「年収の壁」対策の実務特集

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「年収の壁」にどう対応する?- 対策・選択肢・実務-

厚生労働省が発表した「年収の壁・支援強化パッケージ」について、特に人材確保に苦労している会社では積極的に情報収集されていることと思います。

しかし、「年収の壁・支援強化パッケージ」は施策そのものが複雑で入り組んでおり、「よくわからない」というのが本音ではないでしょうか。

さらに制度が理解できても、「どう活用したらよいのか」「そもそも自社で活用するメリットがあるのか」「活用するとした場合、最適な選択肢は何か」など、自社の状況を踏まえた深い分析と数年先を見据えた検討が求められます。

本特集では、まずはじめに「年収の壁」対策を検討する前に押さえておきたい社会保険についてワンポイント解説をし、その次に「年収の壁」対策と実務に役立つ専門家の解説記事、セミナーなどの情報を掲載していきます(※随時更新)。

 

◆NEW!最新記事はこちら

【企業向け】あなたの会社はどの施策が使える?「年収の壁・支援強化パッケージ」簡単診断

実務対応のポイント:「年収の壁・支援強化パッケージ」のうち「配偶者手当への対応」とは?

 

【オンデマンド配信】「年収の壁」対策と実務セミナー<全3回>

<第1回>2年先を見据えた人事戦略と「年収の壁」対策 ―人的資本経営の視点で考える-

講師:フォレストコンサルティング経営人事フォーラム代表 松井勇策氏

<第2回>人事初心者でも大丈夫!1時間でわかる「年収の壁・支援強化パッケージ」読み解きセミナー

講師:株式会社ブレインコンサルティングオフィス 鴛尾清美

<第3回>「年収の壁」対応&「2024年10月施行・社会保険適用拡大」実務解説セミナー

講師:株式会社ブレインコンサルティングオフィス 北條孝枝

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<ワンポイント解説>「年収の壁」対策を検討する前に押さえておきたい社会保険

「年収の壁」対策を検討していくにあたっては、まず実務担当者が「年収の壁・支援強化パッケージ」の背景と社会保険の基本的な知識を知っておく必要があります。ポイントは下記のとおりです。

Q 社会保険って何?

社会保険は、国民が生涯安心して安定した生活が送れるように支えるためのセーフティーネットの役割を担っている公的な保険です。民間の保険とは大きく異なり、条件に当てはまれば加入、保険料も一律の料率であることが特徴です。

会社に勤務する人に関係してくる社会保険は、「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の5つです。

Q 社会保険に入れる人はどんな人?

「健康保険」「介護保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」のそれぞれで加入できる人 の条件が決められています。

今回の「年収の壁・支援強化パッケージ」で対象となっている健康保険(介護保険含む)・厚生年金保険に入れる人は次の4つのパターンに分かれます。

  • 会社で常時雇用されている人(正社員など)
  • 会社以外で常時5人以上の従業員がいる事業所に勤めている人(宿泊業、飲食サービス業、娯楽業など一部業種はのぞく)
  • 週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常時雇用される人(正社員など)の4分の3以上のパートタイマー・アルバイト等
  • 従業員101人以上の会社(2024年10月からは51人以上)に勤務し、「給与が月額88,000円以上」「週の所定労働時間が20時間以上」「2か月を超えて雇用される見込み」「学生でない」のいずれもあてはまる人

Q 保険料の額はどうやって決まるの?

一人ひとりの保険料を決めるときは、給与の額が基準になります。健康保険(介護保険含む)・厚生年金保険では給与のことを報酬といい、1か月の報酬を一定の範囲にあてはめて、標準報酬月額というものを設定し、保険料率をかけて保険料を算出します。

一般的に給与が高くなるほど、保険料も比例して高くなります。

Q 保険料はどのように払っているの?

健康保険(介護保険)・厚生年金保険の保険料は、会社と本人で半分ずつ負担することが法律で決められています。

会社は社会保険に加入している人の給与から、その本人が負担する保険料を天引きし、会社負担分と合わせて保険料を納付しています。

Q 今回、問題になっている「就業調整」って何?

一定の収入のない方、パートタイマー・アルバイト等、短時間で働く方で、配偶者の扶養に入っている方は、健康保険(介護保険)・厚生年金保険の保険料を負担していません。

こうした方の収入が増え、いわゆる年収の壁といわれる106万円あるいは130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れ、下記のように社会保険料の負担が発生することになります。

 

  • 給与月額88,000円以上(年収106万円以上)になる⇒健康保険・厚生年金保険に加入⇒新たに保険料の負担が発生する

 

  • 年収130万円以上になる⇒国民健康保険・国民年金に加入する⇒新たに保険料の負担が発生する

保険料負担が生じると、その分、給与の手取り額が減少します。これを避けるため、就業時間や就業日数を調整することを就業調整といいます。

就業調整は、主に年末の繁忙期に行うことから、例年多くの会社で年末の人材確保に苦慮しており、不足した労働力は正社員の残業や新たに短時間労働者を雇ってまかなっているのが実態です。

なお、配偶者の会社で支給される配偶者手当に収入条件がある場合も、就業調整の一因になっていると指摘されています。

Q 「年収の壁」対策で解決できることって?

「年収の壁」対策とは、つまり、健康保険(介護保険)・厚生年金保険に入る人を増やすということになります。加入する本人に保険料負担が発生するのはもちろん、会社は増えた人数分だけ、負担するべき保険料額が増えます。

そこで、パートタイマー・アルバイト等短時間で働く方の健康保険(介護保険)・厚生年金保険の新規加入に合わせて、手取り収入を減らさないための取り組みを実施する会社に対し支援を行うのが「年収の壁・支援強化パッケージ」です。

「年収の壁・支援強化パッケージ」を活用しながら、「年収の壁」対策に取り組むメリットは下記が考えられます。

<会社側のメリット>

  • 就業調整しているパートタイマー・アルバイト等に労働時間を延長してもらうことで労働力が確保しやすくなる
  • 年末や繁忙期等での就業調整で不足した労働力調整のため発生していた正社員の残業が減る(長時間労働の削減)、人材不足によるスポット業務の求人が不要になる
  • パートタイマー・アルバイト等でキャリアアップする人が増え、生産性向上や新事業の構築など、会社の成長につながる戦略が立てやすくなる

<働く側のメリット>

  • 年収の壁を気にすることなく、働けるのでキャリアアップやこの先のライフプランが描きやすくなる
  • 健康保険(介護保険)・厚生年金保険の加入により、出産のため働けない時の出産手当金や、病気やケガで働けない時の傷病手当金など手厚い保障が得られる
  • 将来受け取れる年金額が増える

 

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<会員限定>【企業向け】「年収の壁・支援強化パッケージ」簡単診断 NEW!

施策そのものが複雑な「年収の壁・支援強化パッケージ」。かいけつ編集部では、どの施策を活用したらいいのかを検討するにあたって、判断の目安にしていただけるような簡単診断を作成しました。

数年先の人事戦略を検討する際の情報整理ツールとしてもお役立てください。

なお、本診断は、助成金の受給や手当等の取り扱いの適用等をお約束するものではありません。実際の活用には細かい条件設定や注意事項がありますので、詳細や個別具体的な質問等は、厚生労働省「年収の壁突破・総合相談窓口」あるいは社会保険労務士にご相談ください。

診断はこちら

年収の壁・支援強化パッケージとは

「年収の壁・支援強化パッケージ」とは、現在、配偶者の扶養に入っているパートタイマー・アルバイトの方々が、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを後押しすることを目的に、当面の対応として厚生労働省が発表した施策です。具体的には、次の4つの施策が提示されています。

106 万円の壁への対応

①キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設(2023年10月20日より手続き開始)

パートタイマー・アルバイトで働く方の健康保険(介護保険)・厚生年金保険の加入に合わせて、手取り収入を減らさない取り組みを実施する会社に対し、労働者一人あたり最大50万円の支援を行う。手当等支給メニュー、労働時間延長メニュー、併用メニューの3つがある。

②社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外

パートタイマー・アルバイトで働く方の健康保険(介護保険)・厚生年金保険の加入にともない、手取り収入を減らさないよう会社が手当を支給した場合は、本人負担分の保険料相当額を上限として、社会保険料の算定対象としない。

130 万円の壁への対応

③事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

パートタイマー・アルバイト等が繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がったとしても、会社がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が可能となる仕組みをつくる。

配偶者手当への対応

④企業の配偶者手当の見直し促進

会社の配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示すなど、わかりやすい資料を作成・公表。

各施策の詳細は下記の専門家コラムをお読みください。

参考資料

実務対応のポイント

「106万円の壁」と「130万円の壁」の違いを確認!

いわゆる「年収の壁」はいくつか種類がありますが、今回の厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」の対象となるのは、社会保険料に関する「106万円の壁」と「130万円の壁」です。ひと口に「年収」といっても、そのベース(何で判断するか?)や判断のタイミング(どの時点で判断するのか?)が違いますので、実務で取り扱う場合には、注意が必要です。それぞれの違いを確認しておきましょう。

詳しくはこちら

「社会保険適用促進手当」って何?

「社会保険適用促進手当」とは、パートタイマー・アルバイト等の短時間労働者への社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するものです(政府が支給するものではありません)。

社会保険料負担の発生等による手取り収入の減少を理由として就業調整を行う人が一定程度存在するという、いわゆる「106万円の壁」の時限的な対応策として設けられたものです。

あくまでも、臨時かつ特例的に労働者の保険料負担を軽減することが目的であることから、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととされています。社会保険適用促進手当の取り扱いのポイントを押さえておきましょう。

詳しくはこちら

「社会保険適用促進手当」他の制度における取り扱いは?

企業が「社会保険適用促進手当」を支払う場合、この手当は、所得税や住民税、労働保険料の対象となるのでしょうか?

「社会保険適用促進手当」は、社会保険料負担の発生等による手取り収入の減少を理由として就業調整を行う者が一定程度存在するという、いわゆる「106万円の壁」の時限的な対応策として設けられたものであることから、社会保険の保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととされています(「社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外」)。

では、他の制度等においてはどのように取り扱われるのでしょうか? 主要な取り扱いを確認しておきましょう。

詳しくはこちら

「年収の壁・支援強化パッケージ」のうち「配偶者手当への対応」とは? 

「年収の壁・支援強化パッケージ」の「配偶者手当への対応」とはどのようなものなのでしょうか? 「配偶者手当」とは、民間企業において、配偶者がいる従業員に対して支給される手当のことをいい、実際の手当の名称は、企業によって「家族手当」「扶養手当」などさまざまで、手当受取りの収入基準についても、企業によって異なります。この配偶者手当について、「各企業の配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順をフローチャートで示す等、わかりやすい資料を作成・公表する」というものです。なぜ、各企業の配偶者手当の見直しが必要なのでしょうか?


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