11月は年末調整の季節となります。そこで、年末調整の概要を簡単にまとめてみました。
■年末調整の目的とその対象者
1. 年末調整とは何なのか?
社員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」の提出を受けることで、会社は正しい年間の所得税額を計算します。 この年間の所得税額は、年末調整時点での扶養親族の状況や支払った生命保険料・地震保険料などを考慮して計算されているため、毎月源泉徴収された所得税の合計額とは一致しないのが普通です。 そこで、正しい年間の所得税額よりも毎月源泉徴収された所得税の合計額が多額な場合は税金を還付し、反対に少なければ徴収(支払い)する必要が生じます。 年末調整とは、既に源泉徴収されている所得税額を、正しい年間の所得税額へと還付又は徴収を通じて調整するための手続きと言えます。
2.年末調整の対象者とは?(年末調整の対象となる人)
年末調整の対象者は、基本的には「扶養控除等申告書を提出しており、年間給与総額が2,000万円以下で、年末に在籍する従業員」となります。 年度の途中で採用されて年末に在籍する従業員も対象となります。
■年末調整のよくある誤解
1. 従業員が未成年者の場合、年末調整は不要である?
年末調整は所得税を確定し、精算する手続きです。所得税は年齢に関係なく課税されるため、未成年者であっても年末に勤務している者であれば年末調整を行います。
2.扶養控除等申告書は扶養養親族のいる人だけが提出する?
勤務先の会社で年末調整を受ける必要のある人は必ず提出の必要があります。扶養親族がいるかいないかは関係ありません。
3.従業員が子であり親の扶養親族となっている場合、扶養控除等申告書の提出は不要となる?
親が扶養控除を受けるには、扶養親族である子の所得金額が一定金額以下である必要があります。子の所得金額が一定金額以下であるかどうかを確認するには、子の年末調整をしなければわかりません。 よって、子も勤務先の会社へ扶養控除等申告書の提出をして年末調整を受けなければいけません。また、配偶者控除を受けるにも同様となります。
■所得税の還付または徴収
年末調整手続きで計算した年間税額と毎月源泉徴収された税額の合計額に差額がある場合、会社は従業員に対して所得税の還付(超過税額)または追加徴収(不足税額)をすることになります。
1. 還付となるケース
「年間を通して毎月の給料が同額で、年度の途中で子が生まれたなどして扶養親族が増えた場合」
扶養親族の数は年度末の状況で計算しますが、子が生まれる前までは年度末よりも少ない扶養親族の数によって源泉徴収所得税が計算、徴収されています。 このケースでは、扶養親族が増えるまでの期間は超過徴収となっているため、年末調整での還付が必要となるわけです。
2.追加徴収となるケース
「年間を通して毎月の給料が同額で、年度の途中で子が就職して扶養親族が減少した場合」
年度末の状況により扶養親族の数は決まります。しかし、このケースでは年の途中までは年度末よりも多い扶養親族の数によって源泉所得税を計算、徴収しており、そのため税額が不足する状態となっているわけです。