労働者派遣は、派遣元と雇用契約を結び、それと異なる派遣先が指揮命令を行う仕組みであり、労働者の保護のため多くのルールが定められています。
その中で「労働契約申込みみなし制度」は、違法派遣があった場合に派遣先が労働契約を申し込んだものとみなす重要な規制です。
派遣先は予期せぬ直接雇用を負う可能性があるため、禁止業務への派遣など5つの違反類型に特に注意を払う必要があります。
労働者派遣の基本
今回のトピックである「労働契約申込みみなし制度」を正しく理解していただくために、労働者派遣について改めて整理したいと思います。
労働者派遣とは、ある会社(派遣元)が雇用する労働者を、別の会社(派遣先)の指揮命令の下で、その別の会社のための労働に従事させることをいいます。ここでの派遣元、派遣先そして派遣労働者の三者の関係は、次のとおりとなります。
(ア) 派遣元と派遣労働者との間には雇用契約が締結される
(イ) 派遣元と派遣先との間には労働者派遣契約が締結される
(ウ) 派遣先は派遣労働者を指揮命令する
出典:厚生労働省リーフレット「派遣で働くときに特に知っておきたいこと」
労働者派遣を派遣先から見ると、直接の雇用関係を結んでいない別の会社の労働者に自社へ来てもらい、その労働者に対して指揮命令をして働いてもらう仕組みということになります。
契約によって一方の労働者を他方の企業で働かせるわけですから、派遣元と派遣先で使用者としての責任をきちんと分担しておく必要があります。労働者に対しては、雇用契約の相手と指揮命令の出どころが異なるため、使用者から不当な扱いを受けないよう保護を図る必要があります。
このようなことから、労働者派遣という働き方に対しては、法律などによって数々のルールが定められています。また、労働者派遣を事業として行うためには厚生労働大臣の許可が必要となります。
「労働契約申込みみなし制度」とは何か
>>>派遣先も要注意 違法派遣が招く直接雇用義務 ~労働契約申込みみなし制度を正しく理解する(後編)~
プロフィール
大塚陽太郎
大塚社会保険労務士事務所(https://www.sr-otsuka.tokyo/) 社会保険労務士
約30年間、厚生労働省にて雇用の安定に向けた取組に多様な立場で関わる。コロナ禍での技能実習生の援助や、労働者派遣事業・職業紹介事業の指導監督を通じ、第一線の課題を把握しつつ事業適正化に取り組む。障害者雇用の制度運営や、職業訓練施策の企画にも携わる。
令和7年3月に厚労省を早期退職し、5月に社会保険労務士事務所を開設。オーダーメイドでの支援、経営者・従業員がともに輝く職場づくり、丁寧・迅速がモットー。