は勤怠データや社員情報を社労士へ渡すなどの役割もあります。

給与計算の締め日や保険手続きの期限に間に合うよう、社労士との連絡をこまめに行い、抜け漏れがないようにしましょう。

 

3.採用手続き・入社時の対応

新しい人材を迎える際には、入社手続きのサポートも人事労務担当者の大事な役割です。

採用部署が別にあったとしても、社会保険や雇用保険の加入手続きは労務担当が担うケースが一般的です。

  •  雇用契約書等の準備:労働条件を明示し、社員と締結する
  •  社会保険・雇用保険の手続き:入社したら早めに届け出をする
  •  マイナンバー管理:マイナンバーが必要となる各種手続きを行い、情報を保管
  •  オリエンテーションや研修の調整:会社独自のルールやビジョン、勤怠管理の方法、福利厚生制度などについて、入社時に丁寧に説明する場を設けましょう。入社後の不安を減らし、スムーズに職場に適応するための支援になります。

ここでも、顧問社労士がいる場合は、保険加入手続きを依頼することもあります。

必要書類や個人情報(マイナンバーなど)の取り扱いに気を付け、社労士としっかり連携してスムーズかつ正確に進めましょう。

 

 

4.退職手続き・離職票の発行

社員が退職するときにも、人事労務担当者が対応する場面が多いでしょう。

退職日の確認や有給休暇残日数の確認、保険の資格喪失手続きなど、やるべきことが多いです。

  •  退職願・退職届の確認:会社のルールに従い、手続きの進め方を案内
  •  有給休暇の消化:消化させることは義務ではありませんが、消化して退職することを希望する方が多いため、残日数の確認など
  •  社会保険・雇用保険の資格喪失手続き:保険を喪失する手続きを行う
  •  離職票の発行:これまでの給与額や出勤日数を記入して発行手続きをする
  •  源泉徴収票の発行:退職した社員に交付する

退職手続きも、顧問社労士に手続きを委託しているケースもあるでしょう。

資格喪失手続きや離職票の発行など、手続きを早く進めるためにも情報のやり取りを滞りなく行い、退職者への連絡をスムーズに進めましょう。

会社の就業規則や退職に関する規定を理解しておくことも必要です。

退職手続きは退職者本人も不安や疑問を抱えやすいタイミングです。スムーズに手続きが進まないと会社への不信感を残したまま退職することになりかねませんので、必要書類についてなど丁寧で親切に説明する姿勢をもっておきたいですね。

 

5.各種問い合わせ対応・トラブル相談

人事労務担当者には、さまざまな問い合わせや相談が寄せられます。たとえば、下記のような内容が想定されます。

  • 給与・社会保険に関する質問:「住民税が高くなったけど、なぜ?」「社会保険料が変わったがなぜ?」「残業代が思ったより少ないのでは?」
  •  休暇・休職の取り方:「有給休暇を申請したい」「妊娠したので育児休業をとりたい」「病気になってしまい傷病手当金を受給しながら休みたい」など
  •  ハラスメント相談や労務トラブル:社内の人間関係の悩みや働き方についての不満・悩み

こうした問い合わせやトラブル対応は、いつ起こるかわからないという点が難しさでもあります。

法律や就業規則の知識を活かしながら、公平かつ迅速に対応し、必要に応じて人事労務担当者から専門家(社労士や弁護士など)に相談するのも重要な役割です。

社労士への労務相談としては、例えば「入社して間もない社員が妊娠し育児休業をとりたいと希望しているがどう対処したらよいか。」とか、「解雇や雇止めについて」など、法的リスクが高いケース。「残業代が足りないのでは?という相談が社内からあった」「ハラスメント事案が発生しその対応について」など、予期せぬ出来事もあるでしょう。

自社だけで判断が難しいときは人事労務担当者から専門家(社労士や弁護士)に早めに相談し、最適な解決策をはかっていきましょう。

 

6.法改正への対応・社内ルールの更新

人事労務にかかわる法律は、社会情勢や働き方の多様化に伴い、改正があります。

たとえば、残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務、育児介護休業法など、ここ数年でも大きな改正がありました。

  • 情報収集:厚生労働省や労働局のWebサイトで最新情報をチェック
  • 就業規則や各種規程の見直し:改正内容を踏まえて、必要に応じて会社ルールを改訂
  • 社員への周知:影響が大きな改正については社員へ周知する
  • やり方の改善:前任者から引き継いだ方法が最新の法令に合っていないケースもあるかもしれません。最新の法令にあわせて改善していくことも多いでしょう。

法改正があった場合や運用ルールを変更する際にも、社労士が法令解釈や就業規則の改訂についてアドバイスしてくれることがあります。労務リスクを最小限に抑えるためにも、専門家と連携しながら進めると安心ですね。

 

 

もう一歩進んで学びたい方へ

 

記事一覧はこちら>>>はじめての人事労務 ~初任者のための実務講座~

執筆者

特定社会保険労務士 米澤裕美
https://www.office-roumu1.com

ネットワーク機器のトップメーカーにて、19年間インサイドセールスや業務改善チームの統括リーダーとして勤務。
途中2度の育児休業を取得。社内の人間関係の調整機会も多く、コミュニケーションや感情の重要性を日々実感してきた。
業務効率化の取り組みとして、社内ポータルサイトの立ち上げにも注力。
本社営業部門3S運動(親切・すばやい・正確)で1位に選出。
退職後、社労士法人勤務を経て、独立開業。現在は、複数企業の人事労務相談顧問、執筆などを行っている。

 

「給与・労務の法律」関連記事

「労務コンプライアンス」に関するおすすめコンテンツ

ピックアップセミナー

オンライン 2025/06/04(水) /13:30~17:30

【オンライン】はじめての給与計算と社会保険の基礎セミナー

講師 : 社労士事務所Partner 所長 西本 佳子 氏

受講者累計6,000人超!2009年から実施している実務解説シリーズの人気セミナーです!
給与計算と社会保険について基礎からの解説と演習を組み合わせることで、初めての方でもすぐに実務に活用できるスキルが習得できます。

DVD・教育ツール

価格
4,950円(税込)

かいけつ!人事労務では、法改正対応や従業員への周知、教育・啓蒙等に活用できる小冊子を販売しています。

通常は各種10冊1セットの販売となりますが、実際に手に取って中身を見て導入するかどうかを検討したいといったご要望に応え、小冊子を1冊ずつ、計7種類のセット商品をご用意しました。

おすすめコンテンツ

TEST

CLOSE