ストレスチェック実施方法のポイント解説

公開日:2015年4月7日

実施の流れ

s-check

  1.  会社は労働者に対し、医師・保健師等によるストレスチェックを実施します。
  2. 医師・保健師等からストレスチェックの結果が労働者に直接通知されます。
    その際に労働者がストレスチェック結果の会社への通知に同意するかを確認し、同意があった場合のみ会社にも結果が提供されます。
  3. ストレスチェック結果が高ストレスと評価された労働者で、医師との面接指導を希望する場合は、会社の人事担当者等にその旨を申し出ます。(面接の申出をもって、ストレスチェックの結果を会社に提供することに同意したことになります。)
  4. 希望の申出を受け、会社は医師に面接指導の実施を依頼し、医師は労働者に面接指導を行います。
  5. 面接指導後、会社は医師の意見を聞き必要に応じその労働者の就業上の措置を実施します。

 

実施前

・ストレスチェック実施前に会社がやっておくべきこと
衛生委員会において実施目的や実施体制、実施方法、情報の取り扱い等の審議・確認を行い、法令等に則った上で会社での取扱いを内部規定として策定するとともに、説明や情報提供によりあらかじめ労働者に周知する必要があります。

・労働者に周知すべきストレスチェックの目的
「労働者自身によるセルフケア及び職場環境改善を通じメンタルヘルス不調の未然 防止を図る一次防止を目的としたものであって、不調者の発見が一義的な目的ではないという法の目的の明示」とされています。

ストレスチェック実施

・ストレスチェックの実施は1年以内ごとに1回以上
「1年以内ごとに1回以上」実施し、また実施にあたっては基本「調査票」によることとし、対面での実施はふさわしくないとされています。

一般定期健康診断と同時に実施することも可能ですが、その際は、労働者に定期健康診断は受診義務があるがストレスチェックには検査を受ける義務がないこと、ストレスチェックの検査結果は本人に通知し、本人の同意なく会社に通知されないことに留意し、労働者がストレスチェックの調査票と一般定期健康診断の問診票のそれぞれの目的や取扱いの違いを認識できるようにしておく必要があります。

・ストレスチェック実施義務の対象となる労働者の範囲は定期健康診断と同じ
  一般定期健康診断の対象者と同じく、常時使用する労働者になります。具体的には、期間の定めのない契約により使用される者(期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者及び更新により1年以上使用されている者)であって、その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の者になります。例えば、通常の労働者の1週間の所定労働時間数が40時間の会社で、1週間の労働時間数が30時間以上のパート・アルバイト(1年以上勤務)は対象となります。

・対象の労働者にストレスチェックの受検を義務付けることはできません
 ストレスチェックの受検は労働者に義務付けられていません。そのため、受ける受けないは労働者による選択となります。もちろん受検を拒否した労働者に対し、受けない事を理由に会社が解雇や降格などの不利益な取り扱いを行ってはいけません。
 ただ、会社が受検率の向上のために個々の労働者の受検の有無の把握と受診勧奨を行うことは、受検しない労働者への不利益取扱いが行われないことを前提に可能とされています。

・ストレスチェックの実施主体は会社でなく、医師や保健師
  ストレスチェックの実施は、医師、保健師のほか一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士が主体となって行うこととされています。つまり社長や人事担当者など労働者の人事権を持っている人は、ストレスチェックの実施者にも、また調査票や結果データの入力・出力や個人の結果の保存などのストレスチェックの実施の事務担当者にもなれません。実施者の指示の下、実施事務をサポートする担当者(「実施事務従事者」)を置く場合も、①人事権のない者にすること、②所属長にもストレスチェックの内容や結果等を漏らしてはならないことの2点をはっきりさせておきましょう。

・ストレスチェックの項目
最低限必要な要件として「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」及び「周囲のサポート」の3領域に関する項目を全て含まなければならないとしています。
各企業においては、この要件と一定の科学的根拠を基に、国が示す標準的な項目「職業性ストレス簡易調査票」(57項目の調査票)PDFを参考にしつつ衛生委員会で審議の上、各々の判断で項目を選ぶことができます。その際は「性格検査」や「適性検査」を目的で実施する項目は含めないこと、うつ病等の精神疾患のスクリーニングではないことに留意して項目を選定する必要があります。

・ストレスチェック結果の労働者への通知方法は「本人に個別で直接通知」
他人に見られないように封書やメールなどで「労働者に個別に直接通知」する必要があります。その際はストレスチェックの結果のほかに、以下の内容も伝えます。

 ① セルフケアのアドバイス。
 ② 面接指導の対象者であること(高ストレス者に限る)。
 ③ ②の対象者は、会社への面接指導の申出方法。
 ④ 面接指導の申出窓口以外の相談可能な窓口に関する情報提供。

・ストレスチェック結果は労働者の同意がなければ会社へ提供されません
個人のストレスチェックの結果を会社が把握するには、結果を会社に提供することへの労働者の同意が必要になります。その同意の取得方法は実施の都度、ストレスチェックの結果の通知後に、受検者全員に対して、個々人に同意の有無を確認することとされています(面接指導の対象者についても同じ)。つまり、ストレスチェックの実施前又は実施時に同意を取得することや、あらかじめ同意をした労働者だけを対象にストレスチェックを実施することできません。

・ストレスチェック結果の保存は5年間
  ストレスチェック結果は、原則会社が実施者(産業医など)に5年間保存させなければなりません。また、労働者の同意により会社に提供されたストレスチェック結果は、会社に5年間の保存義務があります。

集団分析と職場環境の改善(努力義務)                      

会社はストレスチェック実施後、個人のストレスチェック結果を一定の集団(部、課など)ごとに集計して、その集団の特徴や傾向を分析(「集団的分析」)し、その分析結果に基づき必要な職場環境の改善に取り組むべきとしています。ただ現時点では、この集団的分析の実施と職場環境改善の取り組みは努力義務となっていますが、今後は労働安全衛生法の見直しに合わせて、国は義務化を検討していくとしています。

この集団的分析の結果は、労働者の同意がなくても会社は把握可能です。ただし、分析の単位が少人数の場合には個人が特定されるおそれがあるため、その単位が10人を下回る場合(その集団に所属する労働者数ではなく、実際のデータ数でカウント)には、分析の対象となる労働者全員の同意がない限り、集団的な分析結果を会社は把握できません。集団的な分析結果の保存は5年間になります。

面接指導について                                   

ストレスチェックの結果、高ストレスと評価された労働者が本人の申出により面接指導を希望した場合、会社は医師による面接指導を実施する必要があります。高ストレスと評価されたにも関わらず面接指導の申出を行わない労働者に対しては、結果を把握している医師等の実施者が面接指導の申出を勧奨することができます。

また、本人から面接指導を申出があった場合は、ストレスチェックの結果を会社に提供することについての同意があったものとみなされます。

面接指導後、会社は面接指導をした医師から意見を聴き、必要に応じて就業上の措置を行うこととされています。
※高ストレス者とは…最もリスクの高い者として「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が高い場合高ストレス者と評価されます。(基準は今後示されることになっています)

派遣労働者の取り扱い                             

ストレスチェック制度において派遣労働者の取り扱いは、個人のストレスチェックの実施、結果の通知、高ストレス者への面接指導、必要に応じた就業上の措置は「派遣元」に実施義務があり、個人の結果に基づいた集団的分析と職場環境改善への取り組みは「派遣先」の努力義務とされています。
面接指導の結果、就業上の措置が必要となった場合、努力義務は派遣元に課せられていますが、派遣契約の性質上、実際の措置の実施にあたっては派遣先と連携しつつ、適切に対応する必要があります。

ストレスチェック実施後の行政への報告                        

ストレスチェックや面接指導の実施義務の対象となる会社は、①ストレスチェックの実施時期、②ストレスチェックの対象人数、③ストレスチェックの受検人数、④面接指導の実施人数について労働基準監督署に報告する必要があります。

ストレスチェック制度について罰則はありませんが、実施状況について労働基準監督署に報告する必要があります。つまり、会社は社員の心身の両面に渡って安全配慮していく義務がますます問われることになったと言えます。

労働者に対する不利益取扱いの防止                       

面接指導の申出に対する不利益取扱いは法律で禁止されています。また、以下の行為については法律で禁止されていませんが、行ってはならないとされています。
① ストレスチェックを受けないことを理由とした不利益な取扱い。
② ストレスチェック結果の提供に同意しないことを理由とした不利益な取扱い。
③ 高ストレスと評価された労働者が面接指導の申出を行わないことを理由とした不利益な取扱い。
④ 面接指導の結果を理由とした以下の行為。
・ 解雇
・ 雇用契約の不更新
・ 退職勧奨
・ 不当な動機、目的によると判断される配置転換、職位(役職)変更
・ 労働契約法等の労働関係法令の定めに反する措置を講じること
⑤ 医師の意見と著しく内容・程度の異なる就業上の措置(労働者の不利益となるもの)を講じること。

 

ストレスチェック制度の概要

現役産業医が答えるストレスチェックQ&A

ストレスチェック義務化に関する各専門家の見解

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