副業・兼業者の雇用保険適用は労働時間の合算できる?

公開日:2021年9月6日

 複数の会社に雇用されている従業員は、掛け持ちしている勤務先の所定労働時間がいずれも週20時間未満の場合は、原則として雇用保険に加入できませんが、法改正により、一定要件を満たせば、雇用保険の「週20時間以上」の適用要件を複数の勤務先での所定労働時間を合算して判断されるようになります。

 来年1月から、複数の事業主に雇用される「65歳以上の者」に限り、従業員自らハローワークに申出を行えば、そのように合算して判断することとされます。「65歳未満の者」については、そのような合算は認められません。

 まずは、パートや契約社員などの非正規労働者への雇用保険の適用基準を確認しておきましょう。

●非正規労働者への雇用保険の適用基準⇒次のいずれにも該当すること!
『(1)週の所定労働時間が20時間以上 かつ (2)31日以上雇用される見込み』

 上記(1)の要件(週の所定労働時間が20時間以上)を判断する場合、現行制度では、複数の事業主に雇用される者について、労働時間を合算することは認められていません。
 したがって、たとえば、A社で週9時間、B社で週12時間働いている者は、雇用保険の被保険者になれません。

 副業・兼業を推奨している政府としては、このような取扱いは見直すべきなのですが、すべてのケースについて、労働時間を合算することを認めると混乱が生じることが予想されます。
 そこで、試行的に、65歳以上の者に限り、2つの勤務先の労働時間を合算することを認めることとされました。

 具体的には、「雇用保険法等の一部を改正する法律」により、「高年齢被保険者の特例」が創設され、来年1月1日から施行されることになりました。

 この「高年齢被保険者の特例」は、複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者について、本人の申出を起点に、2つの勤務先の労働時間を合算して、「週の所定労働時間が20時間以上である」ことを基準として雇用保険を適用する制度です。
 労働時間は、単独でみて、週5時間以上週20時間未満のものに限り合算できます。

<65歳以上の者についての例>
・A社で週9時間、B社で週12時間→合計で週20時間以上(適用可)
・A社で週4時間、B社で週17時間→A社は5時間未満なので合計できない(適用不可)

 なお、通常であれば会社がハローワークに対して行う雇用保険に関する事務になりますが、この特例の対象者である従業員の合算した週の所定労働時間等の就業状況を、雇用している会社が把握し、各種の手続を行うことは困難であるため、本人が本人の住居所を管轄するハローワークに対して行うこととされています。

 また、給付面についても、所要の規定の整備が行われています。

 65歳以上の方を、短時間の条件で雇用している場合は、このような特例が設けられたことを知っておきたいところです。

 厚生労働省などからわかりやすい資料が公表されましたら、「かいけつ人事労務」サイトのトピックスなどでもお伝えします。

 

「労働保険の手続き」関連記事

「日常の労務手続き」に関するおすすめコンテンツ

ピックアップセミナー

東京会場 2024/05/23(木) /13:30~17:30

【会場開催】はじめての給与計算と社会保険の基礎セミナー

講師 : ※各日程をご確認ください

受講者累計5,000人超!2009年から実施している実務解説シリーズの人気セミナーです!
給与計算と社会保険について基礎からの解説と演習を組み合わせることで、初めての方でもすぐに実務に活用できるスキルが習得できます。

DVD・教育ツール

価格
31,900円(税込)

経験豊富な講師陣が、初心者に分かりやすく説明する、2023年版の年末調整のしかた実践セミナーDVDです。
はじめての方も、ベテランの方も、当セミナーで年末調整のポイントを演習を交えながら学習して12月の年末調整の頃には、重要な戦力に!

価格
7,150円(税込)

本小冊子では、ビジネスマナーに加え、メンタルヘルスを維持するためのコツ、オンライン会議やSNSのマナーのポイントも紹介しています。
また、コンプライアンス(法令順守)も掲載。ビジネスパーソンとして肝に銘じておきたい「機密管理」、働きやすい職場づくりに必要不可欠な「ハラスメント防止」について、注意点を解説しており、これ一冊で、一通りのマナーの基本が身に付くようになっています。

おすすめコンテンツ

TEST

CLOSE