[経営人事改革の視点]ものごとを構造的に捉える
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
何かができるということ
向山洋一という著名な学校教育者がいます。現在はかなり高齢になられていますが、かつてこの方は、15分ほどでほとんどすべての子供が跳び箱を跳べるようになる指導法によって有名になりました。
向山氏は、跳び箱を跳ぶという行為を一括りにするのではなく、構造つまりプロセスに分けて捉えるところから出発します。①助走する→②踏み切る→③跳び箱に手をつく→④跳び箱をまたぎ越す→⑤着地する、という5つのプロセスです。
跳び箱を跳べない子供も、助走はできるし、踏み切りも、跳び箱に手をつくこともできます。しかし、4つ目の跳び箱をまたぎ越すというところができないのです。またぎ越すというのはどのような行為かというと、手をついて体重移動するということです。
そこで向山氏は、跳び箱にまたがって手をついて前に移動していく練習をさせるのです。それによって体重移動の感覚がつかめると、跳び箱のまたぎ越しができるようになっていきます。その後の着地は難しくないので、1時間の授業の中で、ほとんどの子供が跳べるようになるとのことです。
この話のポイントは、一連の動作を構造的に捉え、プロセスに分解してそれぞれの特徴を把握するというものです。跳び箱が跳べないというのは、たった一つのプロセスができないだけであり、そこを克服すれば問題は解決するのです。
そのようなアプローチをとらずに、走っては跳んで失敗するということを繰り返しても、時間がかかる割には結果が伴わないのですが、現実にはそうしたことが多く行われています。
向山氏は、こうした指導法以外に、勉強面での指導法や子供たちの集団をどのようにマネジメントしていくかについて、多数の優れた実績を残しております。
ビジネスモデルと職務遂行能力
プロフィール
西川幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員