【専門家の知恵】男女賃金格差の把握のポイントと賃金格差を解消するために必要なこと

公開日:2024年1月29日

 

男女賃金格差の把握のポイントと賃金格差を解消するために必要なこと


<ひろたの杜 労務オフィス 代表 山口善広/PSR会員>
 

改正女性活躍推進法により、自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、及びこれを踏まえた行動計画の策定・届出・社内周知・外部公表が101人以上の事業主に義務化されていますが、さらに、常時301人以上の事業主には「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられています。

具体的にどのような手順で情報を公開するのかを見ていきましょう。

 

 

そもそも「男女の賃金の差異」とは?

 

 

男女の賃金の差異とは、文字どおり、男女間の賃金の格差のことです。

しかし、ただ数字を公表すれば良いというのではなく、「全労働者」・「正規雇用労働者」・「非正規雇用労働者」の3区分すべてにおいて男女の賃金の差異を公表することとなりました。

そして、公表の時期ですが、令和4年7月8日の制度施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度が開始されてから概ね3ヶ月以内に公表するスケジュールとなっています。

たとえば、令和6年7月末に事業年度が終了する場合は、概ね令和6年10月末までに公表、令和7年3月末に事業年度が終了するのであれば、概ね令和7年6月末までに公表することになります。

 

ここで、数字の算出にあたって、用語の定義をお話しします。

まず、労働者についてですが、「正規雇用労働者」とは、期間の定めがなくフルタイムで勤務している者を指します。

一方、「非正規雇用労働者」は、正規雇用労働者よりも1週間の所定労働時間が短いパートタイム労働者と、有期雇用労働者のことです。

で、「正規雇用労働者」と「非正規雇用労働者」を合わせたものが「全労働者」となります。

ちなみに、派遣労働者については、派遣元の事業主にて算出するので、派遣先では算出対象外です。

また、労働者である人員数の数え方については、男女で異なる方法で数えないこと、一貫性のある方法を採用することに留意します。

人員数の算出方法としては、たとえば、事業年度内の給与支払日における12ヶ月分の労働者数を平均した数を用いる方法などがあります。

次に、賃金の考え方ですが、これは労働基準法第11条に規定している「賃金」のことを指しています。

つまり、賃金や給与、手当、賞与などの名称にかかわらず労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものを含みます。

ただし、退職手当と通勤手当については対象外となっています。

この賃金の総額と人員数を男女別に計算して、男性労働者の賃金の平均と女性労働者の賃金の平均の額の割合を示したものが、男女の賃金の差異となります。

ですが、単に数字を公表しただけでは、男女の賃金の差異が大きいと、「あ、この会社は男女で賃金に差を設けているんだ」と誤解されかねません。

では、どのように自社の実情をPRすればいいのでしょうか。

 

 

数字だけでなく会社の実情を正しくPRするには?

 

 

男女の賃金の差異は、数字が小さければ良く、大きいとダメと簡単に割り切れるものではありません。

でも、数字を見た人はそれだけで判断してしまう可能性があるので、自社の実情を正しく知ってもらうために「説明欄」を活用しましょう。

説明欄で、自社の実情を説明したり、より詳細な情報を追加することができるのです。

たとえば、男女の賃金の差異が大きい理由として、女性の新卒採用強化の取組みを行い、その結果、新卒の女性労働者が多数入社したことで、全体で見れば低賃金の女性労働者数が増加した、と説明すれば、この会社は女性活躍推進に力を入れているのだということを理解してもらいやすくなります。

また、将来的に時系列で男女の賃金の差異を公表し、差異が改善できていることをアピールできれば、女性の活躍が進んでいる会社であると説明することもできます。

しかし、根本的な問題として、どのように男女の賃金格差を縮めていけばいいのでしょうか?

 

 

男女の賃金格差を解消するために必要なこと

 

 

男女の賃金格差をなくしていくためには、まずその原因を探ることが必要となります。

一般的には、男女の平均勤続年数や管理職の比率が影響していることが多いです。

雇用者に占める女性の割合は4割を超えていますが、その半分以上は非正規雇用労働者です。

また、管理職以上の女性の割合は1割程度になっています。

この原因の一つとして、第一子の出産を機に退職する女性が多いことが挙げられます。

で、子育てがひと段落してから就職活動したものの、非正規で採用されることが多いことが、男女の賃金格差が広がっているのが要因の一つです。
したがって、女性労働者に対しては、出産や育児があっても可能な限り長く働き続けることができる職場環境を構築し、女性管理職を育成する取り組みが不可欠となります。

 

合わせて、改正された育児介護休業法に則り、男性の育児休業を促進することで女性労働者の負担を軽くすることも大切です。

このように、男女の賃金の差異を解消するためには、総合的な取り組みが必要になりますので、ぜひお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。

 

 

 

プロフィール

社会保険労務士 山口善広

ひろたの杜 労務オフィス 代表(https://yoshismile.com/

営業や購買、総務などの業務を会社員として経験したのち、社会保険労務士の資格を取る。いくつかの社会保険労務士事務所に勤務したのち独立開業する。現在は、労働者や事業主からの労働相談を受けつつ、社労士試験の受験生の支援をしている。

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