
【経営人事改革の視点】職場の雰囲気とチーム生産性の相関関係から考える「問題行動を放置しない」対応術
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
腐ったリンゴ実験
問題社員がチームに与える影響を調べた有名な実験があります。組織行動学者のウィル・フェルプス氏が行った「腐ったリンゴ(Bad Apple)実験」と呼ばれるものです。
フェルプス氏が行った実験は、4人1組のチームに「ニック」というサクラ(俳優)を1人紛れ込ませ、スタートアップ企業のマーケティングプランを作成させるというものでした。
チームを内側から崩壊させるために、ニックには、意図的に以下の3つの「ネガティブなキャラクター」のいずれかを演じさせました。
①悲観的でだるそうに振る舞い、職場の規範やルールを乱す
②他者の意見に反抗的で、攻撃的な態度をとる
③努力を出し惜しみ、一生懸命働かない
実験の結果、サクラのニックが上記のどの役割を演じた場合でも、ほぼすべてのチームにおいてパフォーマンス(成果の質)が30〜40%も低下しました。
さらに深刻だったのは、他のメンバーがどれほど優秀で真面目であっても、たった1人のネガティブな振る舞いがウイルスのように周囲に伝染してしまったことです。
優秀な社員たちがネガティブな社員を正そうとするのではなく、「あいつがやらないなら、自分たちもやらなくていいや」と、チーム全体が怠けたり暗くなったりと、低い基準に引きずり込まれてしまうことが確認されました。
この実験において、サクラのニックによる悪影響を跳ね返し、極めて高いパフォーマンスを発揮したチームがありました。
そのチームを牽引していたのは、「ジョナサン」という若者でした。彼がとった行動は、以下のようなものです。
ニックが意地悪な発言をしたり、机に突っ伏して怠けたりしたとき、ジョナサンは決して怒ったり反発したりせず、彼は微笑み、うなずきといった身体的・感情的な「温かさ」を示して、ニックの放つネガティブな空気をスッと吸収し、無効化してしまったのです。
ニックの毒気をそらした後、ジョナサンはすかさず他のメンバーに意識を向け、「これについて、君はどう思う?」「どう進めるのがいいかな?」と、非常にシンプルで答えやすい質問を投げかけました。ニックによって切れかけたチームの会話の糸を、その都度つなぎ直したのです。
ニックはジョナサンと対決して克服したわけではなく、場の雰囲気をサッと変える「シグナル」を発し続けたということです。
雰囲気のマネジメント
プロフィール
西川幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員
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