【専門家の知恵】「男性版産休」が来年からスタート!育児・介護休業法改正のポイントについて解説

公開日:2021年8月5日

<社会保険労務士法人SOPHIA代表 松田法子/PSR会員>

 

 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)及び雇用保険法の一部を改正する法律」が、6月9日に公布され、2022年4月1日から段階的に施行される。
 男性の育児休業取得促進を目的とし、子どもの誕生直後8週間以内に最大4週間の休みを取得できる「出生時育児休業(男性版産休)」の新設が柱となる。
 男性の育児休業取得が増えることが予想されるが、企業としてどう取り組んでいくか。育児・介護休業法改正の内容やポイントについて解説する。

 

育児・介護休業法改正のポイント

  育児・介護休業法は最初、「育児休業法」として1992年に施行されたが、1995年に「育児・介護休業法」に改正され、時代の移り変わりに合わせて改正が繰り返されてきた。

男性の育児休業取得率については、「少子化社会対策大綱」(2020年5月29日閣議決定)において、2025年には30%にすることを目標としているが、厚生労働省の「令和元年度雇用均等基本調査(事業所調査)」によると、7.48%にとどまっており、男性の育児休業取得率向上はかねてからの課題であった。

改正育児・介護休業法では、男性の育児休業取得の促進などを図るため、子の出生直後の時期に柔軟な育児休業を取得できるようになるほか、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、個別の周知・意向確認の措置などが企業に義務付けられる。

改正のポイントは次のとおりだ。

 

 1.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(施行期日:公布日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日)

男性労働者が、子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得できる。(出生時育児休業)女性の産後休業が産後8週間であることから、男性版産休とも言われている。現行の育児休業制度との相違点は次のとおりである。

【現行の育児休業と新制度の違い】

表

 

 2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(施行期日:2022年4月1日)

次の措置を講ずることが事業主に義務付けられる。

     育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置

     妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置

専用の相談窓口の設置や、制度周知用の案内文書、対応マニュアルを用意しておくと、対応がスムーズだ。

 

3.育児休業の分割取得(施行期日:公布日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日)

育児休業について(1.の休業を除く。)分割して2回まで取得することが可能となる。

分割しての育児休業の取得が可能となることから、労働者毎での対応が必要となってくる。

 

4.育児休業の取得の状況の公表の義務付け(施行期日:2023年4月1日)

常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得の状況について公表を義務付けられる。

 

5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件が廃止される。

ただし、労使協定を締結した場合には、今までどおり対象から除外することを可能となることから、労使協定の見直しもしておきたい。

 

 

プロフィール

社会保険労務士 松田法子

社会保険労務士法人SOPHIA代表
 (https://sr-sophia.com/)

 

 

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