4月からの成年年齢引き下げ 労基法等への影響は?
- 公開日:2022年1月27日.
今年4月からの民法改正で成年年齢が引き下げられますが、労働基準法等への影響はあるでしょうか?
平成30年6月、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立しました。
これが、今年の4月1日から施行されます。
そのポイントは、次のとおりです。
1.成年年齢の引き下げ(民法第4条)
(1)一人で有効な契約をすることができる年齢
(2)親権に服することながなくなる年齢
→いずれも「20歳」から「18歳」に引き下げ
2.女性の婚姻開始年齢の引き上げ(民法第731条)
→「16歳」から「18歳」に引き上げ(婚姻開始年齢は男女とも18歳に統一)
民法で定める成年年齢は、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものです。
その年齢は、明治9年の太政官布告で20歳とされ、明治29年に制定された民法にも引き継がれたといわれています。
今回の成年年齢の引き下げは、明治9年の太政官布告からみると、約140年ぶりの改正ということになります。
この民法の一部改正の影響で、年齢要件を定める他の法令についても、必要に応じて、20歳という年齢を、18歳に引き下げるなどの改正が行われています。
たとえば、労働基準法は、どうでしょう?
労働基準法については、いまのところ、法令の改正は予定されていません。
現行の労働基準法では、まず、使用(雇用)できる最低年齢が定められており、満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの児童を使用することが禁止されています
(映画や演劇の子役などについては例外あり)。
次に、18歳未満は「年少者」と定義され、様々な保護規定・制限が設けられています。
代表的なものに、時間外労働や休日労動、深夜業の原則禁止があります。
肝心の「未成年」に関する規定はというと、次の2つとなります。
・親権者又は後見人は、未成年者に代って労働契約を締結してはならない。
・親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。
これらの「未成年者」という部分は改正されないようなので、これらの規定の対象となる者は、民法の一部改正に伴い、自動的に「20歳未満」の者から「18歳未満」の者に引き下げられることになります。
今後、特に解釈の変更などがない限り、そのような取り扱いとなります。
そもそも、今回の改正で実質的に変わるのは、18歳19歳の方が親の同意を得なくても、様々な契約をすることができるようになることです。
(例えば、一人暮らしのためのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組むなど)
したがって、たとえば、新規高卒の方を採用することがあるとすれば、れっきとした大人の方と労働契約を結ぶという感覚は必要になるかもしれませんね。
もっとも、飲酒や喫煙できる年齢については、20歳という年齢が維持されますので、飲み会の席などでは注意が必要ですね。
なお、国民年金の加入義務が生ずる年齢も、20歳以上のままとなっています。
民法の一部改正が、企業実務に大きな影響を及ぼすことはないと思われますが、実質的にどのような変更があるのかは、把握しておいたほうがよいでしょう。
【参考資料】
民法改正 成年年齢の引下げ~若者がいきいきと活躍する社会へ~(法務省民事局)
≫ https://www.moj.go.jp/content/001300586.pdf