【専門家の知恵】”人が動く”コミュニケーション術~部下への業務改善の求め方

公開日:2019年12月20日

<コンサルティングハウス プライオ 大須賀 信敬/PSR会員>

 

 リーダーが部下の仕事ぶりに改善を求める場合、コミュニケーションのとり方次第で、改善の進み具合が大きく異なるという。それは一体、どのような仕組みなのだろうか。

 

◆一方的に問題点を指摘しても、改善は進まない

 リーダーが部下の問題点を改善しようとする場合、一方的に問題点を指摘する方法は、必ずしも好ましいとはいえない。まずは、「部下自身がその問題点についてどのように思っているか」を確認することがポイントとなる。具体的には、面談などで次の2点を確認するとよい。

(1)リーダーが「問題である」と思っている点について、部下自身も「問題である」と思っているか

(2)部下自身も「問題である」と思っている場合、その原因は何だと思っているか

 例えば、リーダーが部下に対して「仕事の進め方に問題があり、間違いが多い」という問題点を見つけたとする。このような場合には、

・間違いが多いことについて、部下自身も問題だと思っているか

・間違いが多い原因は何だと思っているか

について、本人の話をよく聞いてみるのである。

 なぜ、このような確認を行うかというと、問題点に関するリーダーと部下の認識は、必ずしも同じとは限らないからである。

 「間違いが多い」という点について部下の認識を確認すると、「間違えることはあるが、多いとは思わない」、「そもそも間違えたとは思っていない」といった意見を聞くこともある。

 つまり、リーダーが「問題である」と考えている点について、部下自身は「問題である」とは考えていないこともあるのだ。

 また、「間違いは多いが、従業員数が少ないのだから仕方がない」、「間違いは多いが、原因は一緒に働いている同僚にある」といったように、部下自身に「間違いが多い」という自覚はあるものの、「原因は自分にはない」と考えていることもある。

 部下が「そもそも間違えたとは思っていない」、「間違いは多いが、従業員数が少ないのだから仕方がない」といった認識を持っているにもかかわらず、リーダーが一方的に改善を求めても上手くいくはずがない。

 従って、部下から業務改善という“好ましい行動”を引き出すためには、まずは部下自身の話をよく聞いてみることが必要と言える。

 

◆改善策は部下自身に決めさせる

 例えば、自身に「間違いが多い」という自覚があり、原因は自分の仕事の進め方にあると考えている部下がいるとする。そこで、リーダーが部下に対して「君は間違いが多いから、必ず二重チェックをしなさい」などと、一方的に指示を出したとしよう。

 このような場合、リーダーに対して「分かりました」と答えた部下が、命じられた二重チェックを最初のうちは行っていたものの、いつの間にか行わなくなってしまうということがある。

 なぜかというと、二重チェックは部下が“自分の意思”で「やろう!」と決めた改善策ではないからである。

 人間には「他人に命じられたことは、長続きしない」という特徴がある。この特徴はビジネスの場であっても変わりがない。そのため、リーダーが一方的に部下に命じるやり方では、問題点の改善が進みづらいというケースが少なくない。

 一方で、人間は「自分で決めたことは、長く続けられる」という特性も持ち合わせている。問題点に対する改善策をリーダーが一方的に与えるのではなく、部下自身に改善策を決めさせるほうが、改善効果は高くなる傾向にある。

 例えば、部下に対して「間違いを減らすには、どうすればよいと思う?」と問いかけ、部下自身に改善策を考えさせるのが効果的である。

 もしも、部下に改善策を考える知識や経験が不足しているのであれば、「部下に改善策のヒントを与えながら考えさせる」、「いくつかの改善策を示し、そのうちのどれを行うかを部下自身に決めさせる」などの方法もある。

 いずれにしても、部下が“自分の意思”で「やろう!」と決めた改善策が、業務改善に対する “好ましい行動”、“前向きな対応”が継続しやすくなるポイントと言える。

 皆さんは、部下に改善を促すとき、どのようなコミュニケーションをとっているだろうか。今一度、振り返ってみていただきたい。

 

プロフィール

マネジメントコンサルタント、中小企業診断士、特定社会保険労務士 大須賀 信敬
コンサルティングハウス プライオ(http://ch-plyo.net)代表
「ヒトにかかわる法律上・法律外の問題解決」をテーマに、さまざまな組織の「人的資源管理コンサルティング」に携わっています。「年金分野」に強く、年金制度運営団体等で数多くの年金研修を担当しています。

 

 

 

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