【専門家の知恵】あなたの会社に労基署の足音が??違法な残業は会社の致命的なイメージダウンになるかも、、、

公開日:2021年8月20日

<ひろたの杜 労務オフィス 代表 山口善広/PSR会員>

 

 令和2年11月に厚生労働省で「過重労働キャンペーン」の名のもと、9,000余りの事業場に対して監督指導が行われ、令和3年5月にその結果が公表されました。

 内容としては、違法な時間外労働があったとして約30%の事業場に対して是正勧告書が交付されたのです。

 これは、行政指導ですから、是正勧告そのものに法的な強制力はありませんが、放置しておくと送検され、最悪の場合、労基法第32条違反で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるリスクがあります。

 そんなことにならないよう、労働時間についておさらいをして、残業に対する理解を深めましょう。

 

そもそも労働時間に限度があるの?

 労働基準法第32条には、1日の労働時間は8時間、1週間については40時間を超えて働かせてはならない、と規定されています。

 労働時間は、休憩時間を含みませんので、正味の労働時間です。

 ただ、常時10人未満の労働者が働いている事業場で、
・商業(例:ショップ、美容院など)
・映画・演劇業(映画の制作は除きます)
・保健衛生業(例:診療所、薬局など)
・接客娯楽業(例:飲食店や旅館など)
の業種の場合は、週44時間まで大丈夫です。

 ここでいう常時10人未満というのは、正社員だけでなく、パートやアルバイトの方も含みますので、たとえ、週1回のアルバイトの方でも臨時雇いでなければカウントする必要があります。

 そして、1日の労働時間の考え方ですが、たとえばコンビニなどのように、夜間の仕事の場合で、日付をまたぐ時は、2日間の労働ではなく、働き始めた日からカウントした1日の労働となります。

 つまり、夜の10時から働く場合は、1時間の休憩時間を入れて翌朝7時までの8時間労働が限界ということです。

 ここで気をつけなければならないのが、労働時間が1日8時間、1週間で40時間(一部業種では44時間)を超えた瞬間に労働基準法第32条違反になるということです。

 しかし、現実的には残業がない会社の方が少ないかもしれません。

 そうなると、日本中の会社が労基署から是正勧告を受けてしまうことになるということになるかというと、実は、ある書類を労基署に提出すれば労働基準法違反に問われない制度があるのです。

 それは、会社側と労働者の代表が残業時間について話し合って協定を結んで労基署に届け出ればオーケーというものです。

 これを36協定(サブロク協定)というのですが、一体どういうものなのか見てみましょう。

 

36協定とはどういう内容になっているのか

  36協定の「36」というのは、労働基準法第36条のことを指しています。

 36協定がどういう内容なのかというと、使用者と労働者の代表が、残業に関する協定(労使協定)を結んで、労基署に届け出れば、1日8時間、1週間40時間を超えての残業や休日労働をすることができるようになるのです。

 これは、事業場ごとに労使協定を結ぶ必要があるので、複数の店舗などがある場合は、店舗ごとに労使協定の締結と労基署への届出が必要になります。

 また、労働者の代表についても、投票や挙手などの民主的な手段で決定されていることが条件になっています。

 つまり、使用者の意向で選出された労働者代表は無効になってしまう可能性がありますから注意しなければなりません。

 では、具体的に労使協定でどのような内容を決めるのかというと、「1日」、「1ヶ月」、「1年」のスパンで見た時の残業時間の上限や、休日労働の回数などが主な内容となっています。

 原則として、1ヶ月スパンでの残業時間の上限は45時間、1年では360時間となっていて、1ヶ月スパンで見た場合に、残業時間と休日労働の合計は100時間未満である必要があります。

 また、2ヶ月から6ヶ月単位の平均を取った時でも80時間を超えないことが条件となっています。(ちなみに、建設業や、運送業のドライバーさん、医師などの方々についてはこれらの限度時間は適用猶予となっています(令和3年現在)。)

 「いやいや、ウチは忙しいから残業を1ヶ月45時間に抑えるなんてムリだよ」という声も聞こえてきそうですが、どうしても突発的なイベントが発生した場合で上記の限度時間を超える可能性がある場合は、特別条項として、別途残業時間の限度を設定することができます。

 この特別条項の上限とは、1年に6回までを限度に、1ヶ月の残業時間と休日労働を合わせた時間を100時間未満に設定することができます。

 ただし、1年スパンで見たときに残業時間が720時間を超えることはできません。

 と、このように残業や休日労働についての36協定を結んで労基署へ提出するだけでも相当な手間と時間がかかる可能性があります。

 しかも、36協定を結んで届出をしていても、設定した時間を超えると労働基準法違反に問われてしまうのですから、慎重に行う必要がありますね。

 不明点は、管轄の労基署に相談されることもできますが、人事労務のプロである社会保険労務士に一度ご相談され、36協定を含めた労務管理を点検されることをお勧めします。

 

プロフィール  

社会保険労務士 山口善広

ひろたの杜 労務オフィス(https://yoshismile.com) 代表

 

 

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