【専門家の知恵】【社長の年金】第1回 社長はどんな年金をもらうのか

公開日:2018年7月26日

【社長の年金】第1回 社長はどんな年金をもらうのか

<コンサルティングハウス プライオ 大須賀 信敬/PSR会員>

 

 「将来、自分はどんな年金を受け取ることになるのか」。企業・組織のリーダーを務める立場であれば、しっかりと理解しておきたいものである。しかしながら、日本の年金制度は極めて複雑で、難解である。果たしてリーダーを務めた人たちは、将来、国からどのような年金を受け取ることになるのだろうか。

 

個人オーナーと法人の代表取締役で異なる加入制度

 国が用意をした年金制度を公的年金制度と呼ぶ。現在、公的年金制度は国民年金と厚生年金保険という異なる2種類の制度が運営されており、法人化された職場を率いる代表取締役と職場を法人化していない個人オーナーとでは、加入制度が異なってくる。 このような加入制度の相違が、将来受け取る年金額に大きな影響を与えることになる。 

 原則として、国民年金は立場の違いにかかわらず全ての人が加入する公的年金制度である。これに対して、厚生年金保険は「雇われて働く立場の人」のみが加入する公的年金制度として設けられている。従って、個人オーナーの場合には国民年金のみに加入し、厚生年金保険に加入することはない。個人オーナーは「雇われて働く立場」ではないからである。

 これに対し、法人の代表取締役は原則として国民年金と厚生年金保険の両方の制度に同時加入することになる。国民年金は立場の違いにかかわらず全ての人が加入するのだから、法人の代表取締役であっても加入が法律上の義務となる。また、代表取締役は「雇われて働く立場」ではないが、年金法では「代表取締役は会社に雇われているようなものである」との立場が採用されているため、厚生年金保険の加入対象にもされている。

 しかしながら、法人の代表取締役の公的年金加入に関しては、誤った理解が非常に多い。たとえば、「厚生年金保険は社員が入るものであり、代表取締役は加入する必要がない」「代表取締役は厚生年金保険にのみ加入し、国民年金には加入しない」などである。いずれも、法解釈の誤りや年金制度の理解不足に起因する初歩的な誤解である。

 

個人経営の法人化は年金受給額を増やす

 以上のとおり、同じように組織のリーダーという立場であったとしても、国民年金だけに加入する個人オーナーと国民年金と厚生年金保険の両方に加入する法人の代表取締役という違いが存在している。つまり、リーダーの中には「1つの制度」だけに加入する人と、「2つの制度」に加入する人がいるというわけである。実はこの加入制度数の違いが、将来の年金受け取りに大きな影響を及ぼすことになる。

 年金制度は加入していた制度からお金が支払われる仕組みである。従って、加入していた制度が2つであれば、2つの制度から年金を受け取ることができるが、加入していた制度が1つであれば、1つの制度からしか年金を受け取ることができない。当然、複数の年金制度から受け取れるほうが収入面で有利になるため、リタイア後も経済的に安定する。その面では、個人オーナーに比べて法人の代表取締役は圧倒的に有利である。

 従って、起業をする場合には、リタイアするまで個人経営の立場を貫くか、それとも法人化を図るかで、年金の受け取りに大きな違いが発生する。たとえば、新たにコンサルティング業を開業したとする。この場合、個人経営の事務所であれば、個人オーナーが加入する年金制度は国民年金だけだが、法人経営の事務所にした場合には代表取締役が加入するのは国民年金と厚生年金保険の2つになる。同じコンサルティング業を生業にしているにもかかわらず、加入する年金制度の数が異なり、その結果、将来、受け取る年金額に大きな差異が生じることになる。

 個人経営の組織の法人化を検討する材料はさまざまあるが、「リーダーの年金」という視点も見逃せない要素である。その意味では、公的年金制度は起業後の組織戦略にも大きな影響を与えることになるのである。

 

プロフィール

マネジメントコンサルタント、中小企業診断士、特定社会保険労務士 大須賀 信敬
コンサルティングハウス プライオ(http://ch-plyo.net)代表
「ヒトにかかわる法律上・法律外の問題解決」をテーマに、さまざまな組織の「人的資源管理コンサルティング」に携わっています。「年金分野」に強く、年金制度運営団体等で数多くの年金研修を担当しています。

 

 

「社会保険の手続き」関連記事

「日常の労務手続き」に関するおすすめコンテンツ

ピックアップセミナー

東京会場 2024/04/23(火) /13:30~17:30

【会場開催】はじめての給与計算と社会保険の基礎セミナー

講師 : ※各日程をご確認ください

受講者累計5,000人超!2009年から実施している実務解説シリーズの人気セミナーです!
給与計算と社会保険について基礎からの解説と演習を組み合わせることで、初めての方でもすぐに実務に活用できるスキルが習得できます。

DVD・教育ツール

価格
31,900円(税込)

経験豊富な講師陣が、初心者に分かりやすく説明する、2023年版の年末調整のしかた実践セミナーDVDです。
はじめての方も、ベテランの方も、当セミナーで年末調整のポイントを演習を交えながら学習して12月の年末調整の頃には、重要な戦力に!

価格
7,150円(税込)

本小冊子では、ビジネスマナーに加え、メンタルヘルスを維持するためのコツ、オンライン会議やSNSのマナーのポイントも紹介しています。
また、コンプライアンス(法令順守)も掲載。ビジネスパーソンとして肝に銘じておきたい「機密管理」、働きやすい職場づくりに必要不可欠な「ハラスメント防止」について、注意点を解説しており、これ一冊で、一通りのマナーの基本が身に付くようになっています。

おすすめコンテンツ

TEST

CLOSE