
労務問題の本質から考える、人事労務におけるAI活用の“正しい線引き”とは?
AIの急速な進化により、企業実務においても生成AIの活用は避けて通れないものとなりました。
とりわけ、ChatGPTやGeminiに代表される汎用的な生成AIは、情報収集や資料作成、課題整理など、幅広い業務を支援するツールとして急速に浸透しつつあります。
しかし、その一方で、人事労務の領域においては、AIの活用に慎重さが求められます。
労務問題は、法令だけでなく、企業ごとの実情や個別事情を踏まえた判断が不可欠であり、「何が正しいか」の基準が一つではない分野だからです。
こうした特性を踏まえずにAIを活用すると、かえって実務上のリスクを高める恐れもあります。
本連載では、こうした背景を踏まえ、汎用的な生成AIを人事労務の実務に活用する際に押さえておくべきポイントを、実務目線で整理していきます。
単なる活用ノウハウにとどまらず、「なぜ注意が必要なのか」「どのように判断すべきか」といった、労務問題の本質にも踏み込みながら解説します。
AIの活用が前提となる時代において、人事・労務の実務はどのように変わるのか――。本連載が、実務対応のヒントと判断軸の整理につながれば幸いです。
CONTENTS
人事総務の生成AI活用例と注意点 NEW!
AIは労務問題の実務でも非常に有効なツールであることは間違いありません。実際、叩き台作成、要約、論点抽出、パターン分析、比較・想定など、使える場面は想像以上に広いものです。
ただし、ここで大切なのは、AIを「正解を出してもらうための道具」と考えないことです。AIには結論を出させるのではなく、叩き台や判断材料を出させるという使い方が重要になります。
第2回となる今回の記事では、生成AIが人事総務部門の実務でどれほど有益なのか、そして、どのように使うべきかをお伝えします。
企業が押さえるべき対応の視点
ここ数年、生成AIが急速に発展し、多くの企業で導入や活用が進みつつあります。人事労務の実務も例外ではありませんが、AIの話題はどうしても活用術が中心になりがちです。
しかし、人事総務部門の実務においては、AIの普及によって生じる非常に大きな問題が見落とされています。
特に、その傾向は労務問題について顕著です。そこで、本連載では、「AI時代における労務問題への対応実務」をテーマに、企業が何を見誤りやすく、何に備えるべきかを考えたいと思います。
第1回となる今回は、その前提となる問題意識を確認します。
執筆者
小嶋裕司
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所(https://www.festinalentesroffice.com)代表
特定社会保険労務士
就業規則の専門家。企業が抱える人事労務の課題解決のため、その実現に必要な就業規則や関連規程の整備の支援をしている。法令遵守と企業の事情を両立させた現実的な対応を得意とする。生成AIの黎明期である2023年3月から、AI・デジタル講師陣がそろう学習環境下で本格的に生成AIの活用を開始。自らの実務に活用するだけでなく、人事の専門家に向けて「AI時代の労務問題・就業規則」をテーマとした勉強会の講師を務めるなど、新しい時代の人事労務に関する知見を積極的に発信している。










