【専門家の知恵】改正道路交通法施行規則 2023年12月から 「アルコール検知器の使用義務化」が追加に。負担増への4つの工夫

公開日:2023年11月23日

<寿限無経営コンサルティング 福田惠一/PSR会員>


2022年4月・2023年12月施行のアルコールチェック義務化対応で、直行直帰出張の多い会社では、電話対応のための人員確保、時間外手当支給等に大きな負担が発生する場合があります。しかし、飲酒運転撲滅への協力は会社として不可欠です。そのため、できるだけ負担を増加させずに義務を果たすための工夫について考えます。

 

1. アルコールチェック義務化の内容

2022年4月1日から改正道路交通法施行規則が順次施行され、安全運転管理者の選任が必要な事業所では、次の業務が追加されました。

  1. 2022年4月1日から追加された安全運転管理者の業務
    ① 運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること。
    ② 酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること。

  2. 2023年12月1日から追加された安全運転管理者の業務(※)
    ① 運転者の酒気帯びの有無の確認を、アルコール検知器を用いて行うこと。
    ② アルコール検知器を常時有効に保持すること。

※当初、2022年10月から予定されていたアルコール検知使用による酒気帯び確認は、アルコール検知器の供給が間に合わないことから、当分の間延期されていましたが、2023年12月1日から義務化が開始されることになりました。

 

2. 飲酒運転規制の厳格化とその背景

もともと日本は、道路交通法が整備された1960年前までは、飲酒運転に対して罰則はなく、飲酒に対して比較的寛容な国柄でした。

  1. 飲酒運転による重大事故の発生
    しかし、1999年には、東名高速で飲酒運転常習者のトラック運転手により、夫婦子供4名のうち子供2名が死亡する事故が発生しました。また、2006年には、福岡市で、男性の飲酒運転により追突された自動車が博多湾に転落し、子供3名が死亡するといういたましい事故もありました。これらは、マスコミにも大きく取り上げられました。更に、2018年にも、飲酒運転でかつスピード違反の運転によって、4名の死亡事故が発生しました。

  2. 規制厳格化の流れ
    ・1960年の道路交通法の整備により、呼気1リットルに対し0.25㎎以上の状態での運転は禁止されました。ただ、0.25mgというのは、心肺機能に影響が出るほか、運動能力や認知能力にも相応の影響が出るとされる水準です(人による違いはあります)。
    ・1990年代になると、世をあげて「バブル時代」。夜遅くまでの飲酒後や、ゴルフ場での宴会後の運転が少なからず見られました。そのような風潮の下、悪質な飲酒運転事故も増加したため、2002年、2007年、2009年に、呼気1リットルにつき、0.15㎎以上の状態を罰則の対象とし、加えて運転者のみならず飲酒運転に同乗した人、酒を飲んでいると知りながらその人に運転をさせた人、自動車を運転すると知っていながらその人に酒を提供した人も罰則の対象となりました。

 

3. 2022年改正による会社の負担増

これらの背景を踏まえ改正法では、安全運転管理者に目視で運転者の酒気帯びの有無を確認する義務が課せられました。社員が出社後、自動車で営業活動等に出てその後帰社する場合であれば、安全管理者の確認に大きな負担が増えることはありません。悩ましいのは、直行直帰や出張の場合です。

  1. 直行直帰や出張の場合は、一般的に早朝、深夜、または休日等所定労働時間外での確認になります。それを、「リアルタイム」に「携帯電話などで声を聞くこと」で実施することが求められています。これは、アルコール検知器導入後も同様です。従って、保有台数が多く直行直帰などが多い会社では、運転開始終了時の運転者からの電話を受けるのは大きな負担になります。

  2. 一方で、厚生労働省は「働き方改革」として、時間外の上限規制を強めており、会社は必至でそれに答える努力をしています。筆者が2~3の労働基準監督署に、この電話を待つ時間や受ける時間が「労働時間」、「手待ち時間」、「待機時間」、「指揮命令下にない時間」のいずれに当たるかを確認しましたが、状況次第で見解が分かれるとのことでした。もし、労働時間だとすれば、かなりの時間外労働の負担が、労使ともにかかってきます。たとえ確認時間はわずかであっても、受ける側の拘束感は免れません。

 

4. 直行直帰出張時の負担増に対する工夫

以上を踏まえて、会社として以下のような工夫が考えられます。

記録表の
フォームの工夫

1年間保存すべき記録表のフォームを、従来から義務付けられている「運転日誌」と合体させる。
このフォームは、警視庁、各県警などのHP上でも例示されており、自社に合わせた修正をして使用することができます。

記録表の
入力方法の工夫
上記の記録表をExcel等で作成し、紙に落として使用する場合が一般的と思われますが、紙で使用すると確認の記録が後日にならざるを得ません。そこで、記録表自体を社内イントラ上に置き、スマホまたはPCで書き込みができるようにすれば負担は減少します。
確認者を
増やす工夫
アルコールチェックの確認は、安全運転管理者がしなければなりませんが、他の社員が安全運転管理者の補助者として行うことは可とされており、例えば運転者や総務担当者が交代で行なえば、一部の社員に負担が集中することを回避できます。
時間外労働、
及びその手当に
関する工夫

始業前時刻での確認対応時間、終業時刻から電話がかかるまでの待ち時間、その対応時間等が、時間外労働とみなされる可能があります。時間外上限規制の順守や時間外手当の増加を抑える必要がありますので、会社の実態を踏まえて以下の工夫が考えられます。

  • 確認のため時間(1ヶ月間の合計時間)は、労働時間と認識することが原則ですが、1回1回は短時間であり、労使協議の上、若干の「オンコール手当」としての支給額を決めて対応すること。
  • 終業時刻から電話がかかるまでの時間は、社員が自由に使える時間とする。そのために、電話対応を当番制にして、運転者が電話したときに最初の当番者が電話に出ない場合は、次の当番者に電話するように決めて、電話に出ることを義務化(拘束)しない体制とすること。
  • 休日の場合も、同様に当番制とする。 

 

最後に

  • アルコールチェックの実態を日々会社が見届けることは不可能です。しかし、記録表をそのまま、ただ1年間保存するだけでは形がい化する危険性があります。
  • 知床観光船事故のように、実際に事故が発生すると「航海日誌」等が厳しくチェックされ、会社の監督責任を問う根拠とされます。
  • いざ、飲酒事故が発生した場合、「形だけ整えておけばよい」という実態だったと認定されると、厳しく責任追及されることを肝に銘じ運用するためには、会社が必要な頻度でチェックの実態を抜き打ち検査することが必須です。

 

プロフィール

福田 惠一
寿限無(じゅげむ)経営コンサルティング代表

金融機関にて営業・融資を担当後、同総合研究所で人事金制度構築コンサルの経験を積み、退職後「寿限無経営コンサルティング」を開業。上場会社総務顧問も経験。経営の観点と社員の双方にとっての望ましい労使関係構築支援のため、人事・賃金・考課制度の整備、人事労務トラブル対応、紛争予防のための社内規程整備、マネジメント研修・ハラスメント研修等社員各層への研修、各種助成金申請支援等に注力。

 

 

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