<社会保険労務士法人SOPHIA 代表 松田 法子/PSR会員>
出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにすることを目的とし、2022年4月1日から3段階で育児・介護休業法が改正されました。
育児休業取得率は、女性は8割台で推移している一方、男性は、2020年で約13%と女性よりも低い水準であるものの、上昇傾向にあるようです。
しかし、育児休業の取得期間は、女性は9割近くが6か月以上となっている一方、男性は8割が1か月未満となっています。
月末日を含んだ短期間の育児休業を取得するとその月の給与や賞与から控除される社会保険料が免除されますので、短期間の育児休業の際は月末日を含むものが多いようですが、今年、保険料免除制度の改正がありましたので、注意が必要です。
育児休業中の社会保険料はどうなる?
育児休業中の社会保険料については、健康保険法第159条及び厚生年金保険法第81条の2の定めにより、育児休業をする被保険者を雇用する事業主が、保険者等(協会けんぽ等)に申し出ることにより、被保険者・事業主、両方の社会保険料負担が免除されます。
社会保険料が免除される期間は、「育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間」とされ、給与だけでなく賞与の社会保険料も免除されます。
よって、短期間で育児休業を取得する場合、月末を含むか否かで保険料が免除されるか否かが決まるという不公平が生じていました。
特に賞与月においては、給与のみならず賞与についても社会保険料が免除されますので、賞与月の月末1日を休むことで手取りが10万円以上違ってくる、ということもありました。
しかし、2022年10月1日から、育児休業中の社会保険料免除の要件が改正され、その裏技は使えなくなりました。
改正後の育児休業期間中の社会保険料免除制度とは?
これまで、その月の末日が育児休業期間中である場合、育児休業期間中の給与・賞与に係る社会保険料が被保険者本人負担及び事業主負担分ともに免除されていましたが、2022年10月以降は、以下の要件も追加されました。
① 同一月内で育児休業を取得(開始・終了)し、その日数が14日以上の場合
② 賞与に係る保険料については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合に限る。
よって、賞与の社会保険料免除については、今後、1か月以上育児休業を取得しなければ対象となりませんので、厳しくなりますが、給与の社会保険料については、月末時点で育児休業を取得している人に加え、同月に14日以上の育児休業を取得する人も対象となってきますので、要件が緩和されたといえます。
月末は忙しくて休めない場合でも対象となりますし、また、2022年10月以降は育児休業の分割取得も可能になりましたので、各自のタイミングで育児休業が取りやすくなったといえます。
【改正前後のイメージ】
その他、育児・介護休業法の改正の概要について
今回は、育児休業期間中の保険料免除について主に説明しましたが、育児・介護休業法の改正の概要については、以下のとおりです。
【改正の概要】
1.2022年4月1日より
・雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
2.2022年10月1日より
・産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
・育児休業の分割取得
3.2023年4月1日より
・育児休業取得状況の公表の義務化(1,000人超の企業)
厚生労働省のホームページでは、個別周知・意向確認書の記載例や、育児・介護休業等に関する規則の規定例についても確認することができます。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html)