【社長の年金シリーズ】子供の「年金未納」が社長の財産を棄損する仕組みとは

公開日:2025年7月28日

 

社長の年金シリーズ

子供の「年金未納」が社長の財産を棄損する仕組みとは


<コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀信敬/PSR会員

>>>連載:社長の年金シリーズ

経営者に20歳を過ぎた子供がいる場合、その子供が国民年金保険料を納めそびれていると、親である経営者の財産が差し押さえられてしまうこともあるという。

なぜ、そのような事態が発生するのだろうか。差し押さえを回避する方法はあるのか。今回は、子供の「年金保険料未納」と親である経営者との関係について整理をしてみよう。

「保険料未払い」の子を持つ経営者は財産差し押さえも

20歳になった大学生の子供を養う企業経営者について考えてみよう。その子供は公的年金制度では「国民年金の第1号被保険者」に該当するため、月々の保険料を納める法律上の義務を負う。

現在、国民年金の保険料は月額17,510円(令和7年度)、年間では約21万円である。学生が毎月の保険料を捻出するのは必ずしも容易ではないため、往々にして若年者は保険料納付を怠りがちだ。

国民年金保険料を期限までに納付しない状態を“未納”という。“未納”の月数が増えるほど、将来受け取れる年金額は減額されることになる。

ただし、子供の保険料未納の代償は、本人の年金減額に留まらない。同居する親、つまり経営者の財産が差し押さえられるリスクもあるのである。

 

世帯主に課されている「子との連帯納付義務」

実は、国民年金の第1号被保険者であるこの子供の保険料は、本人のみに納付の義務が課されているわけではない。経営者が世帯主であるならば、経営者にも同居する子供の国民年金保険料を納付する法律上の義務が存している。

つまり、上記のケースでは、子供および親である経営者の両者に保険料納付義務が課されているのである。

このような仕組みを連帯納付義務と呼び、経営者は連帯納付義務者とされる。そのため、子供が保険料の納付を行わないならば、経営者も子供と同等の責任を負わなければならないとされるのである。

国民年金保険料を期限までに納付しない場合、日本年金機構から「催告状」や「督促状」と呼ばれる書面により、納付の請求が複数回にわたって行われる。

それでも納付しなければ、財産の差し押さえが開始されることになる。連帯納付義務者である経営者の財産も、当然に差し押さえ対象とされてしまうのである。

従って、子供の国民年金保険料について本人が納付せずに放置することはもちろん、親である経営者が関心を寄せないことも極めて危険といえるだろう。

 

「保険料の納付を待ってもらえる制度」の利用で差し押さえ回避

経営者が上記のような状況を回避するには、どうすればよいだろうか。一つには、大学生である子に「保険料の納付を待ってもらえる制度」の利用を促すことである。

国民年金保険料を納める義務がある学生は、手続きをすれば納付を待ってもらうことも可能である。学生は学業が本分なので、十分な収入がないのが通常だからだ。

このような制度を「学生納付特例制度」といい、この制度を利用すれば保険料を納めなくても未納扱いにはならない。そのため、保険料の督促を受けることもなく、連帯納付義務者である経営者の財産が差し押さえられることもないのである。

ただし、「学生納付特例制度」は年金の増額には結び付かないため、保険料を納めなかった月数分だけ将来受け取る年金が減額されてしまうことには変わりがない。

従って、老後の年金を漏れなく受け取るには、学生時代に納付を待ってもらった保険料を社会人になってから忘れずに納めることが必要となる。

 

経営者が子供の保険料を肩代わりすることも可能

もう一つの方法は、親である経営者が子供の国民年金保険料を子供に代わって納めることである。

前述のとおり、世帯主である経営者自身にも大学生の子の国民年金保険料を納付する法律上の義務が課されている。従って、親である経営者が子の保険料を負担する行為に何の問題もなく、その結果、経営者の財産差し押さえも回避ができることになる。

国民年金保険料はさまざまな手法で納付が可能であり、「親名義の銀行口座から引き落とす」「親名義のクレジットカードで納める」なども認められている。このような手法を利用すれば、多忙な経営者が子供の年金保険料を納め忘れることもないであろう。

 

保険料を代わりに納めれば経営者自身の「節税」に

さらに、親である経営者が子供の国民年金保険料を子供に代わって納める行為には、大きなメリットが存在する。経営者自身の節税になる点である。

国民年金保険料は、納付額の全額が所得税や住民税の「社会保険料控除」の対象となる。世帯主である親が子供の国民年金保険料を納付した場合には、親の「社会保険料控除」の対象とすることが認められている。そのため、確定申告により経営者自身の所得税・住民税の税負担軽減が可能になるのである。

「成人した子の年金保険料を親が負担する」という行為については、賛否が分かれるかもしれない。しかしながら、子の将来の年金減額や財産差し押さえを回避でき、自身の節税にも繋がるメリットは見逃せないであろう。

20歳以上の学生の子を持つ経営者の皆さんは、この機会に国民年金保険料の納付について親子で話をしてみてはいかがだろうか。

 

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プロフィール

コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀 信敬

(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)

コンサルティングハウス プライオ(http://ch-plyo.net)代表

中小企業の経営支援団体にて各種マネジメント業務に従事した後、組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業までさまざまな企業・組織の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員。


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