【組織リーダーの若手社員育成術】第6回 「入社1年目にすべきこと」として何を伝えるか

公開日:2024年2月20日

【組織リーダーの若手社員育成術】

第6回「入社1年目にすべきこと」として何を伝えるか


<コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀信敬/PSR会員>

組織リーダーが新入社員に行う教育研修では、「入社1年目にすべきこと」を明確に指導することが大切である。とりわけ、昨今の若手社員に対しては「仕事に全力で取り組むこと」を指導することが非常に重要となる。

なぜ、このような当たり前の業務姿勢を、あえて教育しなければならないのか。今回はこの点を考察してみよう。

 

若者が仕事に集中しづらい現代の社会環境

もうすぐ新年度が始まる。入社したての社員に対し、組織リーダーが行うべき最初の重要な指導が「入社1年目にすべきこと」に関する教育であろう。その際、ぜひとも取り上げたいのが「仕事に全力で取り組むこと」である。

入社1年目に全力で仕事に取り組むなど、至極当たり前の業務姿勢である。しかしながら、そのような当たり前の事柄をあえて教育項目に加えるのには理由がある。現代の若者を取り巻く社会環境は、「仕事に全力で取り組むこと」を困難にする傾向にあるからである。

一例として、ブラック企業に関する問題が挙げられる。ブラック企業とはご存じのとおり、「違法な長時間労働を強いる」「時間外労働に対して正当な対価を支払わない」など、法令に反した経営を行う企業の俗称である。

昨今、ブラック企業に関するトラブルが社会問題化した結果として、自身が勤務する職場に違法性・不当性がないかを過剰なまでに警戒する若者が増加している。

入社後に実務がスタートしても、「私が受けた残業の指示は適法なのか」「あの上司の態度はハラスメントに該当しないのか」などが気になって気になって仕方がないのである。なかには常時、職場に疑惑の眼差しを向け、どんなに小さな違法性・不当性の兆候も見逃すまいと腐心する若者さえ散見される。そのため、一向に仕事に身が入らいない。

このようにブラック企業問題の顕在化は、若年労働者の自己防衛心理を過剰にあおる結果となった。そのため、若手社員の中には「仕事に集中して全力で取り組むこと」を不得手とする者が少なからず存在するのである。

 

1年目に重要な「仕事に全力で臨む姿勢」

入社して間もない若者が業務時間中に仕事に集中できず、「これは適法なのか」などとばかり考えているのは極めて不幸である。必要な業務知識・スキルの習得が円滑に進まないからである。知識・スキルが不十分であれば、与えられた業務を全うすることもおぼつかない。

さらには、業務を円滑に遂行できない現実が職場への不満因子となり、「私に仕事をキチンと指導できない会社側に問題がある」などと会社へのマイナス感情が一層膨らむという悪循環さえ起こりかねない。不満の拡大した従業員は離職を選択し、企業側は採用活動のやり直しを迫られる結果となる。このような状況に陥った場合、企業が被る時間的・経済的損失は計り知れない。

もちろん、ブラック企業と称される職場を肯定しているわけではなく、法令違反の黙認を奨励しているわけでもない。労働基準法に違反するなどの違法な経営活動は、ときに従業員の命に関わることさえある、極めて悪質な非倫理的行為である。従って、法令を無視した企業経営を決して看過してはならず、被害を受けている従業員の方々は自身の安全・健康・生活を全力で守るべく、しかるべき行動を起こしてほしい。

しかしながら、ブラック企業に関する問題が多くのメディアで取り上げられるほど、その反作用として「自社の違法性・不当性を過剰なまでに警戒する若者」が生まれるのも事実である。だからこそ、組織リーダーが新入社員に「所与の条件のもとで仕事に全力を尽くす重要性」をあえて教育する意義は大きいのである。

 

全力で取り組まなければ『仕事の醍醐味』『職業適性』は分からない

仕事には、携わった者にしか分からない醍醐味が存在する。例えば、「他社に先駆けて新製品を市場投入した」「不可能と思われた営業目標を達成した」「地域社会へ多大な貢献を果たした」などの成功体験は、ビジネスパーソンにとってかけがえのない喜びとなり、仕事のやりがいを醸成するものである。

また、ビジネスパーソンはさまざまな業務経験を積むことにより、自身の職業適性に気付くことが可能になる。その結果、生涯にわたって関わるべき仕事を見つけ出すことも期待できるわけである。

しかしながら、『仕事の醍醐味』『職業適性への気付き』のいずれも、全力で仕事に挑み続けて初めて得られる果実である。他に気を取られながら日々の仕事をこなしていては『仕事の醍醐味』を感じることもなく、『職業適性への気付き』を得られるほどに自身が成熟することもない。

社会に出たての若者は、この仕組みを認識していない。従って、組織リーダーが「いかに仕事に全力を尽くすことが大切なのか」を若者たちに指導することが重要になるのである。ぜひ、貴社の新入社員の皆さんにも、「入社1年目にすべきこと」として仕事に全力を尽くす意義を指導していただきたい。

 

プロフィール

大須賀信敬

コンサルティングハウス プライオ 代表 

(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)

コンサルティングハウス プライオ(http://ch-plyo.net)代表

中小企業の経営支援団体にて各種マネジメント業務に従事した後、組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業までさまざまな企業・組織の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員。

 

 

組織リーダーの若手社員育成術<連載全8回>

若手社員に対する教育項目の中でも、特に重要なマインド教育。組織の一員として働くための基本姿勢や考え方を身に付けることは仕事をしていく上での軸となるものです。

そこで、新入社員・若手社員の育成をするうえで、重要な役割を担っている組織リーダーがどのように指導を行っていったらよいかを全8回にわたって解説します。

 

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