「管理職」は、法人組織の運営におけるキーパーソンです。部下を率い、経営目標を達成するという重い責任を担っています。そのため、管理職が目標達成に直結する営業や製造などの知識・能力の習得に強い関心を持つのは、極めて自然なことといえるでしょう。
一方で、人事労務に関する知識については、人事担当部署や経営者の役割であり、自分には関係ないものだと捉えがちです。確かに、労働基準法(以下「労基法」という)を中心とする労働法制は、労働契約上弱い立場にある労働者を保護することを目的としています。そのため、労働法制を守ることは目標達成の妨げになるだけであり、学ぶ必要はないと考えてしまう管理職も少なくありません。
しかし、その結果として、無自覚のうちに法令違反を犯し、管理職自身が責任を問われるだけでなく、企業経営そのものを危機にさらしてしまうケースも現実に起こっています。
管理職に求められるのは、労働法制を軽視することではなく、むしろ正しく理解し、適切に活用することで組織力を高めていく姿勢です。本講座では、そのために管理職が身につけておくべき「現場で使える、活きた人事労務の知識」を体系的に学んでいただくことを目的としています。
第1回目のテーマは、採用に絡む「労働契約の基本」です。以下の5つの観点から、前編・後編に分けて解説していきます。
採用面接上のコンプライアンス
<事例>
高卒で採用した新人社員。試用期間を経過した頃から、遅刻が増え出し、ライン作業中に居眠りをすることが見受けられるようになりました。
本人に注意をすると、「実は」と言うことで、中学校時代からADHD(注意欠如多動症)として心療内科の治療を受けていることを明かしました。
作業には切断作業等危険な工程があり、労災事故も発生しかねないリスクがあります。ADHDとしての特性があるため、最適な部署を見つけるためいくつも作業現場を変更しました。
もし、採用面接時に病歴について申告を受けていれば、配属時にもっと配慮することができたはずです。
<法的な考え方>
そもそも、採用の可否は大きな裁量権をもって会社の経営判断で決めることができます。採用面接は、社員が採用後会社の求める能力を発揮できるかどうかを見極める重要な機会です。
ただ、そのためになんでも会社都合で質問して良いわけでなく、採用面接上のコンプライアンスに配慮することが必要です。
>>>第1回(後編):労働条件通知書・試用期間・業務委託契約で理解しておくべきポイント
プロフィール
寿限無(じゅげむ)経営コンサルティング 代表 福田惠一
金融機関にて営業・融資を担当後、同総合研究所で人事金制度構築コンサルの経験を積み、退職後「寿限無経営コンサルティング」を開業。上場会社総務顧問も経験。経営の観点と社員の双方にとっての望ましい労使関係構築支援のため、人事・賃金・考課制度の整備、人事労務トラブル対応、紛争予防のための社内規程整備、マネジメント研修・ハラスメント研修等社員各層への研修、各種助成金申請支援等に注力。
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