【専門家の知恵】デジタル化の推進により社員のキャリア形成と企業のキャリア支援が今後の鍵に

公開日:2022年5月20日

<社会保険労務士法人出口事務所代表社員 出口裕美/PSR会員>

 

  新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、デジタル化が推進し、多様な働き方も増えてきました。そして、この大きな変化に対応できない企業は生き残れない時代になりました。今後、企業は何をしていけばいいのでしょうか。

 一方で、社員もキャリア形成を自分自身で考えないと、不安定な時代を生き抜くことはできなくなりました。今回はキャリア形成について考えてみたいと思います。

 

「キャリア形成」とは

  キャリア形成とは、仕事や人生のなかで継続して経験を積んでいくことを言います。働く意味や人生の目標を明確にした上で、自分が今、何をするべきかを考えながら、日々仕事に向き合うことです。

 最近の採用活動では、学生など求職者の多くから、社内での教育制度やキャリア支援についての質問が寄せられます。それだけ、仕事を通じて能力向上・成長への希望が強いといえるのではないでしょうか。

 日本生産性本部「第7回働く人の意識に関する調査」の内容を見てみましょう。この調査は、2021年10月に調査された20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている者(雇用者=就業者から自営業者、家族従業者等を除いたもの)1,100名を対象に実施されたものです。
 「図 年代別・キャリアプランの有無」を見ますと、キャリアプランを思い描いている者は、20代・30代で多く、40代以上は20代・30代に比べると少ないです。社員達が思い描いているキャリアプランに企業はどれだけ支援できるかが今後の成長のポイントではないでしょうか。

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 参考資料:(公財)日本生産性本部「第7回働く人の意識に関する調査」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/7th_workers_report.pdf

 

企業がキャリア支援をするためにするべきこと

 実際に働いている社員は、自らの能力向上・成長についてどのように実感しているのでしょうか。

 日本生産性本部「第7回働く人の意識に関する調査」の「図 仕事能力向上を実感したきっかけ」という質問への回答状況を見ますと、「仕事能力の向上を実感したことが無い」が43.0%で一番多いことが分かりました。もちろん、実際には能力が向上していても、本人が気づかない場合もあるでしょうし、控えめな評価をしていることもあるでしょう。しかしながら、仕事能力の向上を実感したことが無い上司にキャリアプランを思い描いている部下は物足りなさを感じるに違いありません。
 企業としては、積極的に、従来よりレベルの高い業務を担当させたり、従来とは分野の異なる業務を担当させたり、従来とは違うツール等を使うように社員に挑戦する機会を与える必要があります。

 

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 参考資料:(公財)日本生産性本部「第7回働く人の意識に関する調査」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/7th_workers_report.pdf

 一方で、これからの仕事は個々の社員の専門性が細分化されてきており、業務も多様化してきています。また、RPA(ロボットによる定型業務の自動化)やAI(機械に人間と同じような知能を持たせたソフトウエア)の普及により社員に求められる能力はRPAやAIが対応できない業務に限られていきます。

 また、2015年12月に公表された「野村総合研究所レポート」によりますと、「10~20年後に、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高い。」と言われております。  その他にも、2018年に経済産業省が警告した「2025年の崖」が起こると言われています。「2025年の崖」とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートで「DXが進まなければ2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性も高い」と警告したもので、DX取り組みへの重要性を唱えています。

参考資料:厚生労働省「技術革新が労働に与える影響について (先行研究)」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000186903.pdf

参考資料:経済産業省「DXレポート」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

 これらのことから、企業にはキャリア支援により、IT分野など技術が必要な職種や人間的な付加価値を求められる職種、コミュニケーション能力が必要とされる仕事に対応可能な社員を増やしていくことが求められているのです。

 では、企業は具体的に何をすべきでしょうか。
 人材育成方針の明確化、キャリア支援体制の整備、キャリア形成の動機づけ、能力開発機会の提供、評価・人事等への反映、さらに、これらを支える職場環境の整備等を行うことです。そうすることで、人材の定着や従業員の意識向上が、組織の活性化につながり、生産性の向上への寄与等の効果が期待されます。
 目標管理・キャリアプランなど、これから作るまたは現在のものを見直しする場合は、さまざまな人事評価システムを参考に、人事評価システムに合わせて制度化することをお勧めします。

 

プロフィール

特定社会保険労務士 出口裕美 

社会保険労務士法人出口事務所(https://www.deguchi-office.com/)代表社員

04年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中。

 

 

 

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