記事一覧はこちら>>>【連載】AI時代における労務問題への対応実務
前回は、生成AIを使う上で、労務問題特有の性質があるという問題意識を共有しましたが、AIは労務問題の実務でも非常に有効なツールであることは間違いありません。
実際、叩き台作成、要約、論点抽出、パターン分析、比較・想定など、使える場面は想像以上に広いものです。
ただし、ここで大切なのは、AIを「正解を出してもらうための道具」と考えないことです。AIには結論を出させるのではなく、叩き台や判断材料を出させるという使い方が重要になります。
第2回となる今回の記事では、生成AIが人事総務部門の実務でどれほど有益なのか、そして、どのように使うべきかをお伝えします。
人事総務部の実務で、生成AIは想像以上に幅広く活用できる
生成AIというと、中には、「調べものを楽にするツール」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、チャットGPTやGeminiのような汎用性のある生成AIは多くの使い方ができます。以下のような使い方は既に一般的になっていると思います。
●叩き台の作成
- 就業規則・諸規程や研修資料の叩き台を作る
- 新しい制度に関する社内通知文の草案を作る
- 社員向けFAQの案を作る
●整理する
- 膨大な資料を要約する
- 過去のメモや議事録を要約・整理する
- 会議のアジェンダを検討する(思考の整理)
これだけでも非常に便利ですが、生成AIは自由度が高く、アイデア次第で多くの使い方ができます。例えば、以下のようなことにも使えます。
● 分析する
- 社員アンケートの集約結果から、共通する不満を抽出させる
- 不満意見の奥にある課題の候補を一覧で挙げさせる
- 複数のメモや議事録から、問題点の本質を分析させる
● 選択肢を広げる
- 会社の課題に対して、考えられる対策案をできるだけ多く挙げさせる
- 制度導入や見直しにあたって、複数の選択肢を出させる
● 比較・想定をさせる
- 複数の制度案について、メリット・デメリットを挙げさせる
- 就業規則の社員説明会で想定される質問を列挙させる
- 社員説明会のロールプレイングをする
さらに、これらを複数組み合わせることも可能です。例えば、就業規則を見直した際に行う社員説明会でご説明します。
まずは、社員説明会で社員から出ると思われる質問を網羅的に挙げさせます(ブレーンストーミング)。
実際に、起きるかどうかの可能性を高低でランク付けさせて、会社の模範解答集の叩き台も作成させます。
そのうえで、想定問答集を使って、AIと社員説明会の予行演習を行います。起きる可能性が高い質問を中心にしつつ、何回かに1回はレアな質問を入れるなど、AIへの指示は企業の事情に応じて調整します。
さらに、AIにフィードバックをもらい、議論を深めながら改善していくことも可能です。
このように、生成AIは、対人でしか行えなかったことまで行えるのです。
従来は、1度も社員説明会を行ったことがない場合、事前にシミュレーションすることは非常に難しかったと思います。
想定質問集を作成しても実際に受ける質問とは乖離が生じやすかったです。しかし、現在の生成AIは一般的な質問なら網羅的に出すことが可能です。
また、予行演習も同様です。質問者と回答者の一問一答で終わっていた予行演習がリアルに近づきます。もちろん、レアなケースは事前に想定できないでしょうが、それは、人間であっても同じことです。
生成AIを使えば、従来は自社だけでは難しかった準備や予行演習まで行えるようになります。非常に便利なツールであることは間違いありません。
生成AIは使い方を誤ると却って非効率になることもある
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執筆者
小嶋裕司
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所(https://www.festinalentesroffice.com)代表
特定社会保険労務士
就業規則の専門家。企業が抱える人事労務の課題解決のため、その実現に必要な就業規則や関連規程の整備の支援をしている。法令遵守と企業の事情を両立させた現実的な対応を得意とする。生成AIの黎明期である2023年3月から、AI・デジタル講師陣がそろう学習環境下で本格的に生成AIの活用を開始。自らの実務に活用するだけでなく、人事の専門家に向けて「AI時代の労務問題・就業規則」をテーマとした勉強会の講師を務めるなど、新しい時代の人事労務に関する知見を積極的に発信している。

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